*小説*春のセンパイは私の心を溶かした
放課後、図書室に行くと、いつも先輩は居る。
図書室に勉強しにくるのなんて、私と先輩くらいだから、いつも二人きりだ。
それでも、話したことがない。
私はいつも、一番端の列の、入り口に近い席に座る。
先輩は窓から二列目に、窓に向かうように座っている。
人と話すのが苦手な私に、この放課後の図書室は、一番落ち着ける場所だった。
決して沈黙ではないその空間に、ペンを走らせる音、教科書を捲る音、付箋を剥がす音、そのどれもが心地よくて、少し開いた窓からは、風が一番端の私の席にも柔らかく吹いてくる。
ふと前に目線をやれば、頬杖をついて外を見つめる先輩がいた。
その瞬間、風が強く吹き、桜が先輩のもとへ舞い落ちる。
風の所為で勢いよくページが捲れる教科書に先輩は目もくれず、髪におりた桜を取ろうともせず、ただ外をみつめるだけ。
いつも図書室は、私が先に出る。
短針が五と六の間を指したころ、私はこの空間を後にする。
私はこの時間が大好きだった。
桜が紅葉に変わったころ、先輩は来なくなった。
もう卒業する先輩は、いろいろと忙しいのだろう。
それでもなにかが物足りなくて、私一人だけが立てている生活音に、虚しさを感じるだけ。
私はいつもより早く切り上げ、帰宅した。
暖房をつけないととてもじゃないけど勉強できない季節、先輩はきた。
私が反射的に目をやると、先輩と目が合う。
ちゃんと顔を見たのは、これが初めてだ。
目元を隠してしまいそうな前髪、茶がかった髪に、無機質な表情をしている。
これは世間でいう、“イケメン”の類いなのだろうか。
恋愛に疎い私にはよく分からないが、
カッコイイカオだなと思った。
目を逸らそうとすると、先輩の声が教室に響いた。
「あのさ」
よく透き通った声だった。
ノートに向かう私に、先輩は言葉を続けた。
「俺のこと、覚えてる?」
『えっ』
予想外の質問に、私は思わず先輩のほうを向いた。
覚えてる?……覚えてる、って、なにが……?
「やっぱりそうだよな」
『えっ……?』
すると先輩は私の横の椅子を引き、隣に座った。
「俺が卒業する前に、いっておかなきゃと思って」
「柚羽(ゆわ)……だよな」
『は、はい』
「手、出せ」
何をされるのか 恐怖心があったけど、言われた通り手を出す。
「逆」と言われたので左手を出した。
すると、優しく私の薬指を掴み、何かをはめた。
『え……?』
よく分からない状況に戸惑っていると、先輩が口を開いた。
「俺が子どものときさ、親と喧嘩して家を出たんだ。
そこでたまたま行き着いた公園にお前が居てさ。
泣いてた俺を心配したのか、白詰草で指輪をつくって、俺にはめてくれたんだよ。
その、お返し?
お前はもう覚えてないかもしれないけど」
左手を視界に収めると、おもちゃの指輪がはまっていた。
どこにでも売ってる安っぽいやつだ。
『これが、お返し……』
「わりぃ。いつか、ホンモノの指輪はめてやるから。じゃあ」
と、先輩は荷物を持ってドアノブに手をかけた。
『待って!』
『ほ、ホンモノの指輪……待ってます』
先輩はニコッと笑うと、今度こそ図書室を出ていく。
……そうか、私は既に恋に落ちていたんだ。
左手のおもちゃの指輪を撫でながら、私はこの感情の正体に気づいた。 紡ぎさん(茨城・13さい)からの相談
とうこう日:2020年9月27日みんなの答え:3件
図書室に勉強しにくるのなんて、私と先輩くらいだから、いつも二人きりだ。
それでも、話したことがない。
私はいつも、一番端の列の、入り口に近い席に座る。
先輩は窓から二列目に、窓に向かうように座っている。
人と話すのが苦手な私に、この放課後の図書室は、一番落ち着ける場所だった。
決して沈黙ではないその空間に、ペンを走らせる音、教科書を捲る音、付箋を剥がす音、そのどれもが心地よくて、少し開いた窓からは、風が一番端の私の席にも柔らかく吹いてくる。
ふと前に目線をやれば、頬杖をついて外を見つめる先輩がいた。
その瞬間、風が強く吹き、桜が先輩のもとへ舞い落ちる。
風の所為で勢いよくページが捲れる教科書に先輩は目もくれず、髪におりた桜を取ろうともせず、ただ外をみつめるだけ。
いつも図書室は、私が先に出る。
短針が五と六の間を指したころ、私はこの空間を後にする。
私はこの時間が大好きだった。
桜が紅葉に変わったころ、先輩は来なくなった。
もう卒業する先輩は、いろいろと忙しいのだろう。
それでもなにかが物足りなくて、私一人だけが立てている生活音に、虚しさを感じるだけ。
私はいつもより早く切り上げ、帰宅した。
暖房をつけないととてもじゃないけど勉強できない季節、先輩はきた。
私が反射的に目をやると、先輩と目が合う。
ちゃんと顔を見たのは、これが初めてだ。
目元を隠してしまいそうな前髪、茶がかった髪に、無機質な表情をしている。
これは世間でいう、“イケメン”の類いなのだろうか。
恋愛に疎い私にはよく分からないが、
カッコイイカオだなと思った。
目を逸らそうとすると、先輩の声が教室に響いた。
「あのさ」
よく透き通った声だった。
ノートに向かう私に、先輩は言葉を続けた。
「俺のこと、覚えてる?」
『えっ』
予想外の質問に、私は思わず先輩のほうを向いた。
覚えてる?……覚えてる、って、なにが……?
「やっぱりそうだよな」
『えっ……?』
すると先輩は私の横の椅子を引き、隣に座った。
「俺が卒業する前に、いっておかなきゃと思って」
「柚羽(ゆわ)……だよな」
『は、はい』
「手、出せ」
何をされるのか 恐怖心があったけど、言われた通り手を出す。
「逆」と言われたので左手を出した。
すると、優しく私の薬指を掴み、何かをはめた。
『え……?』
よく分からない状況に戸惑っていると、先輩が口を開いた。
「俺が子どものときさ、親と喧嘩して家を出たんだ。
そこでたまたま行き着いた公園にお前が居てさ。
泣いてた俺を心配したのか、白詰草で指輪をつくって、俺にはめてくれたんだよ。
その、お返し?
お前はもう覚えてないかもしれないけど」
左手を視界に収めると、おもちゃの指輪がはまっていた。
どこにでも売ってる安っぽいやつだ。
『これが、お返し……』
「わりぃ。いつか、ホンモノの指輪はめてやるから。じゃあ」
と、先輩は荷物を持ってドアノブに手をかけた。
『待って!』
『ほ、ホンモノの指輪……待ってます』
先輩はニコッと笑うと、今度こそ図書室を出ていく。
……そうか、私は既に恋に落ちていたんだ。
左手のおもちゃの指輪を撫でながら、私はこの感情の正体に気づいた。 紡ぎさん(茨城・13さい)からの相談
とうこう日:2020年9月27日みんなの答え:3件
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綺麗なお話ですね! 綺麗な話…。
情景描写がうますぎて驚いちゃいました。
んーでも
題名があんまり…。
こういうのってベタな恋愛小説な感じがするんだ。だからもっと綺麗な題名にしてほしい!こんなに綺麗なお話なんだもん!
“公園のあとは図書室で”
みたいな感じかな?気に入らなかったらごめん! ガラスさん(大阪・12さい)からの答え
とうこう日:2020年9月29日 -
おおおっっっ好き! こんにちは!
国語の宿題にまだ手をつけてない
ましろです(*´∀`)
先輩………いいことしてくれんじゃないすか………っ
指輪のお返しからの「本物待ってる」………ストーリーめっちゃ好き!
文からたくさんのことを読み取ることができる分かりやすい小説だ(`・ω・´)
なんかさ、、小さい頃何気なくしたこと(イケメンに)がキッカケで恋に発展していく系あるからさ、、私もちょっと明日公園行ってさ、人助けでもしよっかな、、(もう手遅れです)
あ”〜〜私もこんな恋したい!(笑)
紡ぎさん、素敵な小説ありがとうございました!
次作も楽しみにしてます! ましろさん(選択なし・12さい)からの答え
とうこう日:2020年9月28日 -
おもしろかった。 良いと思いました!
次作待ってます。 青井〜。さん(選択なし・12さい)からの答え
とうこう日:2020年9月28日
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