返して。
『ほんっと、死ねばいいのに』
その言葉が全ての、始まりだった。
「ねぇ、真城さん聞いた?」
「なにが?」
「雪原小鈴のこと」
「…なにも」
「大変なの!今朝ね、学校の中庭で」
『雪原の死体が、見つかったんだって』
__え
「しかも自殺だって!ヤバくない?」
言葉が、出なかった。
自殺、じさつ、じ、さつ、ジサツ…
やがて教室がザワついてきたけど、ぼやけていて何も見えなかった。
ただ、私の心臓の音だけが、クリアに頭の中に響いている。
そんな、私は……
「ホームルーム始めるぞー」
そこから先のことは、もう覚えていない。
ただ1つわかることは、昨日まで1日だって欠かさず埋まっていた雪原の机が、今日は空だったという、事実だけ。
クラスメイトの視線が、一斉にこちらに注がれる。
簡単な話。
こんなことになった原因は、
_私だ。
私はもっと、まともな人間だった。
親の期待が凄くて、その期待に答えようと必死に努力して、なんとか成績をキープして。
でも頑張っても、頑張っても、親は褒めてくれなかった。
このくらい当然だ、と毎回言われた。
どうしてもっと上へ行けないんだ、と言われた時もあった。
みんなが遊んでるとき、私は勉強して。
みんなが寝てる時も、私は勉強してた。
それでも、誰も、何も、認めてくれない。
やがて、私の心と現実の世界の間には、分厚くて荒い、大きなすりガラスが置かれた。
成績が下がれば、失望される。誰も私を見てくれなくなる。
ぼやけた世界に目を凝らして、私は必死に勉強した。
…大丈夫。今までだって私はやってきた。今までと同じ。私はできる。
分厚いガラス越しだってことに、気づいていなかった。
そんなとき、あいつがやってきた。
雪原小鈴。気さくな人柄と明るい笑顔で、彼女はすぐクラスに馴染んだ。
正直、私はあまり彼女のことが好きではなかった。彼女は馬鹿だった。成績も悪いし、理解能力もない。
でもその性格のおかげで、彼女の周りにはいつも人が集まっている。
なんにも努力してないくせに、馬鹿なのに…いや、馬鹿だから。彼女はよく褒められていた。
大したことじゃないのに、当たり前のことなのに、彼女がすると凄いと言う。
その何倍も上のことも、私がすると当たり前だと言う。
簡単に笑顔を向けて貰える彼女の事が、私は凄く憎らしかった。
「…雪原さん、これぐらい当然にわからないと、大変だと思うけど」
ある日、私と彼女は同じ班になった。
数学の時間、問題を教え合うという班活動のとき、私はそう言った。
応用問題の基礎の基礎の段階で、彼女は全く理解できていなかった。
特に他意はなかった。これが分かっていないと説明の仕様がない。これから先だって絶対大変だ。
「なんでも出来て、いいね。真城さんは」
「…え?」
当たり前だろう。このくらい。
「特に努力しなくても出来る真城さんとは違って、私は勉強しないとわかんないの…これでも頑張ってるんだよ、私だって」
「……………」
は
…努力してない、だって?
…これでも頑張ってる、だって?
私がどれだけ死ぬ気で勉強してきたと思ってんだ。
あんたはそんな気で努力したことがあるのか?
1点でも稼ごうと寝る間も惜しんで教科書をめくっていたか?
ご飯とお風呂と睡眠以外の時間を、勉強に費やしていたか?
私を、今までの努力を、苦労を、全部、侮辱された気分だった。
(…ふざけるな)
ガラスが黒く染まっていった。
それから何日かがすぎた。
私以外にも、雪原のことを悪く思う人はいたようで、その人たちと寄って集って陰口を叩いていた。
本人にも絶対聞こえていただろうけど、学校には毎日来ていたし、先生にも何も言われなかった。
成績優秀な優等生の私に対して、何も言えないようだった。
だから、調子に乗っていたのかもしれない。
別に虐めているわけじゃない。
ただ自分の思ったことを共有しているだけ。
事実を言っているだけ。
一線を超えたらもう、それは立派な犯罪なんだってことにも気づかずに。
私は愚かだった。
「ほんっと、死ねばいいのに」
「あはははっ!ほんとそれ!!」
翌日、雪原小鈴は、死んだ。
「返してっ!こっちゃんを返してっ!!私の親友を返してえぇぇえっ!!!」
「………」
「お前のせいでこっちゃんは死んだんだ!!お前も死ね!!死んで償えっ!!!」
…どうして、こうなった。
こんなはずじゃ、なかったのに。
違う。私は、私は……っ
通りすがりのMさん(選択なし・13さい)からの相談
とうこう日:2020年11月1日みんなの答え:27件
その言葉が全ての、始まりだった。
「ねぇ、真城さん聞いた?」
「なにが?」
「雪原小鈴のこと」
「…なにも」
「大変なの!今朝ね、学校の中庭で」
『雪原の死体が、見つかったんだって』
__え
「しかも自殺だって!ヤバくない?」
言葉が、出なかった。
自殺、じさつ、じ、さつ、ジサツ…
やがて教室がザワついてきたけど、ぼやけていて何も見えなかった。
ただ、私の心臓の音だけが、クリアに頭の中に響いている。
そんな、私は……
「ホームルーム始めるぞー」
そこから先のことは、もう覚えていない。
ただ1つわかることは、昨日まで1日だって欠かさず埋まっていた雪原の机が、今日は空だったという、事実だけ。
クラスメイトの視線が、一斉にこちらに注がれる。
簡単な話。
こんなことになった原因は、
_私だ。
私はもっと、まともな人間だった。
親の期待が凄くて、その期待に答えようと必死に努力して、なんとか成績をキープして。
でも頑張っても、頑張っても、親は褒めてくれなかった。
このくらい当然だ、と毎回言われた。
どうしてもっと上へ行けないんだ、と言われた時もあった。
みんなが遊んでるとき、私は勉強して。
みんなが寝てる時も、私は勉強してた。
それでも、誰も、何も、認めてくれない。
やがて、私の心と現実の世界の間には、分厚くて荒い、大きなすりガラスが置かれた。
成績が下がれば、失望される。誰も私を見てくれなくなる。
ぼやけた世界に目を凝らして、私は必死に勉強した。
…大丈夫。今までだって私はやってきた。今までと同じ。私はできる。
分厚いガラス越しだってことに、気づいていなかった。
そんなとき、あいつがやってきた。
雪原小鈴。気さくな人柄と明るい笑顔で、彼女はすぐクラスに馴染んだ。
正直、私はあまり彼女のことが好きではなかった。彼女は馬鹿だった。成績も悪いし、理解能力もない。
でもその性格のおかげで、彼女の周りにはいつも人が集まっている。
なんにも努力してないくせに、馬鹿なのに…いや、馬鹿だから。彼女はよく褒められていた。
大したことじゃないのに、当たり前のことなのに、彼女がすると凄いと言う。
その何倍も上のことも、私がすると当たり前だと言う。
簡単に笑顔を向けて貰える彼女の事が、私は凄く憎らしかった。
「…雪原さん、これぐらい当然にわからないと、大変だと思うけど」
ある日、私と彼女は同じ班になった。
数学の時間、問題を教え合うという班活動のとき、私はそう言った。
応用問題の基礎の基礎の段階で、彼女は全く理解できていなかった。
特に他意はなかった。これが分かっていないと説明の仕様がない。これから先だって絶対大変だ。
「なんでも出来て、いいね。真城さんは」
「…え?」
当たり前だろう。このくらい。
「特に努力しなくても出来る真城さんとは違って、私は勉強しないとわかんないの…これでも頑張ってるんだよ、私だって」
「……………」
は
…努力してない、だって?
…これでも頑張ってる、だって?
私がどれだけ死ぬ気で勉強してきたと思ってんだ。
あんたはそんな気で努力したことがあるのか?
1点でも稼ごうと寝る間も惜しんで教科書をめくっていたか?
ご飯とお風呂と睡眠以外の時間を、勉強に費やしていたか?
私を、今までの努力を、苦労を、全部、侮辱された気分だった。
(…ふざけるな)
ガラスが黒く染まっていった。
それから何日かがすぎた。
私以外にも、雪原のことを悪く思う人はいたようで、その人たちと寄って集って陰口を叩いていた。
本人にも絶対聞こえていただろうけど、学校には毎日来ていたし、先生にも何も言われなかった。
成績優秀な優等生の私に対して、何も言えないようだった。
だから、調子に乗っていたのかもしれない。
別に虐めているわけじゃない。
ただ自分の思ったことを共有しているだけ。
事実を言っているだけ。
一線を超えたらもう、それは立派な犯罪なんだってことにも気づかずに。
私は愚かだった。
「ほんっと、死ねばいいのに」
「あはははっ!ほんとそれ!!」
翌日、雪原小鈴は、死んだ。
「返してっ!こっちゃんを返してっ!!私の親友を返してえぇぇえっ!!!」
「………」
「お前のせいでこっちゃんは死んだんだ!!お前も死ね!!死んで償えっ!!!」
…どうして、こうなった。
こんなはずじゃ、なかったのに。
違う。私は、私は……っ
通りすがりのMさん(選択なし・13さい)からの相談
とうこう日:2020年11月1日みんなの答え:27件
27件中 11 〜 20件を表示
-
すごいですね! 終わり方がすごい良いですね!
共感もできやすいところもあります。
表現もすごいです。
ガラスのとことか、めっちゃ印象に残ります。
やっぱりダメですよね。
亡くなってしまうのは、とても本人も回りも苦しいので…。
最後の二人も助けてあげなかったのに、何でそんなこと言うんだろう…。
って思ったところもありました。
面白かったです!
また書いてください!
では! マメトラさん(選択なし・14さい)からの答え
とうこう日:2020年11月4日 -
何が正解だったんだろうね このお話を読んで、どうすればハッピーエンドで終われたのか考えました。
真城さんのこと。雪原さんのこと。
どちらのことも分かってあげられる人がいたら良かったのかな。
最後に雪原さんのことを嘆いてた二人は本当に気付いてなかったのか。
いじめって第三者さえしっかりしていればこんな事にはなる前に止められるのになって思いました。
なんか道徳の教科書よりレベル高くて、これが乗ってほしい気分です。いじめる人にも必ず今回のように理由がある。その上でどうしてあげれば良いのか考えたい。
こんなに人の小説読んで考えたのは初めてです。ありがとうございました。
定期的に読みにきます。太鳳より。 太鳳さん(大阪・13さい)からの答え
とうこう日:2020年11月3日 -
同感出来ますな〜 自分が努力してた事を侮辱されると腹立つよな〜私だったら生きてその分を償うな〜 グレ〜プさん(千葉・10さい)からの答え
とうこう日:2020年11月3日 -
凄いです! ヤッホ!愛希良です!表現がめちゃめちゃ凄いです!とても夢中で読ませて頂きました!(*`・ω-)ノ 愛希良さん(島根・11さい)からの答え
とうこう日:2020年11月3日 -
すごい! なんでそんなに上手い小説書けるの!?
神すぎじゃない?
また書いてください!すぐに読みます!
By雨女 リアル雨女。さん(北海道・11さい)からの答え
とうこう日:2020年11月3日 -
うわぁ…(´-ω-`) ストーリーとその展開がまず面白かったです!
それに加えて、空白の使い方やそれぞれのキャラの口調分けが上手で…口調が特に上手だなって思いました。モブはモブらしく。天然は天然らしく。
みんなそれぞれその人なりに頑張ってるんだから、私の方が頑張ってると思うのは間違ってるよなぁと思いました。それで人を傷つけるなんてもってのほかですよね。
素敵なお話ありがとうございました♪ 臣 さん(長野・14さい)からの答え
とうこう日:2020年11月3日 -
最高すぎる結末が気になる!! 表現も、終わらせ方もさいっこう!!あなたは神なんですか? ねこザカナさん(東京・10さい)からの答え
とうこう日:2020年11月2日 -
すごい! 題名でひかれて読みました!
とってもすごい表現力で、夢中になって読みました!主人公の気持ちとか繊細に書かれていてもうとにかくすごかったです! まろんさん(選択なし・14さい)からの答え
とうこう日:2020年11月2日 -
才能が溢れでてる!!! え、待って、スゴくない!?なんでこんな小説書けるの!?
まず、題名からセンスを感じた!
あんまり長いと読みたくないけど、通りすがりのMさんは、題名が短くてわかりやすい!
話のテンポもとても良く、文も読みやすかった!!
改行とか、記号の使い方が上手いっ!
次回作、出してください!!! しばばんさん(埼玉・13さい)からの答え
とうこう日:2020年11月2日 -
すごい・・・ 尊敬します。いじめのことについてのお話はいじめられている人の視点のことが多いので、いじめられている人のことしか考えていませんでした。けど、通りすがりのMさんの小説のおかげでいじめている人の考えも知ることが出来ました。考え方の視野が一気に広がりました。いじめはダメだけど、いじめてる人も辛いことがあってそうなっちゃっているのかもしれませんね。本当に良い作品をありがとうございます。 かふぇらてさん(神奈川・12さい)からの答え
とうこう日:2020年11月2日
27件中 11 〜 20件を表示
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- 【「相談するとき」「相談の答え(回答)を書くとき」のルール】をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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- 「短編小説投稿について」をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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- キッズなんでも相談では、投稿されたユーザーの
個人 を判断 することが出来ないため、削除依頼 には対応することは出来ません。投稿しても問題ない内容かよく確認してください。
- キッズなんでも相談では、投稿されたユーザーの
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