星の少女
それはある夏の夜のことだった。
僕は家族や学校の友人たちと共に、夏休みを利用して祖父母の経営する宿泊施設に来ていた。
その宿泊施設は山中の大自然に囲まれた場所にあり、周りには木だけではなく川や湖、海まであった。僕達は一日中、山の中を駆け回って遊んだ。とても楽しくて、時間はあっという間に過ぎていった。
夜になり、祖父母が僕達を蛍のたくさん集まる場所へ連れて行ってくれると言った。暗くて道が複雑だから迷子にならないようにと言い、みんながいるのを確認して出発した。
僕はしばらく友人たちと楽しく話しながら祖父母の後を歩いていたが、途中、目の端で何かが光ったのが見え、思わず足を止めた。友人たちは会話に夢中で立ち止まった僕に気づかなかった。
光った方を見てみると、遠くの方で小さな光がゆらゆらと僕を呼ぶように飛んでいるのが見えた。その途端、何故かそちらへ行かなければ、と思った。迷子にならないようにという注意を忘れ、僕はその光の方へ走った。
どれくらい走っただろうか、途中で光を見失ってしまい足を止めて当たりを見回してみたがどこにも光はいなくて、場所も知らないところだった。ここに来て僕はしまったと思った。自分が迷子になったということを、今理解した。祖父母や友人たちと連絡を取る手段もなく真っ暗なので、できることが何も無い。僕は泣きそうになった。
その時、風も吹いていないのにすぐ真横にある茂みからカサカサと音がし、僕はびっくりして飛び退いた。熊が出るのか、あるいは祖父母や友人か。
出てきたのは僕と同じ15、6歳くらいの美しい少女だった。星の欠片から作り出した糸を束ねたような美しく輝く金髪に、澄んだ湖のような青い瞳。僕は恐怖と安堵とその美しさに、はぁ、と息を吐いた。
「・・・・・こんなところで、何をしているの?」
少女は眉をひそめながら僕をまじまじと見つめて言った。僕は最初、なんと答えたら良いのか分からず黙っていたがしばらくして、今ここにいる理由を説明した。
初めは疑わしそうに聞いていた彼女だったが、僕の話を聞くにつれて段々と穏やかな顔になり、最後には、みんなの居場所を知っているから連れて行ってあげると言ってくれた。
それを聞き僕は安堵したが、ふとなぜみんなの場所を知っているんだ?と疑問に思った。既に歩き始めている彼女に走って追いつき質問をしてみたが彼女は曖昧に答えただけだった。
それからの道中、僕は彼女にこの辺りに住んでいるの?とか、なぜあんな所にいたの?とか質問を繰り返したが、どれもこれも曖昧に返されてしまった。本当に彼女はみんなの居場所を知っているのだろうか、彼女について行っても大丈夫なのか、そう思い始めた時、少し先の方から何人かの人の話し声が聞こえた。僕は小走りでそちらへ向かった。
木々の間を縫って走り、茂みをかき分けると話し声の正体がわかった。いつの間にかいなくなっている僕を探していた、祖父母や友人たちだった。本当にみんなが居たことに驚き、先ほど彼女を疑ってしまったことを悪く思い、後ろに付いてきているだろう彼女を振り返った。お礼を言おうと思ったがそこに彼女の姿はなく、いるのは1匹の蛍だけだった。蛍を見た祖父母が僕に説教しようとするのをやめ、蛍の沢山いる場所はここからすぐだから先にそちらへ行こうと言い、歩き出した。
今度はみんなから離れることなく祖父母について行くと、目的地に着いた。そこは小さな池のような湖がある、周りを木に囲まれたまるで秘密基地のような場所だった。蛍がそこら中でチカチカと光りながら飛んでいる。夜空を映した紺碧の湖にチカチカと金色に光る蛍の小さな光は、まるで夜空に散りばめられた星のようだった。僕達は誰も口を聞くことなく、その美しい光景に見とれていた。
ぼうっと眺めていると、1匹の蛍が僕の周りをくるくると飛び始めた。手を自分の前に持ってくるとその蛍が僕の手のひらに止まり、3回チカチカと光るとまたほかの蛍の所へ戻って行った。
それはまるで、僕に挨拶をしているように見えた。そこで気がついた。もしかして、さっき見た小さな光はこの蛍で、あの少女は・・・・・。
月詠 詩さん(選択なし・15さい)からの相談
とうこう日:2020年11月30日みんなの答え:1件
それはある夏の夜のことだった。
僕は家族や学校の友人たちと共に、夏休みを利用して祖父母の経営する宿泊施設に来ていた。
その宿泊施設は山中の大自然に囲まれた場所にあり、周りには木だけではなく川や湖、海まであった。僕達は一日中、山の中を駆け回って遊んだ。とても楽しくて、時間はあっという間に過ぎていった。
夜になり、祖父母が僕達を蛍のたくさん集まる場所へ連れて行ってくれると言った。暗くて道が複雑だから迷子にならないようにと言い、みんながいるのを確認して出発した。
僕はしばらく友人たちと楽しく話しながら祖父母の後を歩いていたが、途中、目の端で何かが光ったのが見え、思わず足を止めた。友人たちは会話に夢中で立ち止まった僕に気づかなかった。
光った方を見てみると、遠くの方で小さな光がゆらゆらと僕を呼ぶように飛んでいるのが見えた。その途端、何故かそちらへ行かなければ、と思った。迷子にならないようにという注意を忘れ、僕はその光の方へ走った。
どれくらい走っただろうか、途中で光を見失ってしまい足を止めて当たりを見回してみたがどこにも光はいなくて、場所も知らないところだった。ここに来て僕はしまったと思った。自分が迷子になったということを、今理解した。祖父母や友人たちと連絡を取る手段もなく真っ暗なので、できることが何も無い。僕は泣きそうになった。
その時、風も吹いていないのにすぐ真横にある茂みからカサカサと音がし、僕はびっくりして飛び退いた。熊が出るのか、あるいは祖父母や友人か。
出てきたのは僕と同じ15、6歳くらいの美しい少女だった。星の欠片から作り出した糸を束ねたような美しく輝く金髪に、澄んだ湖のような青い瞳。僕は恐怖と安堵とその美しさに、はぁ、と息を吐いた。
「・・・・・こんなところで、何をしているの?」
少女は眉をひそめながら僕をまじまじと見つめて言った。僕は最初、なんと答えたら良いのか分からず黙っていたがしばらくして、今ここにいる理由を説明した。
初めは疑わしそうに聞いていた彼女だったが、僕の話を聞くにつれて段々と穏やかな顔になり、最後には、みんなの居場所を知っているから連れて行ってあげると言ってくれた。
それを聞き僕は安堵したが、ふとなぜみんなの場所を知っているんだ?と疑問に思った。既に歩き始めている彼女に走って追いつき質問をしてみたが彼女は曖昧に答えただけだった。
それからの道中、僕は彼女にこの辺りに住んでいるの?とか、なぜあんな所にいたの?とか質問を繰り返したが、どれもこれも曖昧に返されてしまった。本当に彼女はみんなの居場所を知っているのだろうか、彼女について行っても大丈夫なのか、そう思い始めた時、少し先の方から何人かの人の話し声が聞こえた。僕は小走りでそちらへ向かった。
木々の間を縫って走り、茂みをかき分けると話し声の正体がわかった。いつの間にかいなくなっている僕を探していた、祖父母や友人たちだった。本当にみんなが居たことに驚き、先ほど彼女を疑ってしまったことを悪く思い、後ろに付いてきているだろう彼女を振り返った。お礼を言おうと思ったがそこに彼女の姿はなく、いるのは1匹の蛍だけだった。蛍を見た祖父母が僕に説教しようとするのをやめ、蛍の沢山いる場所はここからすぐだから先にそちらへ行こうと言い、歩き出した。
今度はみんなから離れることなく祖父母について行くと、目的地に着いた。そこは小さな池のような湖がある、周りを木に囲まれたまるで秘密基地のような場所だった。蛍がそこら中でチカチカと光りながら飛んでいる。夜空を映した紺碧の湖にチカチカと金色に光る蛍の小さな光は、まるで夜空に散りばめられた星のようだった。僕達は誰も口を聞くことなく、その美しい光景に見とれていた。
ぼうっと眺めていると、1匹の蛍が僕の周りをくるくると飛び始めた。手を自分の前に持ってくるとその蛍が僕の手のひらに止まり、3回チカチカと光るとまたほかの蛍の所へ戻って行った。
それはまるで、僕に挨拶をしているように見えた。そこで気がついた。もしかして、さっき見た小さな光はこの蛍で、あの少女は・・・・・。
月詠 詩さん(選択なし・15さい)からの相談
とうこう日:2020年11月30日みんなの答え:1件
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好きです 表現の仕方がとても好きです。
『星の欠片から作り出した糸』とか
『夜空に散りばめられた星』とか、なんだか幻想的で、
この物語の雰囲気にとても合っていると思いました。
最初女の子が『僕』のことを疑わしそうにしていたのは、
人間に自分たちの生活が脅かされるかもと考えていたからなのかな、
などといろいろ想像できて、読んでいて楽しかったです。
最後の終わり方もすごく好きです。
次作も楽しみにしてます……! 1054さん(選択なし・14さい)からの答え
とうこう日:2020年12月1日
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