【短編小説】 隣の家の夏月くん
「フルートパートのコンクール出場者は…」
顧問の先生は、「乃木さん、村瀬さん、北森くん」と続けた。
私の名前は……
「……井!桃井!おい、聞いてるのかよ!」
休み時間、私はぼーっとしていて、声をかけられていることに気づかなかった。
「へっ?く、栗谷!ごめん、ちょっとぼんやりしてて……」
声をかけてきていたのは、隣の席の栗谷夏月(くりやかづき)。
……実は、私と栗谷の名前は“一緒”なのです……。
私の名前は桃井香月(ももいかづき)。
栗谷とは幼少期からの仲で、お互い「かづき」だったので親近感があった。
けれど……今は、嫌悪しかない。
男と同じ名前ですら嫌なのに、追い討ちをかけるように友達は「ダブルかづき」と言ってくる。
ぐるぐると考えていると、
「お前、吹部のコンクール選抜……ダメだったんだって?」
と言って栗谷が私の顔を覗き込んできた。
「……あんたには関係ないじゃん」
そう言って目を逸らすと、栗谷は私の目の前にやってきて。
「ダメだったからって、落ち込みすぎるなよ!
何も死ぬってわけじゃないだろ。次があるから、頑張れ!」
栗谷は昔から熱血だったけれど、最近はちょっと暑苦しい。
「はぁ…」
私は小さく、溜息をついた。
夜、私は家で見慣れた楽譜を開いていた。
なんとしてでも、コンクールで吹きたかったメロディ。
……もう、その夢も叶わない。
私は、一思いに楽譜をぐしゃっと握り潰した。
「あっ!桃井お前!大事な楽譜に何してんだ!」
声の方を見ると、何故か栗谷が部屋の窓のすぐ側にいた。
「なんで栗谷がそこにいるのよ!」
「ウチの二階の窓から飛び乗った」
彼はドヤァとしてみせる。
「ドヤァじゃないっ!隣の家だからって危ないでしょ」
私は叫んだ。
「いや、桃井と俺の家の窓両方から手伸ばしたら余裕で届く距離だろ」
それより、と、栗谷は続けた。
「それ、コンクールで演奏するはずだった楽譜だろ?
なんで握り潰したんだよ」
私はいらついて、心に溜まっているものを全て彼に向かって吐き出した。
「……別に。もう、いらなくなったから。
コンクールになんて、もう出られないから。
今まで必死に練習してきた自分が馬鹿らしい。
私は、目標すら果たせない。そんな自分が……私は大嫌い。
だから……栗谷は関わろうとしないで」
栗谷は間髪入れずに言ってきた。
「なぁ桃井、俺にその曲吹いてくれよ。
お前、自分の努力が報われる場所が欲しいって事だろ。
俺が、お前の未練を全部受け止めてやる!さぁ来いっ」
突然栗谷がそう言ったので、驚いた。
「はぁ?……わかった……。一回だけ、だからね」
私はフルートを構え、丁寧に息を吹き込む。
心地よい音が、私の部屋に響く。
この曲の目玉は、小鳥の囀りをイメージしたメロディ。
あぁ、ここの指の動きは、何度も何度も練習したっけ。
吹いているうちに、いろいろな思いが込み上げてきて。
私は演奏を終えたのだった。
「桃井、今のすげぇ良かった。何でコンクール選ばれなかったのかなぁ…
絶対お前の腕前良いのに」
私は何も言わずに、フルートを片付ける。
「あ、そうそう。お前、さっき自分のこと嫌いって言ってたよな」
栗谷は唐突に言った。私は素っ気なく返す。
「……だから、何よ」
「俺は……香月のこと、好きだけどな」
「はぁっ!?」
思わぬ彼の言葉に、声が裏返った。
「何言ってるのよ!いくら幼馴染だからって急に…」
栗谷は真剣な眼差しで私を見つめた。
「……で、答えは?」
私は彼と少し目を逸らして言った。
「……私だって夏月が好きだよ……。……仕方ないから付き合ってあげる」
「何だよ、仕方ないから、って」
彼はふっと笑って、続けた。
「ありがとな。……付き合う時に一つ、約束してほしいことがある。
俺と付き合う覚悟があるなら、まずはお前自身を好きになれよ?」
私は迷わず答えた。
「うん!」
私がそう言うと、彼は今までにない最高の笑顔を見せたのだった。
end
読んでくださりありがとうございました!
前回からだいぶ間が空いてしまいました汗
あと、名前を変えました!
感想、アドバイス待っています!応援してくださると嬉しいです(^-^) ちょこちっぷめろんぱん(元めろんぱん)さん(選択なし・12さい)からの相談
とうこう日:2020年12月19日みんなの答え:3件
顧問の先生は、「乃木さん、村瀬さん、北森くん」と続けた。
私の名前は……
「……井!桃井!おい、聞いてるのかよ!」
休み時間、私はぼーっとしていて、声をかけられていることに気づかなかった。
「へっ?く、栗谷!ごめん、ちょっとぼんやりしてて……」
声をかけてきていたのは、隣の席の栗谷夏月(くりやかづき)。
……実は、私と栗谷の名前は“一緒”なのです……。
私の名前は桃井香月(ももいかづき)。
栗谷とは幼少期からの仲で、お互い「かづき」だったので親近感があった。
けれど……今は、嫌悪しかない。
男と同じ名前ですら嫌なのに、追い討ちをかけるように友達は「ダブルかづき」と言ってくる。
ぐるぐると考えていると、
「お前、吹部のコンクール選抜……ダメだったんだって?」
と言って栗谷が私の顔を覗き込んできた。
「……あんたには関係ないじゃん」
そう言って目を逸らすと、栗谷は私の目の前にやってきて。
「ダメだったからって、落ち込みすぎるなよ!
何も死ぬってわけじゃないだろ。次があるから、頑張れ!」
栗谷は昔から熱血だったけれど、最近はちょっと暑苦しい。
「はぁ…」
私は小さく、溜息をついた。
夜、私は家で見慣れた楽譜を開いていた。
なんとしてでも、コンクールで吹きたかったメロディ。
……もう、その夢も叶わない。
私は、一思いに楽譜をぐしゃっと握り潰した。
「あっ!桃井お前!大事な楽譜に何してんだ!」
声の方を見ると、何故か栗谷が部屋の窓のすぐ側にいた。
「なんで栗谷がそこにいるのよ!」
「ウチの二階の窓から飛び乗った」
彼はドヤァとしてみせる。
「ドヤァじゃないっ!隣の家だからって危ないでしょ」
私は叫んだ。
「いや、桃井と俺の家の窓両方から手伸ばしたら余裕で届く距離だろ」
それより、と、栗谷は続けた。
「それ、コンクールで演奏するはずだった楽譜だろ?
なんで握り潰したんだよ」
私はいらついて、心に溜まっているものを全て彼に向かって吐き出した。
「……別に。もう、いらなくなったから。
コンクールになんて、もう出られないから。
今まで必死に練習してきた自分が馬鹿らしい。
私は、目標すら果たせない。そんな自分が……私は大嫌い。
だから……栗谷は関わろうとしないで」
栗谷は間髪入れずに言ってきた。
「なぁ桃井、俺にその曲吹いてくれよ。
お前、自分の努力が報われる場所が欲しいって事だろ。
俺が、お前の未練を全部受け止めてやる!さぁ来いっ」
突然栗谷がそう言ったので、驚いた。
「はぁ?……わかった……。一回だけ、だからね」
私はフルートを構え、丁寧に息を吹き込む。
心地よい音が、私の部屋に響く。
この曲の目玉は、小鳥の囀りをイメージしたメロディ。
あぁ、ここの指の動きは、何度も何度も練習したっけ。
吹いているうちに、いろいろな思いが込み上げてきて。
私は演奏を終えたのだった。
「桃井、今のすげぇ良かった。何でコンクール選ばれなかったのかなぁ…
絶対お前の腕前良いのに」
私は何も言わずに、フルートを片付ける。
「あ、そうそう。お前、さっき自分のこと嫌いって言ってたよな」
栗谷は唐突に言った。私は素っ気なく返す。
「……だから、何よ」
「俺は……香月のこと、好きだけどな」
「はぁっ!?」
思わぬ彼の言葉に、声が裏返った。
「何言ってるのよ!いくら幼馴染だからって急に…」
栗谷は真剣な眼差しで私を見つめた。
「……で、答えは?」
私は彼と少し目を逸らして言った。
「……私だって夏月が好きだよ……。……仕方ないから付き合ってあげる」
「何だよ、仕方ないから、って」
彼はふっと笑って、続けた。
「ありがとな。……付き合う時に一つ、約束してほしいことがある。
俺と付き合う覚悟があるなら、まずはお前自身を好きになれよ?」
私は迷わず答えた。
「うん!」
私がそう言うと、彼は今までにない最高の笑顔を見せたのだった。
end
読んでくださりありがとうございました!
前回からだいぶ間が空いてしまいました汗
あと、名前を変えました!
感想、アドバイス待っています!応援してくださると嬉しいです(^-^) ちょこちっぷめろんぱん(元めろんぱん)さん(選択なし・12さい)からの相談
とうこう日:2020年12月19日みんなの答え:3件
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こんにちはー こんにちは。太鳳です!
最後のまずはお前自身を好きになれよ。のとこがキュン!ってしました!
すごく相手のことを大切にしてるいい子だなーって感心しちゃいましたね。
きっと次のコンクールは、自分を大切にできる最高の香月ちゃんで優勝決定だね!
メロンパンちゃん!また読みに来ますね! 太鳳さん(大阪・13さい)からの答え
とうこう日:2020年12月20日 -
キュンキュンするやつ…… 落ち込んでいたけれど、栗谷くんが励ましてくれて良かったと思いました。
『俺が、お前の未練を全部受け止めてやる』ってとても好きです。
カッコいいです。
家が隣同士で名前の読みも一緒なの、もう運命みたいな感じですよね。
苗字も、桃と栗なのすごくいいと思います。
二人が幸せになってほしいです。 ムースさん(選択なし・13さい)からの答え
とうこう日:2020年12月20日 -
untitled 面白かったです!!
仕方ないからっていうのが良いですよね!
どうして、選ばれなかったんだろう?
ダブルかづきいいですね〜 コーヒー珈琲さん(神奈川・13さい)からの答え
とうこう日:2020年12月20日
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