良い夜ですね。
星を数えていた。苦しさから逃れるために。
花が咲く丘の上に座りこむ美しい少女は、透き通った白色の長い髪を風になびかせ、空を見上げる。
そこに1人の少年がやってくる。
「ねえ、君?こんな時間に何をしているんだい?」
少女は、突然した声に一瞬驚いたが、にこりと笑みを浮かべて
「星を数えていたのよ。あなたこそ何をしにここに?」
「僕は散歩だよ。大して理由もないさ。僕はジスタ。君の名前は?」
ジスタと名乗る少年は、夜空色の瞳で少女を見つめた。
「私はルエノア。話し相手がいなくて寂しかったの。少し話していかない?」
ジスタは、もちろん、と言って頷いた。
ルエノアの柔らかい優しい声と、ジスタのよく通る声が星の綺麗な花咲く丘に響いた。
それから2人は、星が見える夜は言葉を交わした。季節の話、天気の話。二人の会話が途切れることは無かった。話していくうちに、2人は恋に落ちた。
だが、ルエノアにとって恐れていた日が来てしまった。
いつものように花咲く丘で軽く話したあと、ルエノアは声音を変えずに笑顔で話し出した。
「ねえジスタ。私達、もう会えないわ。」
ジスタの柔らかい笑顔は、その言葉を聞いた瞬間凍りついた。
「なんで……?」
さ
ルエノアは、涙をこらえながら笑顔で続けた。
「もう街から出られないのよ。この丘にだって来れないわ。私だってこんなこと望んでいないのよ。でも、きっともうどうにかするなんて無理だわ。」
『━━私、王族に生まれてしまったのよ。もう国を治めるんですって。きっと私にはまだ早いと思うの。』
ジスタは少し考え、真剣な面持ちで言った。
「逃げよう。どこか遠くへ。僕達以外誰もいない、星が綺麗なところはどうかな?海が近くて、暖かい所もいいね。」
ジスタは涙を堪えて話し続ける。
「雪が綺麗なところも悪くないかな。でもやっぱり、花が綺麗なところも捨て難いな。ねぇルエノア、君はどこがいい?」
「ジスタ…」
『僕、君を迎えに行くよ。何があっても。』
ルエノアは驚いた顔をしたが、すぐに笑って
「そうね。待っているわ。」
と言った。
数日がたち、ルエノアは国を治める姫となった。
ルエノアが自室で本を読んでいると、バルコニーの窓が開いた気がした。
━━そこには、ジスタの姿があった。
「ジスタ…?!」
「来たよ、ルエノア。」
ジスタは優しく微笑む。
「ジスタ!」
ルエノアはジスタに駆け寄る。
「会いたかったわ、ジスタ。」
ルエノアを見て、ジスタは言う。
「ルエノアは、どこに行きたい?」
「私、どこまでも行くわ。」
(あぁ、でも)
「ジスタはどこへ行きたい?」
(ルエノアとは)
「ジスタ?」
「あぁ、ごめん!なんでもないよ。とにかく遠くへ行こう。」
「ふふ、そうね。」
二人は森の奥へ来た。
「これで追ってはこないだろうね。」
「ええ、ジスタ。」
「…ねぇルエノア。」
「なぁに?」
「君は、僕のために死ねる?」
(ルエノアといるには)
「面白いことを言うのね。…そうね、勿論死ねるわ。」
(この方が)
「そうか、なら━━」
「ジスタ…?」
ルエノアの楽しげな笑顔が崩れる。
「大丈夫。僕と一緒になるだけだ。」
「ジスタ?何を言っているの?」
「今思えば、これが確実なんだ。君は王族、すぐに家来が追いかけてくるだろう。でも、君と一緒になったら?君が僕の一部になったらどうだろう。痕跡もなく、追いかけられることもない。」
「え?」
『一緒になろう。』
血に染った白いワンピースを纏う彼女を抱きしめてジスタは言う。
「これで一緒になれるね、ルエノア。」
「眼球から、骨まで。
君の全てが僕の一部だ。」
猫使いさん(東京・11さい)からの相談
とうこう日:2020年12月31日みんなの答え:3件
花が咲く丘の上に座りこむ美しい少女は、透き通った白色の長い髪を風になびかせ、空を見上げる。
そこに1人の少年がやってくる。
「ねえ、君?こんな時間に何をしているんだい?」
少女は、突然した声に一瞬驚いたが、にこりと笑みを浮かべて
「星を数えていたのよ。あなたこそ何をしにここに?」
「僕は散歩だよ。大して理由もないさ。僕はジスタ。君の名前は?」
ジスタと名乗る少年は、夜空色の瞳で少女を見つめた。
「私はルエノア。話し相手がいなくて寂しかったの。少し話していかない?」
ジスタは、もちろん、と言って頷いた。
ルエノアの柔らかい優しい声と、ジスタのよく通る声が星の綺麗な花咲く丘に響いた。
それから2人は、星が見える夜は言葉を交わした。季節の話、天気の話。二人の会話が途切れることは無かった。話していくうちに、2人は恋に落ちた。
だが、ルエノアにとって恐れていた日が来てしまった。
いつものように花咲く丘で軽く話したあと、ルエノアは声音を変えずに笑顔で話し出した。
「ねえジスタ。私達、もう会えないわ。」
ジスタの柔らかい笑顔は、その言葉を聞いた瞬間凍りついた。
「なんで……?」
さ
ルエノアは、涙をこらえながら笑顔で続けた。
「もう街から出られないのよ。この丘にだって来れないわ。私だってこんなこと望んでいないのよ。でも、きっともうどうにかするなんて無理だわ。」
『━━私、王族に生まれてしまったのよ。もう国を治めるんですって。きっと私にはまだ早いと思うの。』
ジスタは少し考え、真剣な面持ちで言った。
「逃げよう。どこか遠くへ。僕達以外誰もいない、星が綺麗なところはどうかな?海が近くて、暖かい所もいいね。」
ジスタは涙を堪えて話し続ける。
「雪が綺麗なところも悪くないかな。でもやっぱり、花が綺麗なところも捨て難いな。ねぇルエノア、君はどこがいい?」
「ジスタ…」
『僕、君を迎えに行くよ。何があっても。』
ルエノアは驚いた顔をしたが、すぐに笑って
「そうね。待っているわ。」
と言った。
数日がたち、ルエノアは国を治める姫となった。
ルエノアが自室で本を読んでいると、バルコニーの窓が開いた気がした。
━━そこには、ジスタの姿があった。
「ジスタ…?!」
「来たよ、ルエノア。」
ジスタは優しく微笑む。
「ジスタ!」
ルエノアはジスタに駆け寄る。
「会いたかったわ、ジスタ。」
ルエノアを見て、ジスタは言う。
「ルエノアは、どこに行きたい?」
「私、どこまでも行くわ。」
(あぁ、でも)
「ジスタはどこへ行きたい?」
(ルエノアとは)
「ジスタ?」
「あぁ、ごめん!なんでもないよ。とにかく遠くへ行こう。」
「ふふ、そうね。」
二人は森の奥へ来た。
「これで追ってはこないだろうね。」
「ええ、ジスタ。」
「…ねぇルエノア。」
「なぁに?」
「君は、僕のために死ねる?」
(ルエノアといるには)
「面白いことを言うのね。…そうね、勿論死ねるわ。」
(この方が)
「そうか、なら━━」
「ジスタ…?」
ルエノアの楽しげな笑顔が崩れる。
「大丈夫。僕と一緒になるだけだ。」
「ジスタ?何を言っているの?」
「今思えば、これが確実なんだ。君は王族、すぐに家来が追いかけてくるだろう。でも、君と一緒になったら?君が僕の一部になったらどうだろう。痕跡もなく、追いかけられることもない。」
「え?」
『一緒になろう。』
血に染った白いワンピースを纏う彼女を抱きしめてジスタは言う。
「これで一緒になれるね、ルエノア。」
「眼球から、骨まで。
君の全てが僕の一部だ。」
猫使いさん(東京・11さい)からの相談
とうこう日:2020年12月31日みんなの答え:3件
[ まえへ ]
1
[ つぎへ ]
3件中 1 〜 3件を表示
-
、、、 最初はただただ良い話に思えたけど最後残酷というか。でもおもろかったよ。 さゆさん(神奈川・10さい)からの答え
とうこう日:2021年7月20日 -
素敵! 表現がすごく良かったよー!
私、空とか星とか月とか好きだからすぐに見入っちゃった。
幸せに、なれたの、かな?
最後すごくゾクゾクしちゃった。
すごく楽しませていただいきました!
またお会いできたら読みますね。
では! 太鳳さん(大阪・13さい)からの答え
とうこう日:2021年1月1日 -
素敵…! タイトルと書き出しに惹かれて。
「夜空色の瞳」
隠喩が良いと思いました。
最後のどんでん返し…と言うか、良い意味で予想外の展開。
とても素敵で本当に11歳か疑えるくらい語彙力凄かったです…(語彙力)
素敵な小説を有り難う御座いました 佐藤さん(香川・12さい)からの答え
とうこう日:2021年1月1日
[ まえへ ]
1
[ つぎへ ]
3件中 1 〜 3件を表示
-
- 【「相談するとき」「相談の答え(回答)を書くとき」のルール】をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
-
- 「短編小説投稿について」をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
-
- 回答には相談に対する回答内容を投稿してください。過度に自己紹介等が書かれている場合は、スタッフにて削除・非公開対応を行わせていただきます。
- ニックネームを頻繁に変更して、「元○○」というような説明を記載することはやめてください。
- 1部のユーザーになりすましの投稿が行われています。なりすましの投稿はやめてください。
- カテゴリごとの新着相談
-
-
- みんなはどんな沼にハマってる??03月19日
-
- オプチャの事について04月19日
-
- 親友が無視…だけどお話したい!04月19日
-
- 学校に行くのも辛いし休んでも辛い04月19日
-
- 3人兄弟って辛い04月18日
-
- 高校受験について04月18日
-
- 生理ガァ…04月18日
-
- 親知らずって抜いたほうがいい?04月19日
-
- 吹奏楽について 長文失礼します04月18日
-
- Knight Aのライブについて04月19日
-
- snowmanについての質問!04月18日
-
- ぴえん04月19日
-
- おしゃれデビューはどこから?04月18日
-
- 至急!!!めだか長生きさせてる人ー!!!04月19日
-
- 明るくなる方法を教えて下さい!!04月18日
-
- 空の上のキミ02月13日
-
- 地震が怖すぎる04月19日
-
いじめで困ったり、ともだちや先生のことで不安や悩みがあったりしたら、一人で悩まず、いつでもすぐ相談してね。
・>>SNSで相談する
・電話で相談する
・>>地元の相談窓口を探す
18歳までの子どものための相談先です。あなたの思いを大切にしながら、どうしたらいいかを一緒に考えてくれるよ。