センセイ。 #短編恋愛小説
初めての恋の相手は、学校の先生でした。
桜が散る季節に新しく入ってきた男の先生は、すごく優しくて、すごく暖かい人で、わたしは少しずつ、惹かれていった。
毎朝先生に挨拶をして。
ホントはわかってるけどわかってないふりをして。
それとなくアピールして。
先生の教科だけは必死にがんばって。
あなたと話したくて下校時刻ギリギリまで残って。
…でも。
先生は人気だから。いつも誰かに囲まれてて。
わたしのはいる隙間なんて、どこにもなくて。
あなたが顧問の部活とか委員会の子が羨ましくて。
他の女の子といるあなたを見るたびに、苦しくて。
「わたしだって好き…なのに…」
そう呟いたわたしの声は、回りの音にかき消されてしまった。
わたしと先生の間には教師と生徒っていう分厚い壁があって。
だから、諦めないといけない。
──わかってるのに。
もし、この時計壊すことができたら。
もし、ちがう出会い方をしていたら。
もし、わたしがもっと大人だったら。
もし、…なんて。
落ち込んでたら気がついてくれて、話聞いてくれて。
友だち関係で悩んでたら「いつでも相談しに来て」て優しく言ってくれて。
"先生"だから。"教師"だから。─"仕事"だから。
だから気にかけてくれてるってわかってたけど。
どうしようもなく惹かれてしまって。
先生の生徒じゃなければよかったのに。
卒業式、早く来て。
そう切実に願っていた。
卒業式。
卒業はもちろん悲しいけど。でも。
先生の生徒じゃなくなる。
教師と生徒じゃなくなる。
分厚い壁が、なくなる。
先生に、意識してもらえるかもしれない。
それが嬉しくて。
ただ、それだけだった。
「先生っ」
少し息を切らしながら駆け寄ると、先生は優しく微笑んでくれた。
「卒業おめでとう」といってくれた。
走ったからではない理由で早くなる鼓動。
嬉しい。
あなたのその笑顔をみれたこと。
明日からは教師と生徒じゃなくなること。
「ついに卒業かぁ」
しみじみと呟く横顔をみて胸のなかに甘酸っぱい香りが広がる。
「新しい学校でもがんばれ」
「はいっ」
「もう会えないだろうけど、応援してるから」
「─えっ」
一瞬、目の前が真っ暗になった気がした。
そっか、卒業ってことは明日からはここには来ないんだ。
教師と生徒じゃなくなるけど、それって…
ただの他人になっちゃうってこと……??
いまさら、そんなことに気がついた。
私たちを繋いでいたのは"学校"で。それがなければ、なんでもない。
わたしにとって先生は唯一だったけど、先生にとってはただいっぱいいる生徒のうちの一人にすぎないって。
いまさら、そんなことに気がついた。
「ぁっ…そうです、よねっ」
つんと痛む鼻と潤む目をうつむいて隠し、深呼吸をしてから、先生に向き直る。
「卒業なんて早いですね!あっという間だったな…」
だって、わたしは昨日のことみたいに。
ついさっきあったことかのように。
先生と過ごした日々を思い出せる。
呆れたような顔も、笑った顔も、真剣な顔も、わたしのために一緒に悩んで考えてくれた顔も。
全部全部。
先生を追いかけた日々も。
見つけたときの喜びも。
全部全部。
覚えてるよ。
つぅーと流れた涙。
あれっ、おかしいな。
ずっと待ち望んでいた卒業式。その、はずなのに…
笑おうとするとうまく笑えずに涙が溢れた。
「ほら、友達とはLINE繋がってるんでしょ?また会えるよ」
優しく背中を撫でる暖かい手。
それにまた涙があふれる。
違うの…違うよ。
お友だちと離れるのはもちろん寂しいけど。
でも、それよりも。
先生に会えなくなることが。
当たり前に聞けていた声が学校に来ても聞けなくなることが。
そのことが胸を締め付ける。
だって、わたしの学校はここじゃなくなるから。
必死にこの想いに蓋をして、さよなら、というと優しくがんばって、と頭を撫でてくれる。
暖かい大きな手。
微笑んでから歩いていく先生の背中をみて。
蓋が、外れそうになってしまった。
困らせちゃうかもしれない。
迷惑かもしれない。
届かないかもしれない。
握りしめた手が震える。
…でも。
今、言わないと
この先も、きっと、ずっと後悔する。
今、言えないと
この先も、きっと、ずっと言えない。
うつむいて手にちからを込め冷たい空気を吸う。
目をあけ、先生を見る。
震える声で先生を呼ぶ。
「先生っ!」
くるっと先生が振り返る。
「わたし、ずっと前から先生のことっ…」
溢れた想いと言葉と涙。
「好きっ…でしたっ」
掠れた声は、想いは、ちゃんと先生に届いた?
涙で滲む視界に、先生がいる。
ふわり、と柔らかい風からはほのかに甘い花と果実の香りがした。
─あぁ。
あなたと出逢ったあの季節がまたやってくる。
END 桜猫**さん(東京・13さい)からの相談
とうこう日:2023年5月7日みんなの答え:2件
桜が散る季節に新しく入ってきた男の先生は、すごく優しくて、すごく暖かい人で、わたしは少しずつ、惹かれていった。
毎朝先生に挨拶をして。
ホントはわかってるけどわかってないふりをして。
それとなくアピールして。
先生の教科だけは必死にがんばって。
あなたと話したくて下校時刻ギリギリまで残って。
…でも。
先生は人気だから。いつも誰かに囲まれてて。
わたしのはいる隙間なんて、どこにもなくて。
あなたが顧問の部活とか委員会の子が羨ましくて。
他の女の子といるあなたを見るたびに、苦しくて。
「わたしだって好き…なのに…」
そう呟いたわたしの声は、回りの音にかき消されてしまった。
わたしと先生の間には教師と生徒っていう分厚い壁があって。
だから、諦めないといけない。
──わかってるのに。
もし、この時計壊すことができたら。
もし、ちがう出会い方をしていたら。
もし、わたしがもっと大人だったら。
もし、…なんて。
落ち込んでたら気がついてくれて、話聞いてくれて。
友だち関係で悩んでたら「いつでも相談しに来て」て優しく言ってくれて。
"先生"だから。"教師"だから。─"仕事"だから。
だから気にかけてくれてるってわかってたけど。
どうしようもなく惹かれてしまって。
先生の生徒じゃなければよかったのに。
卒業式、早く来て。
そう切実に願っていた。
卒業式。
卒業はもちろん悲しいけど。でも。
先生の生徒じゃなくなる。
教師と生徒じゃなくなる。
分厚い壁が、なくなる。
先生に、意識してもらえるかもしれない。
それが嬉しくて。
ただ、それだけだった。
「先生っ」
少し息を切らしながら駆け寄ると、先生は優しく微笑んでくれた。
「卒業おめでとう」といってくれた。
走ったからではない理由で早くなる鼓動。
嬉しい。
あなたのその笑顔をみれたこと。
明日からは教師と生徒じゃなくなること。
「ついに卒業かぁ」
しみじみと呟く横顔をみて胸のなかに甘酸っぱい香りが広がる。
「新しい学校でもがんばれ」
「はいっ」
「もう会えないだろうけど、応援してるから」
「─えっ」
一瞬、目の前が真っ暗になった気がした。
そっか、卒業ってことは明日からはここには来ないんだ。
教師と生徒じゃなくなるけど、それって…
ただの他人になっちゃうってこと……??
いまさら、そんなことに気がついた。
私たちを繋いでいたのは"学校"で。それがなければ、なんでもない。
わたしにとって先生は唯一だったけど、先生にとってはただいっぱいいる生徒のうちの一人にすぎないって。
いまさら、そんなことに気がついた。
「ぁっ…そうです、よねっ」
つんと痛む鼻と潤む目をうつむいて隠し、深呼吸をしてから、先生に向き直る。
「卒業なんて早いですね!あっという間だったな…」
だって、わたしは昨日のことみたいに。
ついさっきあったことかのように。
先生と過ごした日々を思い出せる。
呆れたような顔も、笑った顔も、真剣な顔も、わたしのために一緒に悩んで考えてくれた顔も。
全部全部。
先生を追いかけた日々も。
見つけたときの喜びも。
全部全部。
覚えてるよ。
つぅーと流れた涙。
あれっ、おかしいな。
ずっと待ち望んでいた卒業式。その、はずなのに…
笑おうとするとうまく笑えずに涙が溢れた。
「ほら、友達とはLINE繋がってるんでしょ?また会えるよ」
優しく背中を撫でる暖かい手。
それにまた涙があふれる。
違うの…違うよ。
お友だちと離れるのはもちろん寂しいけど。
でも、それよりも。
先生に会えなくなることが。
当たり前に聞けていた声が学校に来ても聞けなくなることが。
そのことが胸を締め付ける。
だって、わたしの学校はここじゃなくなるから。
必死にこの想いに蓋をして、さよなら、というと優しくがんばって、と頭を撫でてくれる。
暖かい大きな手。
微笑んでから歩いていく先生の背中をみて。
蓋が、外れそうになってしまった。
困らせちゃうかもしれない。
迷惑かもしれない。
届かないかもしれない。
握りしめた手が震える。
…でも。
今、言わないと
この先も、きっと、ずっと後悔する。
今、言えないと
この先も、きっと、ずっと言えない。
うつむいて手にちからを込め冷たい空気を吸う。
目をあけ、先生を見る。
震える声で先生を呼ぶ。
「先生っ!」
くるっと先生が振り返る。
「わたし、ずっと前から先生のことっ…」
溢れた想いと言葉と涙。
「好きっ…でしたっ」
掠れた声は、想いは、ちゃんと先生に届いた?
涙で滲む視界に、先生がいる。
ふわり、と柔らかい風からはほのかに甘い花と果実の香りがした。
─あぁ。
あなたと出逢ったあの季節がまたやってくる。
END 桜猫**さん(東京・13さい)からの相談
とうこう日:2023年5月7日みんなの答え:2件
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感動 似たような経験あって…マジ泣きそ… ひなMa-ruさん(選択なし・11さい)からの答え
とうこう日:2023年6月16日 -
感動 しろもちだよ!
しろもちも、先生に恋した事あって、もう9ヶ月くらいで卒業して、その先生と会えなくなるから、寂しいんだ。。
だから主人公の苦しい気持ちがよく分かる。
感動した!
最後まで読んでくれてありがとう! しろもち、元アレン、元々にーこさん(選択なし・14さい)からの答え
とうこう日:2023年6月16日
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