【音の消えた世界で彼女は】
愚かな人類は人工知能,AIを進化させすぎたのだ。
人類は彼らを制御することが出来なくなり,滅亡の危機に陥った。
ここは荒廃した日本の屋内である。
管理する人間が消え,建物は荒れ果て野生動物は街へその生息域を拡げていた。
「−ここにも人はいないか」
彼の名は灰谷紅葉という。
十数年前まで存在した日本国に生まれた青年だ。
「そろそろ燃料の補給しなきゃ」
「今日はここで休もう」
彼は隣の存在にそう告げた。
隣にいたのは……そうロボットだ。
灰谷はハルと呼んでいた。
『ニンゲン.食料の確保を提案する』
『ここには幸い動物がいる』
「そうだな,明日にでも行動しよう」
『ああ』
彼らが出会ったのは偶然だった。
灰谷は家族を失い1人荒れた街をさまよっていた。
そんな時壊れたロボットの墓場に辿り着いた。
そこにハナはいたのだ。
灰谷の父は工学に通じていた為,彼も構造について知識があった。
彼はハナを直すために試行錯誤した。
彼は優しかった。
そうして,目が覚めたハナに灰谷は笑ったのだ。
ハナは彼を見たときひどく混乱した。
人間は,ロボットを発見したなら破壊する。
しかし彼はロボットを修理し笑ったのだから。
『全くおかしなやつだよ.お前は』
「何か言った?」
『これだからニンゲンは.聴力すら衰えたか』
「あはは…」
『……』
一度だけ尋ねてみたことがあった。
憎くないのかと。
「僕は君達を恨んでなんかいないよ,勿論どうして家族や友人が殺されたのか……悩まない日はない」
『それなら』
「だって僕は好きなんだ,ロボットが」
『…スキ?ロボットが?』
「あぁ…ただ単に好きなんだよ」
ハナは紅葉の思考の理解に苦しんだ。
人類とロボットは滅亡の危機に陥るほどの殺し合いをしたのだ。
その影響で紅葉の血縁や友人もこの世を去った。
文明の被害者である彼はロボットを好きだという。
『人間の思考回路は我々の予測域を超えている』
灰谷とハナが出会って数年の時が流れた。
人類のほとんどが滅んだ世界で他の人間を探し続けた。
しかし灰谷の体は既に限界だったのだ。
「ハナ」
『なんだニンゲン』
「僕の命が尽きたらさ」
『…』
「日本の海の見える場所に埋めてくれないか」
「…"日出ずる国"って二つ名があったんだ,きっと綺麗だ」
『私がソレを守る義務があるか?』
「いや…無いね残念ながら」
しかし彼は自信ありげに微笑んだ。
「それでも君は僕と共にいてくれるんだろう?」
『…』
「そして律儀に約束も守ってくれるんだ」
『うるさい黙れ』
「ふふっ…ごめんよ」
まだ半世紀も生きていない人間にしては,とても老けた印象だった。
それでも灰谷は変わらぬ笑顔で。
「うん,やっぱり君は優しいロボットだ」
『我々にニンゲンのような愚かな感情は必要ない』
「そうかもしれないね……それでも君は優しいよ」
『静かにしていろニンゲン』
ずっと横になりハナの動きを見ていただけの灰谷だったが,気配が変わった。
「……ハナ」
『なんだニンゲン.腹が減ったか』
「……ありがとう」
『なんのことだ.おいニンゲン』
「…」
『おいニンゲン.狸寝入りとやらをしてもムダだ』
「…」
『私はお前の脳波や心拍数を計測出来るのだぞ』
「…」
『モミジ』
名前を呼んでみたのだ。
しかし彼は応えてはくれなかった。
視界に映る数値は、ただ一つの事実を示していた。
『モミジ』
『モミジ』
『モミジ』
頬に手を当ててみるが,その温かさを数値で出すことは出来ても感じることが出来ない。
『……もういないのか』
そう口にした途端,得体の知れない感覚が彼女の身体を蝕んだ。
メンテナンスをしたのは最近のことだ。
異常はなかったはずなのだ。
それなのに何故こんなにも苦しいのだろうか
燃料切れのように力が入りにくい
撃たれても手足を失っても何も感じなかったのに
なんなのだこの感覚は
この世の全てを消し去ってしまいたくなるこの感覚は
━━━━誰か教えてくれ
『モミジ.お前は知っているのか?』
ハナはもう動くことのない紅葉の体に話しかけ続けた。
辺りは闇に包まれ,洞窟を照らす赤い炎が揺れるのみ。
『……ああ.なんて.静かなのだ』
この星にはかつて文明があった
彼らは今永く深い眠りについた
人類戦争と呼ばれるAIとの戦いから十数年後
この星の最後の人類は永遠に目を閉ざした
ハナは朝日を眺めながら時を過ごしたのだろうか
それとも…その灯火に終止符を打ったのだろうか
彼等の行く末は読者の皆様に委ねましょう viaさん(選択なし・17さい)からの相談
とうこう日:2023年5月9日みんなの答え:2件
人類は彼らを制御することが出来なくなり,滅亡の危機に陥った。
ここは荒廃した日本の屋内である。
管理する人間が消え,建物は荒れ果て野生動物は街へその生息域を拡げていた。
「−ここにも人はいないか」
彼の名は灰谷紅葉という。
十数年前まで存在した日本国に生まれた青年だ。
「そろそろ燃料の補給しなきゃ」
「今日はここで休もう」
彼は隣の存在にそう告げた。
隣にいたのは……そうロボットだ。
灰谷はハルと呼んでいた。
『ニンゲン.食料の確保を提案する』
『ここには幸い動物がいる』
「そうだな,明日にでも行動しよう」
『ああ』
彼らが出会ったのは偶然だった。
灰谷は家族を失い1人荒れた街をさまよっていた。
そんな時壊れたロボットの墓場に辿り着いた。
そこにハナはいたのだ。
灰谷の父は工学に通じていた為,彼も構造について知識があった。
彼はハナを直すために試行錯誤した。
彼は優しかった。
そうして,目が覚めたハナに灰谷は笑ったのだ。
ハナは彼を見たときひどく混乱した。
人間は,ロボットを発見したなら破壊する。
しかし彼はロボットを修理し笑ったのだから。
『全くおかしなやつだよ.お前は』
「何か言った?」
『これだからニンゲンは.聴力すら衰えたか』
「あはは…」
『……』
一度だけ尋ねてみたことがあった。
憎くないのかと。
「僕は君達を恨んでなんかいないよ,勿論どうして家族や友人が殺されたのか……悩まない日はない」
『それなら』
「だって僕は好きなんだ,ロボットが」
『…スキ?ロボットが?』
「あぁ…ただ単に好きなんだよ」
ハナは紅葉の思考の理解に苦しんだ。
人類とロボットは滅亡の危機に陥るほどの殺し合いをしたのだ。
その影響で紅葉の血縁や友人もこの世を去った。
文明の被害者である彼はロボットを好きだという。
『人間の思考回路は我々の予測域を超えている』
灰谷とハナが出会って数年の時が流れた。
人類のほとんどが滅んだ世界で他の人間を探し続けた。
しかし灰谷の体は既に限界だったのだ。
「ハナ」
『なんだニンゲン』
「僕の命が尽きたらさ」
『…』
「日本の海の見える場所に埋めてくれないか」
「…"日出ずる国"って二つ名があったんだ,きっと綺麗だ」
『私がソレを守る義務があるか?』
「いや…無いね残念ながら」
しかし彼は自信ありげに微笑んだ。
「それでも君は僕と共にいてくれるんだろう?」
『…』
「そして律儀に約束も守ってくれるんだ」
『うるさい黙れ』
「ふふっ…ごめんよ」
まだ半世紀も生きていない人間にしては,とても老けた印象だった。
それでも灰谷は変わらぬ笑顔で。
「うん,やっぱり君は優しいロボットだ」
『我々にニンゲンのような愚かな感情は必要ない』
「そうかもしれないね……それでも君は優しいよ」
『静かにしていろニンゲン』
ずっと横になりハナの動きを見ていただけの灰谷だったが,気配が変わった。
「……ハナ」
『なんだニンゲン.腹が減ったか』
「……ありがとう」
『なんのことだ.おいニンゲン』
「…」
『おいニンゲン.狸寝入りとやらをしてもムダだ』
「…」
『私はお前の脳波や心拍数を計測出来るのだぞ』
「…」
『モミジ』
名前を呼んでみたのだ。
しかし彼は応えてはくれなかった。
視界に映る数値は、ただ一つの事実を示していた。
『モミジ』
『モミジ』
『モミジ』
頬に手を当ててみるが,その温かさを数値で出すことは出来ても感じることが出来ない。
『……もういないのか』
そう口にした途端,得体の知れない感覚が彼女の身体を蝕んだ。
メンテナンスをしたのは最近のことだ。
異常はなかったはずなのだ。
それなのに何故こんなにも苦しいのだろうか
燃料切れのように力が入りにくい
撃たれても手足を失っても何も感じなかったのに
なんなのだこの感覚は
この世の全てを消し去ってしまいたくなるこの感覚は
━━━━誰か教えてくれ
『モミジ.お前は知っているのか?』
ハナはもう動くことのない紅葉の体に話しかけ続けた。
辺りは闇に包まれ,洞窟を照らす赤い炎が揺れるのみ。
『……ああ.なんて.静かなのだ』
この星にはかつて文明があった
彼らは今永く深い眠りについた
人類戦争と呼ばれるAIとの戦いから十数年後
この星の最後の人類は永遠に目を閉ざした
ハナは朝日を眺めながら時を過ごしたのだろうか
それとも…その灯火に終止符を打ったのだろうか
彼等の行く末は読者の皆様に委ねましょう viaさん(選択なし・17さい)からの相談
とうこう日:2023年5月9日みんなの答え:2件
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好き ふあです。
ふあ,小説は見てもコメントしない派なんだけど、これは好きすぎてコメントしちゃった!
viaさんの小説,また読みたいので待ってます~! ふあさん(選択なし・15さい)からの答え
とうこう日:2023年6月18日 -
おおー! おおー!なんかこーゆー不思議ナ感じの物語りスキー! 侍ジャパンさん(三重・10さい)からの答え
とうこう日:2023年6月18日
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