ずっと。
「あー青春したい!イケメンいない?」
「澪、またそれ言ってる」
話題が無くなる度に青春青春と繰り返す澪に呆れる。
「やっぱ私立受ければよかったか」
「やめてよ、私受からないから」
澪は文武両道で才色兼備。おまけに性格もいいと来た。
澪のことが好きな男子なら沢山いるだろうに、彼らには遠い存在で近寄り難いらしい。
「まあそうだよねー、私立だからってイケメンがいるわけじゃないもんねー」
ただ、澪は面食いなので、彼らが勇気を絞って告白したとして粉砕されてしまうかもしれない。
「私たちは耐え抜くしかないんだよ、三年間」
「それを超えれば夢のJKだもんね!」
ま、同じことを去年も言った気はするんだけども。
「あ、そういえば、一組の他校から来た奴、イケメンって噂だよ。私の好みじゃなかったけど、藍里見に行く?」
こいつ、イケメンなら何でもいいわけじゃないのか…
「行く!」
私も面食いかもしれない。
昼休み。一組へ向かう。
「あ、あいつだよ。名前何だっけ…あさ…朝霧優斗だったかな?」
「朝霧?」
どこかで聞いたような。
出席番号で並んだ、一番前の角の席。
数人の男子に囲まれて、顔が見えない。
「うわ、あいつら邪魔、全然顔見えないじゃん」
誰かがつぶやいた。
その声が聞こえたわけではないんだろうけど、噂のイケメン―朝霧の周りにいた男子のうちの二人がそこを離れて、教室を出て行った。
朝霧はこちらを一瞥した後、窓の方を向いてしまう。
綺麗な顔立ち。
「ほら、顔見た?なんかかわいらしい顔してるよね。私もうちょっとキリッとしたほうが好きだな、なんかこう…」
澪が話しかけてくる。
「ん、見たけど、どこかで見覚えがあるような…」
朝霧が、もう一度こちらを向いた。
目が合って、驚く。
朝霧は同じように驚いたような顔をして、目をそらした。
見覚えがあると思った顔、名前が、幼いころの記憶と重なる。
「ゆうくん…?」
不意に予鈴がなって、ふっと我に返った。
「やばっ、戻ろ!」
授業が始まっても上の空で、気づけば五時間目が終わっていた。
「どしたん藍里、ずっと上の空だったじゃん。あ!もしかして、恋しちゃった?」
違う。…はず。
幼稚園が同じで、卒園する頃に言われたんだ。
『あいちゃん、大人になったら、けっこんしようね』
そんな感情を私は抱いていなかったから、なに言ってるんだろバカだな、と思っていた。
「そうかそうか、ああいう男が好みなのか…」
「違うって!」
バカだと思ってたから、認めたくなくて。
澪は、ニヤニヤしている。
「ふふっ、隠さなくてもいいんだよ〜?」
バカなのは、私の方だったのかもしれない。
下校時刻。あのままずっと朝霧のことを考えてしまって、授業にも集中できなかった。
そもそも東中の学区に住んでたはずなのに、なんで西中にいるんだろ。
澪はピアノのレッスンらしく、下校は一人。
だからか余計、ずっと朝霧のことを考えてしまう。
「…いちゃん!…あいちゃん!」
「えっ?」
昼休みからずっと考えていた本人が、そこにいた。
「ゆうくん!?」
「久しぶり。昼休み、一組の前いたよね?その、どうしたのかな、って」
み、見られてた。
「そっその、あれは」
私より背は低かったはずなのに抜かされてるし。
目の前で見るとやっぱりゆうくんの顔が綺麗で。
思わず顔が熱くなる。
「どうかした?」
イケメンがいるって聞いて、なんて言えない。
「そ、その、友達に誘われて…」
「それで?」
「えっ?いや、なんか」
「なんか?」
「いっ、イケメンがいるって」
言っちゃった。
「い、イケメン?いたの?」
いたも何も、目の前にいる。
「っ、うん…」
「…かっこよかった?」
「まあ…」
上手く話せないのは、話すのが、久しぶりだから、の、はず…
「…誰の事?」
「…え?」
「誰が、かっこよかったの?」
言葉に詰まる。
ゆうくんだよって、言いたい。でも怖い。
目の前にいるのは、結婚しようって言ってくれたゆうくんじゃない。
もう、中学生なんだ。
私のこと、好きなわけじゃない。
期待しちゃ、ダメ。
「ゆうくん、だよ…」
「…っ!」
期待しちゃ、ダメだよ、私…!
「本気で?」
ちらりとゆうくんの方を見ると、ゆうくんは私をまっすぐに見つめていた。
「本気、で…」
「期待してもいい?」
見つめられると照れくさくて、目をそらしてしまう。
「それって…」
期待しても、って、それって。
私の方こそ、期待してもいいの?
「僕、あいちゃんのこと、好きだったよ、ずっと」
そうだよね。
別に、今好きなわけじゃない。
沈黙。
「…今も、好きだよ…っ」
顔が、かあっと熱くなる。
「私も好き」
もしかしたら、私も、ずっと好きだったのかもしれない。
だって私、"あのとき"、バカだと思ったけど、嬉しかったんだよ、ゆうくん。 光莉さん(兵庫・13さい)からの相談
とうこう日:2023年5月27日みんなの答え:9件
「澪、またそれ言ってる」
話題が無くなる度に青春青春と繰り返す澪に呆れる。
「やっぱ私立受ければよかったか」
「やめてよ、私受からないから」
澪は文武両道で才色兼備。おまけに性格もいいと来た。
澪のことが好きな男子なら沢山いるだろうに、彼らには遠い存在で近寄り難いらしい。
「まあそうだよねー、私立だからってイケメンがいるわけじゃないもんねー」
ただ、澪は面食いなので、彼らが勇気を絞って告白したとして粉砕されてしまうかもしれない。
「私たちは耐え抜くしかないんだよ、三年間」
「それを超えれば夢のJKだもんね!」
ま、同じことを去年も言った気はするんだけども。
「あ、そういえば、一組の他校から来た奴、イケメンって噂だよ。私の好みじゃなかったけど、藍里見に行く?」
こいつ、イケメンなら何でもいいわけじゃないのか…
「行く!」
私も面食いかもしれない。
昼休み。一組へ向かう。
「あ、あいつだよ。名前何だっけ…あさ…朝霧優斗だったかな?」
「朝霧?」
どこかで聞いたような。
出席番号で並んだ、一番前の角の席。
数人の男子に囲まれて、顔が見えない。
「うわ、あいつら邪魔、全然顔見えないじゃん」
誰かがつぶやいた。
その声が聞こえたわけではないんだろうけど、噂のイケメン―朝霧の周りにいた男子のうちの二人がそこを離れて、教室を出て行った。
朝霧はこちらを一瞥した後、窓の方を向いてしまう。
綺麗な顔立ち。
「ほら、顔見た?なんかかわいらしい顔してるよね。私もうちょっとキリッとしたほうが好きだな、なんかこう…」
澪が話しかけてくる。
「ん、見たけど、どこかで見覚えがあるような…」
朝霧が、もう一度こちらを向いた。
目が合って、驚く。
朝霧は同じように驚いたような顔をして、目をそらした。
見覚えがあると思った顔、名前が、幼いころの記憶と重なる。
「ゆうくん…?」
不意に予鈴がなって、ふっと我に返った。
「やばっ、戻ろ!」
授業が始まっても上の空で、気づけば五時間目が終わっていた。
「どしたん藍里、ずっと上の空だったじゃん。あ!もしかして、恋しちゃった?」
違う。…はず。
幼稚園が同じで、卒園する頃に言われたんだ。
『あいちゃん、大人になったら、けっこんしようね』
そんな感情を私は抱いていなかったから、なに言ってるんだろバカだな、と思っていた。
「そうかそうか、ああいう男が好みなのか…」
「違うって!」
バカだと思ってたから、認めたくなくて。
澪は、ニヤニヤしている。
「ふふっ、隠さなくてもいいんだよ〜?」
バカなのは、私の方だったのかもしれない。
下校時刻。あのままずっと朝霧のことを考えてしまって、授業にも集中できなかった。
そもそも東中の学区に住んでたはずなのに、なんで西中にいるんだろ。
澪はピアノのレッスンらしく、下校は一人。
だからか余計、ずっと朝霧のことを考えてしまう。
「…いちゃん!…あいちゃん!」
「えっ?」
昼休みからずっと考えていた本人が、そこにいた。
「ゆうくん!?」
「久しぶり。昼休み、一組の前いたよね?その、どうしたのかな、って」
み、見られてた。
「そっその、あれは」
私より背は低かったはずなのに抜かされてるし。
目の前で見るとやっぱりゆうくんの顔が綺麗で。
思わず顔が熱くなる。
「どうかした?」
イケメンがいるって聞いて、なんて言えない。
「そ、その、友達に誘われて…」
「それで?」
「えっ?いや、なんか」
「なんか?」
「いっ、イケメンがいるって」
言っちゃった。
「い、イケメン?いたの?」
いたも何も、目の前にいる。
「っ、うん…」
「…かっこよかった?」
「まあ…」
上手く話せないのは、話すのが、久しぶりだから、の、はず…
「…誰の事?」
「…え?」
「誰が、かっこよかったの?」
言葉に詰まる。
ゆうくんだよって、言いたい。でも怖い。
目の前にいるのは、結婚しようって言ってくれたゆうくんじゃない。
もう、中学生なんだ。
私のこと、好きなわけじゃない。
期待しちゃ、ダメ。
「ゆうくん、だよ…」
「…っ!」
期待しちゃ、ダメだよ、私…!
「本気で?」
ちらりとゆうくんの方を見ると、ゆうくんは私をまっすぐに見つめていた。
「本気、で…」
「期待してもいい?」
見つめられると照れくさくて、目をそらしてしまう。
「それって…」
期待しても、って、それって。
私の方こそ、期待してもいいの?
「僕、あいちゃんのこと、好きだったよ、ずっと」
そうだよね。
別に、今好きなわけじゃない。
沈黙。
「…今も、好きだよ…っ」
顔が、かあっと熱くなる。
「私も好き」
もしかしたら、私も、ずっと好きだったのかもしれない。
だって私、"あのとき"、バカだと思ったけど、嬉しかったんだよ、ゆうくん。 光莉さん(兵庫・13さい)からの相談
とうこう日:2023年5月27日みんなの答え:9件
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-
…! 素敵な作品…!
こんなことが自分にもあれば…なんてwww ほのか #Nicoから改名したよ♪さん(福岡・14さい)からの答え
とうこう日:2023年7月8日 -
すごぉ! やほぅ
元菜亜華の
雪音だよぉ!
よろっ!
ーーーーー
うわぁ、、
すごぉっ!
青春って
かんじっ.
雪音も
こんな恋
してみたぃ、、、()
ーーーーー
じゃ、またね〜っ( ´∀`)/~~ 雪音#ゆきね#元菜亜華さん(選択なし・11さい)からの答え
とうこう日:2023年7月8日 -
青春!名作!>*0*<キャアアッ @一方通行#です!
私こういう恋愛小説好きです。
素敵なお話でした!
@一方通行#さん(京都・10さい)からの答え
とうこう日:2023年7月7日 -
名作 こーいう恋愛小説好きすぎるー!
朝霧くんと藍里ちゃんがこれからも幸せでいられますように!
しかもゆうくんとあいちゃんって呼びあってるの可愛すぎんか!
もはや尊い…推しカップルです! 小説家になりたい人さん(選択なし・16さい)からの答え
とうこう日:2023年7月6日 -
青春ですね。 青春ですね。
タイトルと同じですみません。
感想は
すごいラブストーリーって感じがしました。
よく書けていてすごいです。
表現とかいいですね。
感動しました。
ドキドキしました。
短文すみません。言い方、どこか間違っているかもしれません。
あと、少し上から目線かもしれません・・・本当にすみません!
ばいばいです! @一方通行#さん(京都・10さい)からの答え
とうこう日:2023年7月6日 -
すごいね! こんにちわ!#*み〜ななまゆまゆだよぉ!
すごいね!語彙力とかすごすぎ!
ラブストーリーって感じだね。
私も体験してみたい。
ばいちゃ〜!
(急に終わってゴメン!あと短文でゴメン!)
#*み〜ななまゆまゆ*&さん(京都・10さい)からの答え
とうこう日:2023年7月6日 -
凄い...!恋愛小説って感じ!((語彙力 Hi(^^♪My name's UNO(*´・ч・`*)
☆*: .。. o本題o .。.:*☆
凄い...!
恋愛小説って感じ!((語彙力
藍里ちゃんの恋がリアルに描かれていて、感動した☆彡
Have a nice day(*^^)v
Thanks for reading(*'ω'*)See ya(^^♪ 兎乃*うの*#元雲羽#元々詩春さん(岐阜・12さい)からの答え
とうこう日:2023年7月6日 -
すてき!!! ライです!
こんな恋、現実であったらすごいなあ!
感動したよお素敵でした!
じゃあね!(短くてゴメンね!) ライさん(埼玉・11さい)からの答え
とうこう日:2023年7月6日 -
… こんにちワンタンメン!ミンナのアイドル,侍ジャパンが今日もやってきたよー!((アイドルって,自称だからね…(汗)
いいラブストーリー…!とっても詰まってて良かったよ!
んじゃ,アディオス☆アッシュ・ブラボー(意味不明)
侍ジャパンさん(三重・10さい)からの答え
とうこう日:2023年7月6日
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- 「短編小説投稿について」をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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- キッズなんでも相談では、投稿されたユーザーの
個人 を判断 することが出来ないため、削除依頼 には対応することは出来ません。投稿しても問題ない内容かよく確認してください。
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