友情と恋は隣り合わせ
「私、木村のこと好きなの」
友達の沙優にそう言われ、私は内心戸惑っていた。
「へぇ、いいと思うよ」
何でもない風を取り繕い、私は微笑んだ。
「美奈は好きな人いないの?」
沙優は嬉しそうに笑い、私に聞いてくる。
「私は…」
これは言っちゃ駄目だ。
だって、私の好きな人は。
「ううん、いないよ」
そう言って、私はいつも自分の気持ちに嘘をつく。
これは禁句。木村のことが好きな沙優にこんなこと言っちゃ駄目だ。
_____木村のことが好きだって。
あいつは合唱団に入っていて、それなりに歌が上手い。
ぶっきら棒で口も悪いけど、さりげなく人のことを心配できる。
そんな木村のことが、この世界で一番好きだ。
恋と友情。天秤に二つがぶら下がり、左右に揺れている。
沙優を裏切りたくはない。だけど、木村のことも好き。
「よかったぁ、好きな人被んなくって。もし、好きな人ができたら一番に教えるんだよ? 応援するから」
沙優は暖かい笑みを浮かべた。
「だって私たち友達だもん、ね」
そんな甘い囁きが私を苦しめる。
本心を伝えられないまま何日かが過ぎていった。
「美奈、秘密だよ」
誰もいない屋上で沙優が頬を赤らめて告げた。
「私、木村に告るんだ」
一瞬、時が止まったかと思った。
もう、決めなくちゃいけない。
私は唇を噛み、下を向いた。
「…ごめん」
「えっ?」
沙優の息遣いが揺れる。
いつだって私は弱い。だけど、それが私という人間なんだ。
「私、応援できない」
私は顔をあげ、沙優の目を真っ直ぐに見つめた。
「な、なんで…?」
沙優が視線を逸らす。
「応援してくれるんじゃないの? 嘘、ついてたの…?」
これを言ったら戻れない。だけど、もう嘘はつかない。
これを言ってもう友達に戻れないのならもうそこで終わりだ。私は覚悟を決め、息を吐き出した。
「私、木村のこと好きなんだ。ずっと、好きだった」
ひゅっ、と息を呑む音。
「ずっと、騙してたんだ」
そんな言葉が頭を埋め尽くす。
だけど、次に聞こえたのは笑い声だった。
「あははっ、あははっ」
沙優が口元を抑えて笑っている。
「ごめん、ごめん」
沙優は目元の涙を拭った。
「あれ、嘘だよ。私、ずっと」
悪戯っぽく沙優は口角を上げた。
「ほんとのこと言ってくれるの、待ってたんだ」
違う、それは嘘。沙優だって木村のことが好きなはずだ。
沙優は気を使ってくれているだけだ。
「木村を狙う子は多いから、気をつけてよ。譲ってあげたんだから、ちゃんと成功しな」
そう言って、沙優が軽く背中を押した。
「…うんっ」
ありがとう、沙優。
私はそして木村に告げた。
「私、木村のことが」
私の声がまだ明るい外の空気に溶けてゆく。
「好き」
私の声が弾むように揺れた。
そして、彼は照れたように笑う。
「…俺も」
と。
*後書き*
今回は恋愛モノを書いてみました。
ちょっと友情要素も含んじゃいましたけど(笑)。
ということで、最後までお読み頂き有難う御座いました。
コメント頂ければ幸いです。
それでは、また次回でお会いできますように。 紗羅さん(東京・15さい)からの相談
とうこう日:2023年7月5日みんなの答え:4件
友達の沙優にそう言われ、私は内心戸惑っていた。
「へぇ、いいと思うよ」
何でもない風を取り繕い、私は微笑んだ。
「美奈は好きな人いないの?」
沙優は嬉しそうに笑い、私に聞いてくる。
「私は…」
これは言っちゃ駄目だ。
だって、私の好きな人は。
「ううん、いないよ」
そう言って、私はいつも自分の気持ちに嘘をつく。
これは禁句。木村のことが好きな沙優にこんなこと言っちゃ駄目だ。
_____木村のことが好きだって。
あいつは合唱団に入っていて、それなりに歌が上手い。
ぶっきら棒で口も悪いけど、さりげなく人のことを心配できる。
そんな木村のことが、この世界で一番好きだ。
恋と友情。天秤に二つがぶら下がり、左右に揺れている。
沙優を裏切りたくはない。だけど、木村のことも好き。
「よかったぁ、好きな人被んなくって。もし、好きな人ができたら一番に教えるんだよ? 応援するから」
沙優は暖かい笑みを浮かべた。
「だって私たち友達だもん、ね」
そんな甘い囁きが私を苦しめる。
本心を伝えられないまま何日かが過ぎていった。
「美奈、秘密だよ」
誰もいない屋上で沙優が頬を赤らめて告げた。
「私、木村に告るんだ」
一瞬、時が止まったかと思った。
もう、決めなくちゃいけない。
私は唇を噛み、下を向いた。
「…ごめん」
「えっ?」
沙優の息遣いが揺れる。
いつだって私は弱い。だけど、それが私という人間なんだ。
「私、応援できない」
私は顔をあげ、沙優の目を真っ直ぐに見つめた。
「な、なんで…?」
沙優が視線を逸らす。
「応援してくれるんじゃないの? 嘘、ついてたの…?」
これを言ったら戻れない。だけど、もう嘘はつかない。
これを言ってもう友達に戻れないのならもうそこで終わりだ。私は覚悟を決め、息を吐き出した。
「私、木村のこと好きなんだ。ずっと、好きだった」
ひゅっ、と息を呑む音。
「ずっと、騙してたんだ」
そんな言葉が頭を埋め尽くす。
だけど、次に聞こえたのは笑い声だった。
「あははっ、あははっ」
沙優が口元を抑えて笑っている。
「ごめん、ごめん」
沙優は目元の涙を拭った。
「あれ、嘘だよ。私、ずっと」
悪戯っぽく沙優は口角を上げた。
「ほんとのこと言ってくれるの、待ってたんだ」
違う、それは嘘。沙優だって木村のことが好きなはずだ。
沙優は気を使ってくれているだけだ。
「木村を狙う子は多いから、気をつけてよ。譲ってあげたんだから、ちゃんと成功しな」
そう言って、沙優が軽く背中を押した。
「…うんっ」
ありがとう、沙優。
私はそして木村に告げた。
「私、木村のことが」
私の声がまだ明るい外の空気に溶けてゆく。
「好き」
私の声が弾むように揺れた。
そして、彼は照れたように笑う。
「…俺も」
と。
*後書き*
今回は恋愛モノを書いてみました。
ちょっと友情要素も含んじゃいましたけど(笑)。
ということで、最後までお読み頂き有難う御座いました。
コメント頂ければ幸いです。
それでは、また次回でお会いできますように。 紗羅さん(東京・15さい)からの相談
とうこう日:2023年7月5日みんなの答え:4件
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凄くいい恋愛・友情物語だね☆* Hi(^^♪My name's Marin(*´・ч・`*)
☆*: .。. o本題o .。.:*☆
凄くいい恋愛・友情物語だね☆*
Have a nice day(*^^)v
Thanks for reading(*'ω'*)See ya(^^♪ 舞凜*まりん*#元兎乃#最推しの誕生日!さん(岐阜・12さい)からの答え
とうこう日:2023年8月9日 -
感動した! こんにちは♪純恋です(≧∇≦)b
琉希から改名したので名前覚えて
もらえたら嬉しいです(^_-)-☆
*・*・*・*・*・START*・*・*・*・*・*
美奈ちゃんと木村くんが両思いで良かった(#^^#)
友達と被っても自分に正直な美奈ちゃん、
凄く尊敬する!
*・*・*・*・*・FINISH*・*・*・*・*・*
誤字脱字あったらすみません!
参考になったら嬉しいです(^o^) 元琉希 純恋さん(神奈川・11さい)からの答え
とうこう日:2023年8月9日 -
すごい 美奈ちゃん いい友達持ってるね。
私も、そんな友達欲しい!! アヒルさん(選択なし・11さい)からの答え
とうこう日:2023年8月9日 -
年下から失礼します こんにちは!紗羅さん!
年下から感想失礼します。
本題
友達と好きな人被って言い出せないっていうの、あるあるですよね!
沙優ちゃん優しーと思いました!
美奈ちゃん告白成功してよかったけど、やっぱり沙優ちゃんはまだモヤモヤがありそう…友達だし、純粋に応援できるといいですね!
短編小説ありがとうございました!
これからも頑張ってください
ばいばい 短編小説読む専門(笑)さん(選択なし・12さい)からの答え
とうこう日:2023年8月9日
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