生きてるって幸せなんだなって。
「...あ」
気づいたらお母さんのことを見てる。
なんでだろ。
目があって2秒。
逸らしちゃうのはなんでだろ。
恥ずかしくて窓を見る。
雨が降ってるのはなんでだろ。
それから頭の中がいっぱいになって
私は今日も嘘をつくんだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「めいー!今日はどうだったのっ??好きな男の子のこと」
「こっち向いてニコって笑ってくれたよ」
ほーら。また嘘ついた。
心のなかであっかんべ。
「あはっ めいってばモテモテだねぇ」
お母さんはそう言ってゴシゴシ私の頭を撫でた。
その手に、私の手を重ねる。
少しだけ、強くなれた気がした。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ほんの少しの、昔の記憶。
大事な大事な、私の記憶。
それをそっと胸に押し戻しながら、また窓を見る。
降りしきる雨は、いつの間にか止んでいた。
ふぅ、と吐いた息を戻すように大きく息を吸って、胸に溜める。
幸せな気持ちが、心に広がる。
生きているって幸せだなって思えた。
ーーーーーーーー-ーーーーーーーーー
お母さんの危篤状態(きとくじょうたい:回復の見込みがないこと)が知らされたのは午前1時。
前々から入院していたので、病院はわかっている。
私が外へ出ると、雨が降り出した。
傘も持たずに走っていたとき、ふと思った。
私って哀しい人間なのね、って。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「201...」
お母さんの病室を目の前にして、ため息が漏れる。
ガラガラガラ、とドアを開けると、そこにお母さんはいなかった。
「中山さんのお子さんですか?」
背後から声がした。
振り向くと、看護師さんだった。
「...はい」
服の裾をぎゅ、と握った。
これは私の悪い癖。
「中山さんなら、集中治療室にいますよ」
「それに、今は午前1時ですから、中学生は家に帰りなさい」
看護師さんは私の服を見て言った。
たしかに私は制服を着ている。
誰がどこからどう見ても、東中学校の中学生だ。
「でも...お母さんはどうなっちゃうんですか!?死んじゃうんですか!?ねぇ、なんとか言ってよ!!」
看護師さんは私に、落ち着いた声色で、それでいてしっかりした瞳で私に言った。
「あなたはとってもお母さん思いなのね。そうね、中山さんも言っていたわ。『私はすごく愛されてる』って。」
「でもそれが負担になって病気にかかるケースも有るわ。そうね、橙色の痣が出現する怖い病気とか」
私は『橙色』に引っかかって、私の頭の辞書をパラパラめくった。
そっか、あの時のあの肌の痣は―――。
「その痣はね、治療法の無い原因不明の病気でね、中山さんも、『あの子を思うたび、肌がチリチリ痛くなる』って言ってたわ」
全部、私のせいだ。私が甘えたから、私が頼ったから、全部全部、私が―――。
「私が死にます!なぜお母さんが死ななくちゃいけないの!?お母さんの代わりに、私が死にます!」
気づいたときにはそう、口から出ていた。
「それは、無理なの。ごめんなさい。私には、何も、してあげられないの...。」
そう言うと看護師さんは泣き出した。
さっきの凛とした態度はどこへやら、背中を丸めてただ泣いていた。
「私も」
「息子を失ったの」
看護師さんがポツリポツリ話しだした。
空は鮮やかな群青色から、橙色へと姿を変えていった。
「息子は7才の頃にその病気が見つかってね、9才の頃この病院に搬送されたの」
「毎日元気な声で挨拶してくれてね、めったに病気はかからなかったんだけど。私に、胸がチリチリ痛む、って言ってきたの」
私は話の内容を聞き逃さないようにゆっくり言葉を飲み込んだ。
「検索しても出てこないから...。ほんとに毎日が苦痛だったわ」
「だから少しでも笑顔でいようと、少しずつ笑わせてたの。でもそれが原因だなんて...」
看護師さんは、橙色の空を見て、言った。
「息子はね、今も私を見てるの。大丈夫って言ってくれてる気がするのよ」
そう言うと、看護師さんが私の方を見た。
しっかりとした、瞳で。
「だから、信じましょう。この先、どんな辛い未来だとしても。お母さんを.....信じなくちゃ」
そう言うと看護師さんはにっこり笑った。
その笑顔が少しだけお母さんと似ている気がした。
「...っ、はい!」
私もとびきりの笑みを浮かべた。
お母さんに、届くように。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「お母さん、ありがとうね」
私はそう言って、今日もまた、会社へ向かう。
この一日が、
一生続きますように。
そんなこと、叶えられないけど、
いつまでも、そう思ってたいんだ。
ーーーーーENDーーーーーー 元Marine、まろまろカフェさん(青森・10さい)からの相談
とうこう日:2023年7月7日みんなの答え:3件
気づいたらお母さんのことを見てる。
なんでだろ。
目があって2秒。
逸らしちゃうのはなんでだろ。
恥ずかしくて窓を見る。
雨が降ってるのはなんでだろ。
それから頭の中がいっぱいになって
私は今日も嘘をつくんだ。
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「めいー!今日はどうだったのっ??好きな男の子のこと」
「こっち向いてニコって笑ってくれたよ」
ほーら。また嘘ついた。
心のなかであっかんべ。
「あはっ めいってばモテモテだねぇ」
お母さんはそう言ってゴシゴシ私の頭を撫でた。
その手に、私の手を重ねる。
少しだけ、強くなれた気がした。
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ほんの少しの、昔の記憶。
大事な大事な、私の記憶。
それをそっと胸に押し戻しながら、また窓を見る。
降りしきる雨は、いつの間にか止んでいた。
ふぅ、と吐いた息を戻すように大きく息を吸って、胸に溜める。
幸せな気持ちが、心に広がる。
生きているって幸せだなって思えた。
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お母さんの危篤状態(きとくじょうたい:回復の見込みがないこと)が知らされたのは午前1時。
前々から入院していたので、病院はわかっている。
私が外へ出ると、雨が降り出した。
傘も持たずに走っていたとき、ふと思った。
私って哀しい人間なのね、って。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「201...」
お母さんの病室を目の前にして、ため息が漏れる。
ガラガラガラ、とドアを開けると、そこにお母さんはいなかった。
「中山さんのお子さんですか?」
背後から声がした。
振り向くと、看護師さんだった。
「...はい」
服の裾をぎゅ、と握った。
これは私の悪い癖。
「中山さんなら、集中治療室にいますよ」
「それに、今は午前1時ですから、中学生は家に帰りなさい」
看護師さんは私の服を見て言った。
たしかに私は制服を着ている。
誰がどこからどう見ても、東中学校の中学生だ。
「でも...お母さんはどうなっちゃうんですか!?死んじゃうんですか!?ねぇ、なんとか言ってよ!!」
看護師さんは私に、落ち着いた声色で、それでいてしっかりした瞳で私に言った。
「あなたはとってもお母さん思いなのね。そうね、中山さんも言っていたわ。『私はすごく愛されてる』って。」
「でもそれが負担になって病気にかかるケースも有るわ。そうね、橙色の痣が出現する怖い病気とか」
私は『橙色』に引っかかって、私の頭の辞書をパラパラめくった。
そっか、あの時のあの肌の痣は―――。
「その痣はね、治療法の無い原因不明の病気でね、中山さんも、『あの子を思うたび、肌がチリチリ痛くなる』って言ってたわ」
全部、私のせいだ。私が甘えたから、私が頼ったから、全部全部、私が―――。
「私が死にます!なぜお母さんが死ななくちゃいけないの!?お母さんの代わりに、私が死にます!」
気づいたときにはそう、口から出ていた。
「それは、無理なの。ごめんなさい。私には、何も、してあげられないの...。」
そう言うと看護師さんは泣き出した。
さっきの凛とした態度はどこへやら、背中を丸めてただ泣いていた。
「私も」
「息子を失ったの」
看護師さんがポツリポツリ話しだした。
空は鮮やかな群青色から、橙色へと姿を変えていった。
「息子は7才の頃にその病気が見つかってね、9才の頃この病院に搬送されたの」
「毎日元気な声で挨拶してくれてね、めったに病気はかからなかったんだけど。私に、胸がチリチリ痛む、って言ってきたの」
私は話の内容を聞き逃さないようにゆっくり言葉を飲み込んだ。
「検索しても出てこないから...。ほんとに毎日が苦痛だったわ」
「だから少しでも笑顔でいようと、少しずつ笑わせてたの。でもそれが原因だなんて...」
看護師さんは、橙色の空を見て、言った。
「息子はね、今も私を見てるの。大丈夫って言ってくれてる気がするのよ」
そう言うと、看護師さんが私の方を見た。
しっかりとした、瞳で。
「だから、信じましょう。この先、どんな辛い未来だとしても。お母さんを.....信じなくちゃ」
そう言うと看護師さんはにっこり笑った。
その笑顔が少しだけお母さんと似ている気がした。
「...っ、はい!」
私もとびきりの笑みを浮かべた。
お母さんに、届くように。
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「お母さん、ありがとうね」
私はそう言って、今日もまた、会社へ向かう。
この一日が、
一生続きますように。
そんなこと、叶えられないけど、
いつまでも、そう思ってたいんだ。
ーーーーーENDーーーーーー 元Marine、まろまろカフェさん(青森・10さい)からの相談
とうこう日:2023年7月7日みんなの答え:3件
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-
感動した~! おはこんこん(^^♪ εぽむぽむз って言います☆
まろまろカフェさんよろしくね.'ペコリ
☆*: .。. o本題o .。.:*☆
とてもいいお話だね.'
胸がいっぱいになった☆彡
それから、表現というか言い回しがすごく上手だね.'.'
改めて、命の大切さを実感したよ。
.。*゚+.*.。 ゚+..。*゚+.。*゚+.*.。 ゚+..。*゚+.。*゚+.*.。 ゚+..。*゚+
Sorry if there are any typos.
Thank you for reading^^
Have a nice day!
See ya☆彡 εぽむぽむз#小6女子#部屋の整頓中!さん(選択なし・12さい)からの答え
とうこう日:2023年8月17日 -
すげー… 敢えて「無事」「死亡」を言わないのが良い!感動した!また小説書いてね! 莉澪さん(埼玉・12さい)からの答え
とうこう日:2023年8月13日 -
いいお話だね☆彡 Hi(^^♪My name's Marin(*^▽^*)
☆*: .。. o本題o .。.:*☆
いいお話だね☆彡
Have a nice day(*^^)v
Thanks for reading(*'ω'*)See ya(^^♪ 舞凜*まりん*#元兎乃#元々雲羽さん(岐阜・12さい)からの答え
とうこう日:2023年8月12日
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- 【「相談するとき」「相談の答え(回答)を書くとき」のルール】をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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- 「短編小説投稿について」をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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- キッズなんでも相談では、投稿されたユーザーの
個人 を判断 することが出来ないため、削除依頼 には対応することは出来ません。投稿しても問題ない内容かよく確認してください。
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