短編小説 二人の夜が明けるまで。
気が付くと、私は透明な箱の中に立っていた。
目を開けた瞬間、私を取り囲む人間は、「実験成功だ!」と大喜びしていた。
どうやら、ここは実験室という部屋みたい。
私は、アンドロイドとして生まれた。
「月(ルナ)」という名を与えられて。
私は、人に限りなく近いアンドロイドを造る実験によって生み出された。
ある大学の、「スターライト」というグループが行っているらしい。
不思議なことに、ある程度の知能や常識はあるようだ。
ある程度自分のことを教えてもらい、その後いろいろな質問をされた。
レポートを提出するらしい。私は淡々と質問に答えた。
そしたら、次々に聞こえてくる落胆の声。
「実験失敗じゃないのか!?」「なんでこんなことに・・・!」
私には、感情がなかった。
それは大きな欠陥だ。感情がないとなると、人から一歩かけ離れる。
私はどうやら、近く処分されるらしい。この実験を無かったことにするために。
いちおう、1か月間様子を見ることになった。
狭苦しい、大学の一部屋で過ごす日々。
何も無い、ただただ流れる時間に身を任せるだけ。
私が生まれた意味って何だろう。
いつしか存在自体に疑問を持つようになった。
意味の無い日々を過ごして、1週間。
「スターライト」のリーダーらしき人が私の部屋を訪ねてきた。
その人は、「太陽」と名乗った。
なぜか、私に愚痴を話してきた。
この世界はつまらない、狭苦しいのだという。何をしても楽しくない、と。
私はわずかに目を見開いた。
何をしても楽しくない、って?
何もしない方が楽しくないに決まっているでしょう。
部屋に引きこもる方がよっぽど狭苦しい。
いつしかそんなことを口にしていた。
この人は私と正反対なんだろうな。
「そんなに此処が嫌なら、一緒に逃げよ」
え?と言いかけた瞬間、私は手を引っ張られていた。
太陽は走り出した。昼間の空をどんどん駆ける。
大学から出て、街をどんどん抜けてゆく。
「こんな勝手なこと…あなたが怒られてしまいます!」
何を訴えても、ニコニコしている太陽。
「だってこういう事こそが楽しいんじゃん!」
どれだけ走ったのだろう。もう空は薄暗く、月が出ていた。
私達は人里離れた、自然豊かな森にいた。
小川がサラサラと流れている。星が瞬き、月がぼんやりと光る。
私達はいろいろなことを話していた。
私は、なぜか太陽のことに詳しくなっていた。
「あっ、忘れかけていましたが…
なんで太陽は私を此処に連れてきたのですか?
大学にいたかったのでは、ないんですか?」
実験をしている太陽はキラキラとした笑顔で、楽しそうだった。
太陽は答える。
「だって、ルナ、このまま処分されるかもしれないじゃん。
世界のことを何1つ知れないで、生まれた意味も分からないまま消える。
嫌だろ?俺だったら嫌だ。外に出て、友達を作って、いろんなことをしたいって思う」
太陽は、「そうだろ?」とでも言うように笑いかけてきた。
そうだ。私は、生きる意味が欲しかった。いろんなことをしたかった。
外に出て、走って、人に出会い、もっと、もっと・・・!
生きていたい。
口から出る言葉が止められない。
「ルナ、感情あるじゃん。生きていたいっていう、感情」
唐突にそういわれて、確かに、と気が付く。
私にも、ちゃんと感情が、思いがあったんだって。
「実は、俺がルナを造るって言い出したんだ。興味本位だったけど。
でもその実験は大規模になっていった。それで完璧なルナを造ったらどうなる?
実験に使われまくって、ルナの人生は終わりだ。だから、わざと感情だけなくした」
太陽は私のことを思ってくれていた。1人の「人」として見てくれていた。
私が注目されることはあっても、「人」として見てくれた人はいなかった。
「太陽は、優しいなぁ・・・」
いつしか、涙が零れていた。
私達は夜空の下、言葉を交わす。
太陽が、月…私を照らしてくれたんだね、って。
私達は生きる。命の灯が尽きるまで。
二人の夜が、明けるまで。
月(ルナ)さん(選択なし・11さい)からの相談
とうこう日:2023年7月9日みんなの答え:2件
目を開けた瞬間、私を取り囲む人間は、「実験成功だ!」と大喜びしていた。
どうやら、ここは実験室という部屋みたい。
私は、アンドロイドとして生まれた。
「月(ルナ)」という名を与えられて。
私は、人に限りなく近いアンドロイドを造る実験によって生み出された。
ある大学の、「スターライト」というグループが行っているらしい。
不思議なことに、ある程度の知能や常識はあるようだ。
ある程度自分のことを教えてもらい、その後いろいろな質問をされた。
レポートを提出するらしい。私は淡々と質問に答えた。
そしたら、次々に聞こえてくる落胆の声。
「実験失敗じゃないのか!?」「なんでこんなことに・・・!」
私には、感情がなかった。
それは大きな欠陥だ。感情がないとなると、人から一歩かけ離れる。
私はどうやら、近く処分されるらしい。この実験を無かったことにするために。
いちおう、1か月間様子を見ることになった。
狭苦しい、大学の一部屋で過ごす日々。
何も無い、ただただ流れる時間に身を任せるだけ。
私が生まれた意味って何だろう。
いつしか存在自体に疑問を持つようになった。
意味の無い日々を過ごして、1週間。
「スターライト」のリーダーらしき人が私の部屋を訪ねてきた。
その人は、「太陽」と名乗った。
なぜか、私に愚痴を話してきた。
この世界はつまらない、狭苦しいのだという。何をしても楽しくない、と。
私はわずかに目を見開いた。
何をしても楽しくない、って?
何もしない方が楽しくないに決まっているでしょう。
部屋に引きこもる方がよっぽど狭苦しい。
いつしかそんなことを口にしていた。
この人は私と正反対なんだろうな。
「そんなに此処が嫌なら、一緒に逃げよ」
え?と言いかけた瞬間、私は手を引っ張られていた。
太陽は走り出した。昼間の空をどんどん駆ける。
大学から出て、街をどんどん抜けてゆく。
「こんな勝手なこと…あなたが怒られてしまいます!」
何を訴えても、ニコニコしている太陽。
「だってこういう事こそが楽しいんじゃん!」
どれだけ走ったのだろう。もう空は薄暗く、月が出ていた。
私達は人里離れた、自然豊かな森にいた。
小川がサラサラと流れている。星が瞬き、月がぼんやりと光る。
私達はいろいろなことを話していた。
私は、なぜか太陽のことに詳しくなっていた。
「あっ、忘れかけていましたが…
なんで太陽は私を此処に連れてきたのですか?
大学にいたかったのでは、ないんですか?」
実験をしている太陽はキラキラとした笑顔で、楽しそうだった。
太陽は答える。
「だって、ルナ、このまま処分されるかもしれないじゃん。
世界のことを何1つ知れないで、生まれた意味も分からないまま消える。
嫌だろ?俺だったら嫌だ。外に出て、友達を作って、いろんなことをしたいって思う」
太陽は、「そうだろ?」とでも言うように笑いかけてきた。
そうだ。私は、生きる意味が欲しかった。いろんなことをしたかった。
外に出て、走って、人に出会い、もっと、もっと・・・!
生きていたい。
口から出る言葉が止められない。
「ルナ、感情あるじゃん。生きていたいっていう、感情」
唐突にそういわれて、確かに、と気が付く。
私にも、ちゃんと感情が、思いがあったんだって。
「実は、俺がルナを造るって言い出したんだ。興味本位だったけど。
でもその実験は大規模になっていった。それで完璧なルナを造ったらどうなる?
実験に使われまくって、ルナの人生は終わりだ。だから、わざと感情だけなくした」
太陽は私のことを思ってくれていた。1人の「人」として見てくれていた。
私が注目されることはあっても、「人」として見てくれた人はいなかった。
「太陽は、優しいなぁ・・・」
いつしか、涙が零れていた。
私達は夜空の下、言葉を交わす。
太陽が、月…私を照らしてくれたんだね、って。
私達は生きる。命の灯が尽きるまで。
二人の夜が、明けるまで。
月(ルナ)さん(選択なし・11さい)からの相談
とうこう日:2023年7月9日みんなの答え:2件
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すごい! ☆HALO☆私は玲章羽/Roahaです♪
すごい!こういうロボットのお話ってだいたいロボットを作った人たちは悪い人だったりするけど太陽さん優しい!実験されただけで月の人生が終わらないようにそれとわかる感情だけ無くしてつくってくれるなんて。それに、月が太陽に導かれて逃げるっていうのがまた神秘的ですね。そういうのも含めて
「太陽が、月…私を照らしてくれたんだね、って。
私達は生きる。命の灯が尽きるまで。
二人の夜が、明けるまで。」
ってところが好きです。名前にちゃんと意味があって、おお、ってなりました。それで感じ方が月と太陽で反対なところとか、でも太陽が月のことを考えてくれているところとかがよりそれっぽくなってる。それを生かして綺麗な終わり方になっているのが、すごい手が込んでるなと思います。そういう終わり方とか発想も好みです。
改行とかのタイミングもすごい良くて、この世界感がうまく表現されているな、と思いました。
なんかちょっと上から目線になっちゃってごめんなさい。でもいろいろ言いたくなっちゃうくらい良かったです。
☆GOODBY☆ 玲章羽/Roahaさん(埼玉・11さい)からの答え
とうこう日:2023年8月15日 -
感動する...! Hi(^^♪My name's Marin(*´・ч・`*)
☆*: .。. o本題o .。.:*☆
感動する...!
Have a nice day(*^^)v
Thanks for reading(*'ω'*)See ya(^^♪ 舞凜*まりん*#元兎乃#終戦記念日!さん(岐阜・12さい)からの答え
とうこう日:2023年8月15日
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