これからも、ずっと。
「彼氏がほしいよーっ!」
放課後、幼なじみの光(こう)と二人きりの教室でそう叫ぶ。
「うわっ。またかよ、ゆり。そんなに彼氏ほしいか?」
「ほしいに決まってんじゃん。そんなことよりさっ、光は彼女ほしいとか思わないわけ?」
「......んー、特にねえわ」
「ふうん。そーですか」
彼の方に乗り出した体を元に戻す。
この言葉の裏に、『特別な感情が隠されてる』なんて、光は考えてもないんだろうな。
「てかお前、林田は? 仲いいだろ」
首をかしげてそう聞いてくる彼に、「そういうんじゃないし」と笑う。
「いいよね。あんたはモテて」
そう。私の幼なじみはモテる。だからこそ、この二人きりの時間が私にとってはすごく楽しくて、大切なんだ。
「......ま、けど俺好きなヤツいるんだわ」
「............え?」
心臓がドクンと揺れる。好きな人、いるの?
「......あ。ま、まあ、いるか。そうだよね。そっか。うん。ぶっちゃけ私も好きな人いるし」
動揺しているのがバレないようにうんうんとうなずく。心なしか、口調が早くなってしまった気もした。いきなり突き付けられた現実に、何とも言えない感情が溢れ出す。
私ったら、バカだ。あんなに女の子が周りにいて、好きな人がいないわけないじゃんか。
......ううん、違う。バカなのは光の方だ。光が期待させるからいけないんだ。
保育園の時からずーっと一緒で。小学校の時も、中学校の時も、いつも近くにいてくれた。私がいじめられて泣いている時だって、そばにいてくれたのはいつも光。いじめっこと戦ってくれたのも光。「俺の大切な人、泣かせんなよ」ってさ。私がどこの高校に行こうか迷ってる時、「おんなじ高校行きたいな」って、遠回しに誘ってくれたのも。二人で合格した時には、お互い飛んで喜んだ。私と一緒の時が一番楽しい、とか。そんなん期待するに決まってる。
光ってズルい。だって、気づいた時にはもう、好きになってた。
「ゆり?」
「じゃあ、お互い頑張ろうね。好きな人とくっつくために。あ、私、もう帰んなきゃ」
「ゆり。俺は__」
今すぐここからいなくなりたい。なのに、カバンを肩に席を立つ私の腕を光が掴む。そのくせ、何かを言いかけ、すぐに言葉を切った。ほら、そうやって、また私を期待させる。
「なによ」
「いや、なんでもない」
スッと離れていく彼の指。私は掴まれていた腕を、もう片方の自分手でおおう。
「けど、俺はその人とくっつくことなんてできねーんだわ」
乾いたような笑いをこぼして私から目をそらす。
「そいつ、裏でふつうにモテモテ。可愛いし、すぐに彼氏ほしいとか言うし。......好きな人もいるらしい」
そんなの私に関係ない。そう言えたら楽だろうな。
「......大好きなんだね。その子んこと」
「まあな」
「光、頑張ってね」
泣きそうになるのを必死にこらえ、私はそう言う。そうでも言わなきゃ、自分がだめになりそうだった。
「お前もな。つか、......腕ごめん。大丈夫か?」
「うん、大丈夫。光はやっぱり優しいね」
「な、なんだよ。.........好きなヤツいんのに、他の男にそういう事ばっか言ってんじゃねーぞ」
そういった彼の頬は、どこか赤くなっている。
やっぱり光はバカだ。
私がこんなこと言うのは、光にだけだよ。好きなヤツって、自分のことなのにね。
「ばーか」
「は、はぁ!? バカって......。お前にだけは言われたくねーよ。ゆりだって、......バカなんだからな」
「ちょ! 私がバカなわけないでしょ!? 失礼極まりないっ」
そう言ってしばらくの沈黙後、お互い「ぶふっ」と吹き出してしまう。
おもいっきり笑った後、光が改まった様子で私と目を合わせた。
「......ゆり。お互い大切な人ができても、ちょこちょこ会って話そうな」
「......うん。もちろん」
私ときみは、どっちにしても繋がらない設定なんだね。
「良かった。......俺も応援してる」
どこか切なそうに笑う光の顔は、夕日に照らされていつも以上に綺麗に見えた。
これからもずっと、変わらないんだろうな。これからもずっと、ただの幼なじみのままで。これからもずっと、彼は私の気持ちに気づかない。
そう。これからも、ずっと。
ちぃさん(神奈川・13さい)からの相談
とうこう日:2023年7月18日みんなの答え:2件
放課後、幼なじみの光(こう)と二人きりの教室でそう叫ぶ。
「うわっ。またかよ、ゆり。そんなに彼氏ほしいか?」
「ほしいに決まってんじゃん。そんなことよりさっ、光は彼女ほしいとか思わないわけ?」
「......んー、特にねえわ」
「ふうん。そーですか」
彼の方に乗り出した体を元に戻す。
この言葉の裏に、『特別な感情が隠されてる』なんて、光は考えてもないんだろうな。
「てかお前、林田は? 仲いいだろ」
首をかしげてそう聞いてくる彼に、「そういうんじゃないし」と笑う。
「いいよね。あんたはモテて」
そう。私の幼なじみはモテる。だからこそ、この二人きりの時間が私にとってはすごく楽しくて、大切なんだ。
「......ま、けど俺好きなヤツいるんだわ」
「............え?」
心臓がドクンと揺れる。好きな人、いるの?
「......あ。ま、まあ、いるか。そうだよね。そっか。うん。ぶっちゃけ私も好きな人いるし」
動揺しているのがバレないようにうんうんとうなずく。心なしか、口調が早くなってしまった気もした。いきなり突き付けられた現実に、何とも言えない感情が溢れ出す。
私ったら、バカだ。あんなに女の子が周りにいて、好きな人がいないわけないじゃんか。
......ううん、違う。バカなのは光の方だ。光が期待させるからいけないんだ。
保育園の時からずーっと一緒で。小学校の時も、中学校の時も、いつも近くにいてくれた。私がいじめられて泣いている時だって、そばにいてくれたのはいつも光。いじめっこと戦ってくれたのも光。「俺の大切な人、泣かせんなよ」ってさ。私がどこの高校に行こうか迷ってる時、「おんなじ高校行きたいな」って、遠回しに誘ってくれたのも。二人で合格した時には、お互い飛んで喜んだ。私と一緒の時が一番楽しい、とか。そんなん期待するに決まってる。
光ってズルい。だって、気づいた時にはもう、好きになってた。
「ゆり?」
「じゃあ、お互い頑張ろうね。好きな人とくっつくために。あ、私、もう帰んなきゃ」
「ゆり。俺は__」
今すぐここからいなくなりたい。なのに、カバンを肩に席を立つ私の腕を光が掴む。そのくせ、何かを言いかけ、すぐに言葉を切った。ほら、そうやって、また私を期待させる。
「なによ」
「いや、なんでもない」
スッと離れていく彼の指。私は掴まれていた腕を、もう片方の自分手でおおう。
「けど、俺はその人とくっつくことなんてできねーんだわ」
乾いたような笑いをこぼして私から目をそらす。
「そいつ、裏でふつうにモテモテ。可愛いし、すぐに彼氏ほしいとか言うし。......好きな人もいるらしい」
そんなの私に関係ない。そう言えたら楽だろうな。
「......大好きなんだね。その子んこと」
「まあな」
「光、頑張ってね」
泣きそうになるのを必死にこらえ、私はそう言う。そうでも言わなきゃ、自分がだめになりそうだった。
「お前もな。つか、......腕ごめん。大丈夫か?」
「うん、大丈夫。光はやっぱり優しいね」
「な、なんだよ。.........好きなヤツいんのに、他の男にそういう事ばっか言ってんじゃねーぞ」
そういった彼の頬は、どこか赤くなっている。
やっぱり光はバカだ。
私がこんなこと言うのは、光にだけだよ。好きなヤツって、自分のことなのにね。
「ばーか」
「は、はぁ!? バカって......。お前にだけは言われたくねーよ。ゆりだって、......バカなんだからな」
「ちょ! 私がバカなわけないでしょ!? 失礼極まりないっ」
そう言ってしばらくの沈黙後、お互い「ぶふっ」と吹き出してしまう。
おもいっきり笑った後、光が改まった様子で私と目を合わせた。
「......ゆり。お互い大切な人ができても、ちょこちょこ会って話そうな」
「......うん。もちろん」
私ときみは、どっちにしても繋がらない設定なんだね。
「良かった。......俺も応援してる」
どこか切なそうに笑う光の顔は、夕日に照らされていつも以上に綺麗に見えた。
これからもずっと、変わらないんだろうな。これからもずっと、ただの幼なじみのままで。これからもずっと、彼は私の気持ちに気づかない。
そう。これからも、ずっと。
ちぃさん(神奈川・13さい)からの相談
とうこう日:2023年7月18日みんなの答え:2件
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ラストが意外!! こんにちは!わわわです。
光くんが告ってハッピーエンド…かと思いきやそうじゃないんですね!!
すごく綺麗で悲しい話ですね
いつかお互いの気持ちに気づいて、ハッピーになって欲しいけど、
「これからも、ずっと」気づかないんですね…
こんな綺麗な話をありがとうございます!!また書いてください! わわわさん(東京・12さい)からの答え
とうこう日:2023年8月26日 -
凄すぎる!! Hi(^^♪My name's Marin(*´・ч・`*)
☆*: .。. o本題o .。.:*☆
凄すぎる!!
Have a nice day(*^^)v
Thanks for reading(*'ω'*)See ya(^^♪ 舞凜*まりん*#元兎乃#改名まで6日!さん(岐阜・12さい)からの答え
とうこう日:2023年8月26日
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