普通を信じすぎた人達
ある魔法の世界の小さな街に、一人の青年が居た。その青年の名は"ネアン"。
この世界では小さな子供からお年寄りまで。たくさんの人々が魔法を使い、栄えていたのだ。
けれど、ネアンだけは昔から魔法が使えなかった。街の皆は、そんなネアンには気にも留めなかった。
魔法が使えない奴なんかより、魔法の使える他の者達でもっと世を発展させるべきだと考えたのだろう。
「なぜみんなが出来ていることを、僕は出来ないのだろう。」
ネアンはいつもそんな事を考え、日々を生きる。
普通の家庭では、みんな魔法でなんでも出来る。魔法があるだけで、日々がとても豊かに暮らせるのだ。
物を引き寄せ、手元へと。空を飛び、どんな所も一瞬で行けたり、何も無い冷たい真っ暗闇でも、火を一瞬で灯せる。
だがネアンは手を伸ばし、物を取る。地面を這いつくばり、ゆっくり進むしかないし、暗闇でもただ凍えることしかできない。
「ちょっと。それ取って。」
声の主は、いじめっ子のリシェス。
リシェスはそういいつつ、サッカーボールに指を差す。
「自分で取りに行けば…」
そう言った途端、
「魔法が届かねえんだよ!!!」
とリシェスは怒鳴りつける。ネアンはそのまま黙って、一歩一歩とボールへと近づき、
ボールを拾おうとした瞬間、パッ、とボールは宙に浮く。ネアンが振り返れば、
「ギャハハ!こいつまた騙されてやんの!」
ネアンを指差し、嘲笑うリシェスが目に入る。
そこに、小学生くらいの子達が通りかかる。
「なんであんな事も出来ないの?簡単だよ。」
その中でも一番背が低い子が言い放つ。
「そう言うこと言わないの。」
高学年の子が小声で囁く様に言う。
ネアンはそんな会話を聞くと咄嗟に逃げる様に走り出す。
泣きじゃくりながら、ボロボロのアパートのドアを力いっぱい開く。
部屋の中で小さく丸まり、布団の中に潜る。沢山泣いた後、布団を蹴飛ばし、魔法を使えるようになることを決心し、努力に励み出した。だがスマホで調べても出てくるのは赤ちゃん用の記事のみ。可愛くデフォルメされた記事を必死に読み、練習しても、なにも得られなかった。気づけば夜。
「まあ…あんな奴の戯言だ…もういいや。」
だが後に、そんなひと時の決心すら愚かしく見えてきた。できない者にはできない。そう思ったネアンは
また布団に潜り込み、日が戻るのを待った。
まだ真夜中。目覚ましではないのに、スマホが鳴り出す。地震だ。
だが、大した物では無い。念の為、すぐに布団に潜り込み、頭を抱える様にして身の安全を確保した。
アラートは鳴り止まない。次は津波が来るそうだ。同様にそこまでの津波ではない。
が、また近くの高い建物に避難しようと、外に出る。いつもなら皆はもう空を飛んで避難しているだろう。
だが皆はなぜかとても戸惑っていた。
「どうしたの?早く空に!」
ネアンは大声で呼びかける。
だがそんな呼びかけにも答えず、ずっとあたふたした様子だった。
「聞こえない?空を飛ぶんだ!もうそこまで波が…時間がない!走れ!」
彼らは振り返る。その時には手遅れだ。
断末魔と共に波に人々が飲み込まれていく中、ネアン一人が走って逃げた。
ネアンが振り返れば、必死に波を止めようと両手を波へと伸ばし、何かを唱えている者や、空を飛ぼうと
何度もジャンプしている者がいた。いつもならば軽くあしらわれていた小さな津波が人々を飲み込む。
「逃げる時間はあっただろうに…」
ネアンは一人、高台からゆっくり飲み込まれてゆく人々を見下ろしていた。
その光景はあまりにも愚かだった。
ふと聞き覚えのある声が聞こえる。
「ネアン!!助けてくれ!」
こもっているような、微かな声だが、リシェスの声だ。
手をバタバタさせながら、息をしようと、上を必死に向いている。
「ごめんね。僕には何も出来ないんだ。」
ネアンはそう言い放ち、海へと流されるリシェスを眺める。 唯一さん(静岡・12さい)からの相談
とうこう日:2023年7月21日みんなの答え:3件
この世界では小さな子供からお年寄りまで。たくさんの人々が魔法を使い、栄えていたのだ。
けれど、ネアンだけは昔から魔法が使えなかった。街の皆は、そんなネアンには気にも留めなかった。
魔法が使えない奴なんかより、魔法の使える他の者達でもっと世を発展させるべきだと考えたのだろう。
「なぜみんなが出来ていることを、僕は出来ないのだろう。」
ネアンはいつもそんな事を考え、日々を生きる。
普通の家庭では、みんな魔法でなんでも出来る。魔法があるだけで、日々がとても豊かに暮らせるのだ。
物を引き寄せ、手元へと。空を飛び、どんな所も一瞬で行けたり、何も無い冷たい真っ暗闇でも、火を一瞬で灯せる。
だがネアンは手を伸ばし、物を取る。地面を這いつくばり、ゆっくり進むしかないし、暗闇でもただ凍えることしかできない。
「ちょっと。それ取って。」
声の主は、いじめっ子のリシェス。
リシェスはそういいつつ、サッカーボールに指を差す。
「自分で取りに行けば…」
そう言った途端、
「魔法が届かねえんだよ!!!」
とリシェスは怒鳴りつける。ネアンはそのまま黙って、一歩一歩とボールへと近づき、
ボールを拾おうとした瞬間、パッ、とボールは宙に浮く。ネアンが振り返れば、
「ギャハハ!こいつまた騙されてやんの!」
ネアンを指差し、嘲笑うリシェスが目に入る。
そこに、小学生くらいの子達が通りかかる。
「なんであんな事も出来ないの?簡単だよ。」
その中でも一番背が低い子が言い放つ。
「そう言うこと言わないの。」
高学年の子が小声で囁く様に言う。
ネアンはそんな会話を聞くと咄嗟に逃げる様に走り出す。
泣きじゃくりながら、ボロボロのアパートのドアを力いっぱい開く。
部屋の中で小さく丸まり、布団の中に潜る。沢山泣いた後、布団を蹴飛ばし、魔法を使えるようになることを決心し、努力に励み出した。だがスマホで調べても出てくるのは赤ちゃん用の記事のみ。可愛くデフォルメされた記事を必死に読み、練習しても、なにも得られなかった。気づけば夜。
「まあ…あんな奴の戯言だ…もういいや。」
だが後に、そんなひと時の決心すら愚かしく見えてきた。できない者にはできない。そう思ったネアンは
また布団に潜り込み、日が戻るのを待った。
まだ真夜中。目覚ましではないのに、スマホが鳴り出す。地震だ。
だが、大した物では無い。念の為、すぐに布団に潜り込み、頭を抱える様にして身の安全を確保した。
アラートは鳴り止まない。次は津波が来るそうだ。同様にそこまでの津波ではない。
が、また近くの高い建物に避難しようと、外に出る。いつもなら皆はもう空を飛んで避難しているだろう。
だが皆はなぜかとても戸惑っていた。
「どうしたの?早く空に!」
ネアンは大声で呼びかける。
だがそんな呼びかけにも答えず、ずっとあたふたした様子だった。
「聞こえない?空を飛ぶんだ!もうそこまで波が…時間がない!走れ!」
彼らは振り返る。その時には手遅れだ。
断末魔と共に波に人々が飲み込まれていく中、ネアン一人が走って逃げた。
ネアンが振り返れば、必死に波を止めようと両手を波へと伸ばし、何かを唱えている者や、空を飛ぼうと
何度もジャンプしている者がいた。いつもならば軽くあしらわれていた小さな津波が人々を飲み込む。
「逃げる時間はあっただろうに…」
ネアンは一人、高台からゆっくり飲み込まれてゆく人々を見下ろしていた。
その光景はあまりにも愚かだった。
ふと聞き覚えのある声が聞こえる。
「ネアン!!助けてくれ!」
こもっているような、微かな声だが、リシェスの声だ。
手をバタバタさせながら、息をしようと、上を必死に向いている。
「ごめんね。僕には何も出来ないんだ。」
ネアンはそう言い放ち、海へと流されるリシェスを眺める。 唯一さん(静岡・12さい)からの相談
とうこう日:2023年7月21日みんなの答え:3件
[ まえへ ]
1
[ つぎへ ]
3件中 1 〜 3件を表示
-
おおおおおおおおお〜!! やっほー♪瑠璃夏です(*'▽')
*・゜゚・*:.。..。.:*・'ヽ(*゚▽゚*)ノ'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
おおおおおおおおおお!!すごいっ!!!とにかく、すごい!!
凄いという言葉しか出てこない!
尊敬!天才!小説家になれそう!!
って思いました!!
では〜(@^^)/~~~
心を込めて 瑠璃夏(*'ω'*) 瑠璃夏さん(東京・12さい)からの答え
とうこう日:2023年8月29日 -
すごく面白いです! 感動… 初めまして! カイトです。名前は男ですが、一応女です。
〈では、本題!〉
魔法使えるという設定がすごい!
初めバカにしていた子が最後には自分に返ってくるというところがすごく好き!
最後には、自分がいじめてた子に助けるという…
このお話で、自分がやったことは返ってるということが、改めて分かりました!
素敵なお話をありがとう! カイトさん(岐阜・12さい)からの答え
とうこう日:2023年8月28日 -
次元がレベチすぎる!! Hi(^^♪My name's Marin(*´・ч・`*)
☆*: .。. o本題o .。.:*☆
次元がレベチすぎる!!
Have a nice day(*^^)v
Thanks for reading(*'ω'*)See ya(^^♪ 舞凜*まりん*#元兎乃#改名まで4日!さん(岐阜・12さい)からの答え
とうこう日:2023年8月28日
[ まえへ ]
1
[ つぎへ ]
3件中 1 〜 3件を表示
-
- 【「相談するとき」「相談の答え(回答)を書くとき」のルール】をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
-
- 「短編小説投稿について」をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
-
- キッズなんでも相談では、投稿されたユーザーの
個人 を判断 することが出来ないため、削除依頼 には対応することは出来ません。投稿しても問題ない内容かよく確認してください。
- キッズなんでも相談では、投稿されたユーザーの
- カテゴリごとの新着相談
-
-
- みんなの好きな短歌は?11月29日
-
- 画面が...01月15日
-
- どう思われるの?01月16日
-
- 学校に行けない01月16日
-
- 家族のことがすきじゃない01月15日
-
- テスト勉強01月15日
-
- 生理なのかわからない01月16日
-
- 2週間以上咳が出る01月16日
-
- 外部コーチが嫌なんだけどみんなはどう思う?01月15日
-
- みんなのカラオケの十八番曲は?01月15日
-
- ブルーロック好き集まれー01月15日
-
- 好きな男の子の話01月16日
-
- 地雷系の靴や鞄がわからない01月15日
-
- みんなの好きなお寿司のネタは?01月16日
-
- コピック使ってる人教えてー!01月15日
-
- あの場所で 〜笑顔と感動の物語〜09月30日
-
- 吐き気を消すにはどうしよう01月16日
-
いじめで困ったり、ともだちや先生のことで不安や悩みがあったりしたら、一人で悩まず、いつでもすぐ相談してね。
・>>SNSで相談する
・電話で相談する
・>>地元の相談窓口を探す
18歳までの子どものための相談先です。あなたの思いを大切にしながら、どうしたらいいかを一緒に考えてくれるよ。