【短編小説】ひどいよ
「ひどいよ、翔……これでも私、女の子なんだよ……?」
目薬を溜めた目をぱちぱちさせながら、上目遣いで彼を見つめる。
私は篠田拓美、高校2年生。
一応バスケット部のエースだけれど、背は小さいし、顔も幼いってよく言われる。だけど、だけど…………!
ある日、ふと聞いてしまった。私の彼氏、新谷翔がいつもの奴らと帰宅しているところを。
「お前、拓美と付き合ってんの?え、普通に可愛い?」
「拓美って……あの巨人の先輩らを吹っ飛ばしたっていう噂の?」
私は思わず隠れてしまったけど、話は気になってしょうがなかった。
「俺、あいつと付き合っても無理だなー。だって女らしくないし、胸小さいし。興奮しねー」
「あ、それ分かるわ。なんかガサツっぽいし、顔も幼くて好みじゃない」
「うはは、言えてる!」
その会話を聞いて、私は確信してしまった。ああ、やっぱりそう思われていたんだな、と。
確かに、私がバスケ部に入った理由は身長を伸ばすためだった。中学の頃は男子よりも小さかったから、高校では絶対に伸びてやるって思ってた。だから、先輩に色々言われながらも頑張った。その結果、1年にしてレギュラーになった。
「……いやー、普通。まあ」
「ゴリラじゃん。あれは無理!w」
ゴリラって……いくらなんでもひどくない?女の子に言う言葉じゃない、絶対。
そもそもゴリラって貶されているけれど、意外と社交的で愛嬌で群れのリーダーが決まるし、仲間意識が強い生き物なんだけど!!しかも童顔で可愛いし、結構人気だし、繊細で平和主義な性格の動物だ。
……もしかして、意外と女の子っぽいって言われているのかな!??いやー、照れちゃうな!嬉しいなー!あー!
……正直、結構傷ついてた。今まで気にしていたけれど、いざ面と向かって言われたらショックだった。
もしかしたら、翔も私のことゴリラって思っているかも。そう思ったら怖くなって、彼の顔を見れなかった。
それからは、部活に行くのも憂鬱だった。今まで楽しかったはずなのに、今は辛い。
数日後の帰宅時、偶然翔を校門あたりで見つけたから制服のシャツの真ん中を引っ張って言った。目薬もさして、うるうるさせて、精一杯の可愛さをアピールしながら。
「これでも、私のことゴリラって思うの?」
どれだけ女の子を慰めるのが、フォローするのが上手なのか、お手並み拝見といきましょう。
「ひどいよ。これでも私、女の子なんだよ……?」
涙を目に溜めて、上目遣いで見つめる。どうだ、これで流石に謝るだろう。
ふと顎を掴まれて、くいっと上に向けさせられた。
キス、されるのかなと思って目を瞑った。けれど、唇には感触はなく、代わりに額に柔らかいものが触れた。
髪がちょちょいと指で払われて、後毛を耳にかけられて、最後に目薬をハンカチで拭われた。
「ごめんごめん、泣かないで」
彼は優しく笑って、頭を撫でてきた。
……なにこれ、ずるい。こんなに優しいの、反則だよ……。
「あいつらには拓美の可愛さなんて、分からなくても良いから」
「……ほんとう?」
「うん、本当だよ。だからもう泣くなって。……そもそも、ゴリラなんて思ってたらとっくに別れてるだろ」
「それもそうだね……」
私はクスッと笑ってしまった。なんだかんだ言って、結局私は翔のことが好きな和だろう。ゴリラって言われても好きなものは好きだし、別れたりはしない。
そもそもゴリラは筋骨隆々、バスケの選手としてぴったりな体型ってことを言い表しているかもしれない……となると、私にとっては大の褒め言葉になる、かもしれない。
「……ま、今まで酷い言葉使って悪かったな。俺はあいつらの発言には同調していない。でも確かにお前に失礼なこと話していたな。そこはすまん」
「もうゴリラって言わない?」
「ご……わざとぼかしたのに」
「言わない?」
ちょっと不安そうにしてみる。途端に翔は明らかに慌てた。
「言わない。拓美は、その……可愛いから」
「……そう。じゃ、許す」
翔の言葉で、私は完全に機嫌が良くなった。
やっぱり、翔は可愛いと言ってくれる。その事実だけで十分だ。
それにしても、まさか目薬で釣れるとは。
「……もうお前の前で可愛いって言うのやめておく。恥ずかしいし 」
彼は苦笑いしながらそう呟いた。いや、それは困るかもしれない。だって、私も翔に可愛いって言われるの、結構嬉しくて好きみたいだから。
今度は翔の腕をぎゅっと掴んで、上目遣いで見つめて、先程言ったばかりの言葉をもう一度放った。
「 ひ ど い よ 、 翔 …… 」 澪標さん(東京・11さい)からの相談
とうこう日:2023年7月28日みんなの答え:6件
目薬を溜めた目をぱちぱちさせながら、上目遣いで彼を見つめる。
私は篠田拓美、高校2年生。
一応バスケット部のエースだけれど、背は小さいし、顔も幼いってよく言われる。だけど、だけど…………!
ある日、ふと聞いてしまった。私の彼氏、新谷翔がいつもの奴らと帰宅しているところを。
「お前、拓美と付き合ってんの?え、普通に可愛い?」
「拓美って……あの巨人の先輩らを吹っ飛ばしたっていう噂の?」
私は思わず隠れてしまったけど、話は気になってしょうがなかった。
「俺、あいつと付き合っても無理だなー。だって女らしくないし、胸小さいし。興奮しねー」
「あ、それ分かるわ。なんかガサツっぽいし、顔も幼くて好みじゃない」
「うはは、言えてる!」
その会話を聞いて、私は確信してしまった。ああ、やっぱりそう思われていたんだな、と。
確かに、私がバスケ部に入った理由は身長を伸ばすためだった。中学の頃は男子よりも小さかったから、高校では絶対に伸びてやるって思ってた。だから、先輩に色々言われながらも頑張った。その結果、1年にしてレギュラーになった。
「……いやー、普通。まあ」
「ゴリラじゃん。あれは無理!w」
ゴリラって……いくらなんでもひどくない?女の子に言う言葉じゃない、絶対。
そもそもゴリラって貶されているけれど、意外と社交的で愛嬌で群れのリーダーが決まるし、仲間意識が強い生き物なんだけど!!しかも童顔で可愛いし、結構人気だし、繊細で平和主義な性格の動物だ。
……もしかして、意外と女の子っぽいって言われているのかな!??いやー、照れちゃうな!嬉しいなー!あー!
……正直、結構傷ついてた。今まで気にしていたけれど、いざ面と向かって言われたらショックだった。
もしかしたら、翔も私のことゴリラって思っているかも。そう思ったら怖くなって、彼の顔を見れなかった。
それからは、部活に行くのも憂鬱だった。今まで楽しかったはずなのに、今は辛い。
数日後の帰宅時、偶然翔を校門あたりで見つけたから制服のシャツの真ん中を引っ張って言った。目薬もさして、うるうるさせて、精一杯の可愛さをアピールしながら。
「これでも、私のことゴリラって思うの?」
どれだけ女の子を慰めるのが、フォローするのが上手なのか、お手並み拝見といきましょう。
「ひどいよ。これでも私、女の子なんだよ……?」
涙を目に溜めて、上目遣いで見つめる。どうだ、これで流石に謝るだろう。
ふと顎を掴まれて、くいっと上に向けさせられた。
キス、されるのかなと思って目を瞑った。けれど、唇には感触はなく、代わりに額に柔らかいものが触れた。
髪がちょちょいと指で払われて、後毛を耳にかけられて、最後に目薬をハンカチで拭われた。
「ごめんごめん、泣かないで」
彼は優しく笑って、頭を撫でてきた。
……なにこれ、ずるい。こんなに優しいの、反則だよ……。
「あいつらには拓美の可愛さなんて、分からなくても良いから」
「……ほんとう?」
「うん、本当だよ。だからもう泣くなって。……そもそも、ゴリラなんて思ってたらとっくに別れてるだろ」
「それもそうだね……」
私はクスッと笑ってしまった。なんだかんだ言って、結局私は翔のことが好きな和だろう。ゴリラって言われても好きなものは好きだし、別れたりはしない。
そもそもゴリラは筋骨隆々、バスケの選手としてぴったりな体型ってことを言い表しているかもしれない……となると、私にとっては大の褒め言葉になる、かもしれない。
「……ま、今まで酷い言葉使って悪かったな。俺はあいつらの発言には同調していない。でも確かにお前に失礼なこと話していたな。そこはすまん」
「もうゴリラって言わない?」
「ご……わざとぼかしたのに」
「言わない?」
ちょっと不安そうにしてみる。途端に翔は明らかに慌てた。
「言わない。拓美は、その……可愛いから」
「……そう。じゃ、許す」
翔の言葉で、私は完全に機嫌が良くなった。
やっぱり、翔は可愛いと言ってくれる。その事実だけで十分だ。
それにしても、まさか目薬で釣れるとは。
「……もうお前の前で可愛いって言うのやめておく。恥ずかしいし 」
彼は苦笑いしながらそう呟いた。いや、それは困るかもしれない。だって、私も翔に可愛いって言われるの、結構嬉しくて好きみたいだから。
今度は翔の腕をぎゅっと掴んで、上目遣いで見つめて、先程言ったばかりの言葉をもう一度放った。
「 ひ ど い よ 、 翔 …… 」 澪標さん(東京・11さい)からの相談
とうこう日:2023年7月28日みんなの答え:6件
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いいお話だねぇ. はろぉっ!そぷらでしゅ(#^3^#)
*本題*
いいお話だねぇ.
ばぁぃ(*^^*)ノ *そぷら*さん(福島・9さい)からの答え
とうこう日:2024年2月14日 -
書き方はうまい。 書き方はうまい。これからも成長してほしい。ただ、、、主人公の女の子アピールがすごいな。正直ゴリラとかは思わないけど、多分そのしつこさ?アピール?が嫌いで、「ゴリラ」と言ったんじゃないかな。(男子目線) ヒグマサンさん(北海道・13さい)からの答え
とうこう日:2023年9月7日 -
すごいっ!!天才子供小説家出た!! やっほー♪杏月です(*'▽')
*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
す、すごい、、、、!!!!!!
天才子供小説家だ・・・。(読みにくいw)
今すぐにでも小説家になれそう〜!!ってこと。
そして、天才ってことが言いたいのです、杏月は。
感動しちゃいますね・・・。
ニクネ覚えたいんだけど、、、なんて読むの?
澪標さん!(コピペした。今度読み方教えてね(^^♪)
では〜(@^^)/~~~
心を込めて 杏月(/・ω・)/*・゜゚・*:. 杏月#あづき(/・ω・)/さん(東京・12さい)からの答え
とうこう日:2023年9月7日 -
ええっっっっ!! こんにちは!わわわです。
ちょっと待って、11歳なんですか、驚きなんですが!!!
凄すぎるんだが。
どういうこと!?(驚きが…笑)
凄いですね!!!もう凄すぎて何も言えないです。
また書いてください!! わわわさん(東京・12さい)からの答え
とうこう日:2023年9月6日 -
めっちゃ凄い!! こんちゃっ(^^♪花凜です(#^.^#)
☆*: .。. o本題o .。.:*☆
めっちゃ凄い!!
読んでくれてありがとう(*'ω'*)ばいちゃっ(^^♪ 花凜*かりん*#元舞凜#元々兎乃さん(岐阜・12さい)からの答え
とうこう日:2023年9月6日 -
うま! すごすぎ しばいーーぬだいすきさん(東京・9さい)からの答え
とうこう日:2023年9月6日
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- 【「相談するとき」「相談の答え(回答)を書くとき」のルール】をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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- 「短編小説投稿について」をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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個人 を判断 することが出来ないため、削除依頼 には対応することは出来ません。投稿しても問題ない内容かよく確認してください。
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