大好きだよ
「おはよう、陽菜。」
休日の朝、陽菜に話しかける。
陽菜は、私の家族だ。
「今日、どこにでかける?」
陽菜に優しく話しかける。
「わかった、中央公園ね。じゃあ、準備するから待ってて。」
そう言い残し、私は自室へ戻ろうとする。
しかし、妹の真桜に呼び止められた。
「ねえ、お姉ちゃん。またあれと出かけるの?」
真桜が眉をひそめながら私に話しかける。
「ん?あれって?陽菜のこと?」
「はぁぁぁ、あんまり見られないようにね?」
真桜が、不機嫌そうに、なのに少し心配そうに言った。
「なんで見られないようにするの?」
「もう!なんでもいいからそうして!!」
純粋に気になって質問しただけなのに、真桜の機嫌を損ねてしまった。
「……じゃあ、私図書館行くから。」
真桜はそう言い捨てると、家を出てしまった。玄関のドアが、バンッと大きな音を立てる。
「あ、美桜。真桜はもう出かけたの?」
お母さんが玄関に顔を出して、そう尋ねる。
「うん、今出かけた。図書館行くって。」
「そう……美桜も出かけるの?」
「うん。公園行く。」
「一人で行くの?」
お母さんが心配そうに私のことを見て言う。
私のことをぼっちだと思っているのだろうか。
「ううん、陽菜と行くよ。昨日も言ったじゃん。」
そういうとお母さんは、もっと心配そうな顔をする。
「ええっと、陽菜っていうのは、あのリビングにある、あの子?」
「うん。リビングにいる子。」
なんで二人ともわざわざこんなこと言うんだろう。
陽菜は、家族なのに。少し前からできた家族だから、二人とも気まずいのだろうか。
だったら、申し訳ない。
「じゃあ、着替えてくる。」
「あぁ、うん。」
「いい天気だね、陽菜。」
お昼頃だけあって公園は賑やかだが、その分日差しも心地よくて風も気持ちいい。
しかし、先ほどから小さい子どもがチラチラ見てくるのが気になる。公園に来る中学生はそれほど珍しいのだろうか。
「陽菜、なんでみんなこっち見てくるんだろう?」
子どもだけではなく、その親まで控えめにこちらを見てくる。その親の方を向くと、決まってみんな目を逸らす。
「陽菜、帰る?」
こんなに見られて、陽菜もいい気持ちはしないだろうから、帰った方がいいかもしれない。
「わかった、じゃあ、帰ろうか。」
私が陽菜と手を繋いで帰る時も、たくさんの視線を感じた。
そんなのも無視して帰ろうとした矢先、一人の男の子の叫び声が聞こえた。
「お母さん、あの人、お人形連れてる!!」
男の子は、確かにこちらを指さしていた。
それを、男の子のお母さんらしき人が慌てて止める。
しかし男の子はまた、
「なんであんなお姉さんがお人形連れてるの!?」
と叫ぶ。
すると、共鳴するように女の子が叫んだ。
その刹那、あたりがざわざわし始める。
こちらを指さす小さな子ども。
ひそひそと話す小学生。
それをなだめる大人。
冷たい視線をこちらに向ける大人。
「なんか迷惑かけちゃったみたいだし、帰るか、陽菜。」
そう呟いて公園を出る私たちを、冷たい視線がさしていた。
「陽菜、今日はごめんね。」
帰り道、ぽつりと呟く。
いろんな人に見られて、ひそひそ噂されて、睨まれて。きっとすごく悲しかっただろう。
今度はあまり人がいないところを選ばないとな、と反省していると、一つの声が聞こえた。
「ううん、おでかけ、楽しかったよ。」
「えっ?」
驚いて陽菜の方を見ても、そこにはいつもの陽菜しかいなかった。
「──よかった、楽しんでもらえて。」
嬉しくて、つい笑ってしまう。
「じゃ、帰ろっか。」
陽菜は確かに人形だ。歩けないし、話せない。
だけど、だけど。
真っ赤な夕焼けに染まった人形見ながら、呟く。
「大好きだよ。」 都姫*みやび*さん(神奈川・12さい)からの相談
とうこう日:2023年9月8日みんなの答え:2件
休日の朝、陽菜に話しかける。
陽菜は、私の家族だ。
「今日、どこにでかける?」
陽菜に優しく話しかける。
「わかった、中央公園ね。じゃあ、準備するから待ってて。」
そう言い残し、私は自室へ戻ろうとする。
しかし、妹の真桜に呼び止められた。
「ねえ、お姉ちゃん。またあれと出かけるの?」
真桜が眉をひそめながら私に話しかける。
「ん?あれって?陽菜のこと?」
「はぁぁぁ、あんまり見られないようにね?」
真桜が、不機嫌そうに、なのに少し心配そうに言った。
「なんで見られないようにするの?」
「もう!なんでもいいからそうして!!」
純粋に気になって質問しただけなのに、真桜の機嫌を損ねてしまった。
「……じゃあ、私図書館行くから。」
真桜はそう言い捨てると、家を出てしまった。玄関のドアが、バンッと大きな音を立てる。
「あ、美桜。真桜はもう出かけたの?」
お母さんが玄関に顔を出して、そう尋ねる。
「うん、今出かけた。図書館行くって。」
「そう……美桜も出かけるの?」
「うん。公園行く。」
「一人で行くの?」
お母さんが心配そうに私のことを見て言う。
私のことをぼっちだと思っているのだろうか。
「ううん、陽菜と行くよ。昨日も言ったじゃん。」
そういうとお母さんは、もっと心配そうな顔をする。
「ええっと、陽菜っていうのは、あのリビングにある、あの子?」
「うん。リビングにいる子。」
なんで二人ともわざわざこんなこと言うんだろう。
陽菜は、家族なのに。少し前からできた家族だから、二人とも気まずいのだろうか。
だったら、申し訳ない。
「じゃあ、着替えてくる。」
「あぁ、うん。」
「いい天気だね、陽菜。」
お昼頃だけあって公園は賑やかだが、その分日差しも心地よくて風も気持ちいい。
しかし、先ほどから小さい子どもがチラチラ見てくるのが気になる。公園に来る中学生はそれほど珍しいのだろうか。
「陽菜、なんでみんなこっち見てくるんだろう?」
子どもだけではなく、その親まで控えめにこちらを見てくる。その親の方を向くと、決まってみんな目を逸らす。
「陽菜、帰る?」
こんなに見られて、陽菜もいい気持ちはしないだろうから、帰った方がいいかもしれない。
「わかった、じゃあ、帰ろうか。」
私が陽菜と手を繋いで帰る時も、たくさんの視線を感じた。
そんなのも無視して帰ろうとした矢先、一人の男の子の叫び声が聞こえた。
「お母さん、あの人、お人形連れてる!!」
男の子は、確かにこちらを指さしていた。
それを、男の子のお母さんらしき人が慌てて止める。
しかし男の子はまた、
「なんであんなお姉さんがお人形連れてるの!?」
と叫ぶ。
すると、共鳴するように女の子が叫んだ。
その刹那、あたりがざわざわし始める。
こちらを指さす小さな子ども。
ひそひそと話す小学生。
それをなだめる大人。
冷たい視線をこちらに向ける大人。
「なんか迷惑かけちゃったみたいだし、帰るか、陽菜。」
そう呟いて公園を出る私たちを、冷たい視線がさしていた。
「陽菜、今日はごめんね。」
帰り道、ぽつりと呟く。
いろんな人に見られて、ひそひそ噂されて、睨まれて。きっとすごく悲しかっただろう。
今度はあまり人がいないところを選ばないとな、と反省していると、一つの声が聞こえた。
「ううん、おでかけ、楽しかったよ。」
「えっ?」
驚いて陽菜の方を見ても、そこにはいつもの陽菜しかいなかった。
「──よかった、楽しんでもらえて。」
嬉しくて、つい笑ってしまう。
「じゃ、帰ろっか。」
陽菜は確かに人形だ。歩けないし、話せない。
だけど、だけど。
真っ赤な夕焼けに染まった人形見ながら、呟く。
「大好きだよ。」 都姫*みやび*さん(神奈川・12さい)からの相談
とうこう日:2023年9月8日みんなの答え:2件
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都姫ちゃんだ ~~ !! ぷくぅ(*¨*)/
元彗雫の桃夢だもん.*
もゆて読む ♪
最近て ‐ ふの 陽キャjs6 !
¨.。♪*Δ†*†Δ*♪。.¨
「あの子」って人形のことだったんだね..
冷たい視線を向けられても人形を愛し続ける
主人公に感動 ;;
¨.。♪*☆♯*♯☆*♪。.¨
#都姫ちゃん !! いつもすごい小説ありがとぅ ♪♪
#またキズなんでね ~
ぷしゅ~(^¨^) ♪桃夢♪ @元彗雫 ~ !!さん(東京・12さい)からの答え
とうこう日:2023年10月28日 -
感動!タイトルもいいね♪ 挨拶省略
すごい!最後まで人形だなんて全然気が付かなかった、、、
私にも、「小さい子向けだから」っていう理由だけで、
いつも外に連れて行っていた人形、自然と連れて行かなくなった人形がいたな、って
思い出した。
ありがとう、素敵な小説を書いてくれて。 ε心愛-ここあз#元想来#小6女子さん(選択なし・12さい)からの答え
とうこう日:2023年10月27日
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- 【「相談するとき」「相談の答え(回答)を書くとき」のルール】をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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- 「短編小説投稿について」をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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