彼女にそえる、アイビーの花。
俺=燈台駆
_7月4日。
俺はスーツ姿のまま、ひとつのこじんまりとしたお墓の前でとまった。手に持っていたピンク色の花束をそっと供える。ひんやりとした墓石に触れた。
「…"死んでも離れない"。知ってるか? アイビーの花言葉だ、梨沙」
_今から7年前
「おいかけるぅ!腹減ったぞ!!どうしたらいいと思う?え?」
「奇遇だな!俺もだ! なぁ、なんかくれるんだろ? 腹減って死にそーなんだよこっち」
…今日は昼飯抜き、か。
「こ、これ、どうぞ…。俺のですけど、よかったら…」
「あ"ぁん? お前のだと? 俺たちのために作ってきてくれてるんだよなぁ?あ"? いつもわりーなwまた放課後な遊ぼーな!w」
昼飯抜きはいつものこと。だけど、こんなのまだ可愛い。1番恐ろしいのは放課後。大人数に殴られ蹴られ、サンドバッグにされる。
どんなに辛くても、明日はくる。
そう思っていた。
だけど、いじめは日に日にエスカレートしていった。
「なにやってるの!!!きゃー!!!!!」
「ここ…は…」
俺は気がつくと、病院のベットの上だった。
「そう…だ…俺…鉄パイプで…殴られて…」
体を起こそうとすると、ズキっと頭が痛む。
俺は頭を抑えた。いつもの感触じゃない。俺は包帯でぐるぐる巻きにされていた。ぼんやりと、窓の外を眺める。桜が咲いていた。
春だった。
いつのまに、春になったんだろう。毎日暴力に怯え、いつしか季節の移り変わりさえも忘れてしまっていた。
「あっ、目が覚めた? 大丈夫?」
俺は声のした方を向いた。ポニーテールの、小柄な女の子がじっと見つめてきていた。
「あ、あぁ」
誰だろう。覚えてない。そもそも、女の子と関わりがあっただろうか?
「あっ、私のこと、分からないよね。ごめん。私は大倉梨沙!こんにちは!」
これが、梨沙との出会いだった。
話を聞くと、俺が鉄パイプで殴られた場面に遭遇したという。大声で悲鳴をあげると、やつらは逃げていったらしい。そのあと、救急車も呼んでくれた。
「私ね、1年4組! あなた、1年1組でしょ。見たことあるもん。いつも、あいつらにいじめられてるの?」
「あぁ…。俺、うまれつき体が弱くて…逆らえないんだ。力じゃかなわないから」
「私も。実は…いじめられてたの、昔」
梨沙は、自分の過去を話してくれた。小柄で力も弱かった梨沙は、よくいじめの標的にされていたそうだ。
「自分でも変わらなくちゃって、思ってたんだけどね、無理だった」
そう言って、えへへ、と笑う。どうして笑えるんだろう。辛いはずなのに。
俺はいつしか、梨沙にだけ心を開くようになっていった。似たもの同士だった。
だけど…、梨沙と俺は、違う。
梨沙は強い心を持っていた。自分を持っていた。それに比べて俺は…何も出来なかった。
鉄パイプで殴られて多量の出血をした俺は、傷口から感染症にかかり、体が弱かったこともあって退院できずにいた。日に日に弱っていく俺をみても、梨沙は逃げなかった。
毎日話に来てくれた。いつしか、俺は梨沙が来るのを待つようになった。
1度だけ、あいつらが病室にきたことがあった。謝罪もなし。ただ冷やかしにきただけ。俺がうつむいていると、梨沙が立ち上がってどなった。
「ふざけないで! こんなことになったのは、あんたたちのせいでしょ!! 駆は、あんたたちのせいで日常を奪われたのよ!!」
初めて、彼女が怒っているところを見た。めずらしく、やつらは逃げていった。
「うるさかったかな。ごめんね」
この時も、彼女はえへへ、と笑ってみせた。
_7月3日。
俺は手術をすることになった。手術の前日、いつも通り病室に来てくれた梨沙の手には、ピンク色の花束がかかえられていた。
「これ!駆にあげる!アセビって花なんだ。アセビの花言葉は、2人で旅をしよう。元気になったら、私と遊ぼうね!」
純粋に嬉しかった。初めて自分を慕ってくれる友達ができた。だけど、これが彼女との最後の会話だった。
『速報です。今日未明、大倉梨沙さん(13)の死亡が確認されました。死因は出血多量で、男子中学生(15)4人が殺人の容疑で逮捕されました』
後から話をきくと、梨沙は俺をいじめていた奴らのところまで行ったらしい。それで、返り討ちにあった…。手術を終えた俺は途方に暮れた。
彼女がくれた、病室に飾っているアセビの花言葉。それは"2人で旅をしよう"の他にもうひとつ。
"犠牲"
彼女の優しい笑顔が浮かんできて、いじめられても泣かなかった俺は、初めて病室で泣きじゃくった。 あいりさん(選択なし・13さい)からの相談
とうこう日:2023年10月6日みんなの答え:1件
_7月4日。
俺はスーツ姿のまま、ひとつのこじんまりとしたお墓の前でとまった。手に持っていたピンク色の花束をそっと供える。ひんやりとした墓石に触れた。
「…"死んでも離れない"。知ってるか? アイビーの花言葉だ、梨沙」
_今から7年前
「おいかけるぅ!腹減ったぞ!!どうしたらいいと思う?え?」
「奇遇だな!俺もだ! なぁ、なんかくれるんだろ? 腹減って死にそーなんだよこっち」
…今日は昼飯抜き、か。
「こ、これ、どうぞ…。俺のですけど、よかったら…」
「あ"ぁん? お前のだと? 俺たちのために作ってきてくれてるんだよなぁ?あ"? いつもわりーなwまた放課後な遊ぼーな!w」
昼飯抜きはいつものこと。だけど、こんなのまだ可愛い。1番恐ろしいのは放課後。大人数に殴られ蹴られ、サンドバッグにされる。
どんなに辛くても、明日はくる。
そう思っていた。
だけど、いじめは日に日にエスカレートしていった。
「なにやってるの!!!きゃー!!!!!」
「ここ…は…」
俺は気がつくと、病院のベットの上だった。
「そう…だ…俺…鉄パイプで…殴られて…」
体を起こそうとすると、ズキっと頭が痛む。
俺は頭を抑えた。いつもの感触じゃない。俺は包帯でぐるぐる巻きにされていた。ぼんやりと、窓の外を眺める。桜が咲いていた。
春だった。
いつのまに、春になったんだろう。毎日暴力に怯え、いつしか季節の移り変わりさえも忘れてしまっていた。
「あっ、目が覚めた? 大丈夫?」
俺は声のした方を向いた。ポニーテールの、小柄な女の子がじっと見つめてきていた。
「あ、あぁ」
誰だろう。覚えてない。そもそも、女の子と関わりがあっただろうか?
「あっ、私のこと、分からないよね。ごめん。私は大倉梨沙!こんにちは!」
これが、梨沙との出会いだった。
話を聞くと、俺が鉄パイプで殴られた場面に遭遇したという。大声で悲鳴をあげると、やつらは逃げていったらしい。そのあと、救急車も呼んでくれた。
「私ね、1年4組! あなた、1年1組でしょ。見たことあるもん。いつも、あいつらにいじめられてるの?」
「あぁ…。俺、うまれつき体が弱くて…逆らえないんだ。力じゃかなわないから」
「私も。実は…いじめられてたの、昔」
梨沙は、自分の過去を話してくれた。小柄で力も弱かった梨沙は、よくいじめの標的にされていたそうだ。
「自分でも変わらなくちゃって、思ってたんだけどね、無理だった」
そう言って、えへへ、と笑う。どうして笑えるんだろう。辛いはずなのに。
俺はいつしか、梨沙にだけ心を開くようになっていった。似たもの同士だった。
だけど…、梨沙と俺は、違う。
梨沙は強い心を持っていた。自分を持っていた。それに比べて俺は…何も出来なかった。
鉄パイプで殴られて多量の出血をした俺は、傷口から感染症にかかり、体が弱かったこともあって退院できずにいた。日に日に弱っていく俺をみても、梨沙は逃げなかった。
毎日話に来てくれた。いつしか、俺は梨沙が来るのを待つようになった。
1度だけ、あいつらが病室にきたことがあった。謝罪もなし。ただ冷やかしにきただけ。俺がうつむいていると、梨沙が立ち上がってどなった。
「ふざけないで! こんなことになったのは、あんたたちのせいでしょ!! 駆は、あんたたちのせいで日常を奪われたのよ!!」
初めて、彼女が怒っているところを見た。めずらしく、やつらは逃げていった。
「うるさかったかな。ごめんね」
この時も、彼女はえへへ、と笑ってみせた。
_7月3日。
俺は手術をすることになった。手術の前日、いつも通り病室に来てくれた梨沙の手には、ピンク色の花束がかかえられていた。
「これ!駆にあげる!アセビって花なんだ。アセビの花言葉は、2人で旅をしよう。元気になったら、私と遊ぼうね!」
純粋に嬉しかった。初めて自分を慕ってくれる友達ができた。だけど、これが彼女との最後の会話だった。
『速報です。今日未明、大倉梨沙さん(13)の死亡が確認されました。死因は出血多量で、男子中学生(15)4人が殺人の容疑で逮捕されました』
後から話をきくと、梨沙は俺をいじめていた奴らのところまで行ったらしい。それで、返り討ちにあった…。手術を終えた俺は途方に暮れた。
彼女がくれた、病室に飾っているアセビの花言葉。それは"2人で旅をしよう"の他にもうひとつ。
"犠牲"
彼女の優しい笑顔が浮かんできて、いじめられても泣かなかった俺は、初めて病室で泣きじゃくった。 あいりさん(選択なし・13さい)からの相談
とうこう日:2023年10月6日みんなの答え:1件
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悲しいお話ですね。 悲しいお話ですね。
でも、いじめがなかったら、犠牲も何も、なかったかもしれない。
運命は、怖いですね。
元らみ さっくんさん(岐阜・10さい)からの答え
とうこう日:2023年12月3日
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