カウントダウンと猫捜し【ミステリー】
「今日な、変な夢見てん。」
俺がそう言うと、
“お前”は読んでいる本を置いて、
俺に
「どんな夢?」
と聞いた。俺は、
揺れる木々達の中に囲まれる
お前を見て、独り言のように呟いた。
「…お前が死ぬ夢。」
俺がそう言うと、
俺の意識は吸い込まれる
ように遠ざかっていった。
目が覚めると、白い天井が見えた。
見渡す限り、ここは病院らしい。
だけど病室には人の気配が全くなくて、
朝なのに不気味な雰囲気だった。
「ここは、どこや…?」
俺はどこも怪我をしていないし、
おかしなところもないようなので、
森の中の病院を出て、
果てしなく続く山道を探索した。
すると、一匹の黒猫が
こちらを向いていることに気づいた。
首輪をしているのを
見て、俺はこの猫には
飼い主がいるんだと思った。
その猫を必死に追いかけているうちに
俺はその猫を見失い、
森の中で彷徨っていた。
どこにでもある森。そのはずなのに、
揺れる木々達には
どこか懐かしみがあった。
「そうや、ここ、今日夢で見た森や。」
夢で見たこの森には、
“あいつ”がいたはずだった。
だけど今、あいつはいない。
夢だから当然のこと。
だけど俺には、
何かが引っかかった。
「あいつって、誰や…?」
俺は必死に自分の
記憶を探ったが、
“あいつ”だと思える
やつは一人もいない。
とてつもない浮遊感と
不気味な気持ち悪さで、
俺はその場から
動くことができず、立ち尽くしていた。
目ぇ覚せ
目ぇ覚せ
そんな声と、
頬を伝う水滴で
俺は目を覚ました。
そこはいつもの病室だった。
カーテンを揺らす雨風が
窓を通して病室を濡らしている。
俺は昨日、何をしていたんだろうか。
それとも、夢だったんだろうか。
そんなことを考えたが、
俺は動かずにはいられなくなり
雨が降る病院を出て森へ向かった。
森の中には霧がかかっていて、
昨日の猫は
見つけられないと思っていた、
その時。
霧の中に光る、金色の目を見た。
ギロリとこちらを見つめる瞳孔で、
何かを思い出せそうな気がしたまま、
俺は気を失っていた。
近くにおるからな。
絶対忘れへんからな。
気を失った俺の真っ暗な世界からは、
そんな声が響いていた。
目が覚めると、俺は今日も
猫を捜しに森へ向かった。
今日は霧がかかっていないが
空気が湿っていて、
葉にはまだ水滴が残っている。
木の影からこちらを見つめる
黒猫の瞳に、
俺は全てを悟っていた。
「お前、竜斗(りゅうと)やろ。」
「…おかえり、輝(あきら)。」
黒猫は、目を細めてそう言った。
目を覚ますと、
頬には伝う生暖かい
ものがあった。
病室には竜斗がいて、
かけられたカレンダーは、
最後に見た日付から3ヶ月はたっていた。
最後に見た夢で、気がついていた。
俺はあの山で、竜斗と遭難して、
倒れてくる木から竜人を
庇って気を失っていたんだ。
「お前もう絶対、一人にすんな…」
竜斗が俺の手を強く握りしめて、
涙を溢しながらうつむく。
「俺を一人にしたんは、お前の方や。
でもお前、寝てる俺に
ずっと話しかけてたやろ?
そのおかげで俺は目ぇ覚ますことができた。
ありがとうな、竜斗。」
__あとがき__
結局、輝が見た夢がなんだったのか、
全ては確かではありません。
夢とは不思議なものですよね。
この先のお話、輝の夢の正体。
ご自由にご想像ください。
じゃ。
珊瑚礁がらすさん(選択なし・12さい)からの相談
とうこう日:2023年10月8日みんなの答え:0件
俺がそう言うと、
“お前”は読んでいる本を置いて、
俺に
「どんな夢?」
と聞いた。俺は、
揺れる木々達の中に囲まれる
お前を見て、独り言のように呟いた。
「…お前が死ぬ夢。」
俺がそう言うと、
俺の意識は吸い込まれる
ように遠ざかっていった。
目が覚めると、白い天井が見えた。
見渡す限り、ここは病院らしい。
だけど病室には人の気配が全くなくて、
朝なのに不気味な雰囲気だった。
「ここは、どこや…?」
俺はどこも怪我をしていないし、
おかしなところもないようなので、
森の中の病院を出て、
果てしなく続く山道を探索した。
すると、一匹の黒猫が
こちらを向いていることに気づいた。
首輪をしているのを
見て、俺はこの猫には
飼い主がいるんだと思った。
その猫を必死に追いかけているうちに
俺はその猫を見失い、
森の中で彷徨っていた。
どこにでもある森。そのはずなのに、
揺れる木々達には
どこか懐かしみがあった。
「そうや、ここ、今日夢で見た森や。」
夢で見たこの森には、
“あいつ”がいたはずだった。
だけど今、あいつはいない。
夢だから当然のこと。
だけど俺には、
何かが引っかかった。
「あいつって、誰や…?」
俺は必死に自分の
記憶を探ったが、
“あいつ”だと思える
やつは一人もいない。
とてつもない浮遊感と
不気味な気持ち悪さで、
俺はその場から
動くことができず、立ち尽くしていた。
目ぇ覚せ
目ぇ覚せ
そんな声と、
頬を伝う水滴で
俺は目を覚ました。
そこはいつもの病室だった。
カーテンを揺らす雨風が
窓を通して病室を濡らしている。
俺は昨日、何をしていたんだろうか。
それとも、夢だったんだろうか。
そんなことを考えたが、
俺は動かずにはいられなくなり
雨が降る病院を出て森へ向かった。
森の中には霧がかかっていて、
昨日の猫は
見つけられないと思っていた、
その時。
霧の中に光る、金色の目を見た。
ギロリとこちらを見つめる瞳孔で、
何かを思い出せそうな気がしたまま、
俺は気を失っていた。
近くにおるからな。
絶対忘れへんからな。
気を失った俺の真っ暗な世界からは、
そんな声が響いていた。
目が覚めると、俺は今日も
猫を捜しに森へ向かった。
今日は霧がかかっていないが
空気が湿っていて、
葉にはまだ水滴が残っている。
木の影からこちらを見つめる
黒猫の瞳に、
俺は全てを悟っていた。
「お前、竜斗(りゅうと)やろ。」
「…おかえり、輝(あきら)。」
黒猫は、目を細めてそう言った。
目を覚ますと、
頬には伝う生暖かい
ものがあった。
病室には竜斗がいて、
かけられたカレンダーは、
最後に見た日付から3ヶ月はたっていた。
最後に見た夢で、気がついていた。
俺はあの山で、竜斗と遭難して、
倒れてくる木から竜人を
庇って気を失っていたんだ。
「お前もう絶対、一人にすんな…」
竜斗が俺の手を強く握りしめて、
涙を溢しながらうつむく。
「俺を一人にしたんは、お前の方や。
でもお前、寝てる俺に
ずっと話しかけてたやろ?
そのおかげで俺は目ぇ覚ますことができた。
ありがとうな、竜斗。」
__あとがき__
結局、輝が見た夢がなんだったのか、
全ては確かではありません。
夢とは不思議なものですよね。
この先のお話、輝の夢の正体。
ご自由にご想像ください。
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珊瑚礁がらすさん(選択なし・12さい)からの相談
とうこう日:2023年10月8日みんなの答え:0件
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