猫それぞれ。
俺は近藤直人。一人暮らしの、至って普通の公務員。そんな俺には、家族が一人いる。
いや、1匹っていったほうがいいのかな。
「クロー! 腹減ったか?」
俺の視線の先にいる黒猫は、1度青い瞳で俺をちらっとみると、棚に登ってそのままどこかへ行ってしまった。
いつもこんな感じ。クロがうちに来てから2年がたつが、いっこうに懐いてくれない。黒猫って懐きにくいのかな。偏見だけど。
だが、餌の時間になったら黙ってこっちにくるし、別に俺が近くにいても逃げはしない。ただ、絶対に触らせなてはくれなかった。
基本的に、うちは放し飼い方式だ。
俺がいない昼間は寂しいだろうと思い、自由に家に出入りできるようにしている。
俺はクロに嫌われてるのか…?
「ねぇ、クロちゃん見にいってもいい?」
ある日、職場の同僚にそう言われた。
「いい…けど。別に可愛くないよ。2年たつけどぜんっぜん懐かないし」
「えー。まぁいいじゃん」
その子は笑ってそう言ってくれた。
翌日、その同僚が我が家に遊びに来た。
クロが出ていっては困るので、朝から窓はすべて締め切っている。
まぁ、出られないと気がついたクロは俺をずっと睨みつけてたけど…。
同僚は家にあがるなり、クロのところへ一直線。もちろん、クロは距離をおき、毛を逆立ててフーっ!と威嚇した。
まぁ、すぐにさめちまうだろうな。
だけど、同僚はしばらくクロを観察したのち1歩後ずさってクロに微笑みかけた。
「このくらいなら、みててもいい?」
クロは、しばらくするとぷいとそっぽをむいて毛繕いを始めた。
もう、興味はなくなったみたいだ。
その後、同僚はしばらくニコニコとクロを眺めていた。
帰り際、同僚が笑顔で言った。
「今日はありがとう! クロちゃん、すっごく可愛かった! また機会があったらみせて!」
「いいけど…。可愛くないやつだと思わなかった? 愛想悪いだろ?」
俺がつい聞くと、同僚は首を傾げた。
「そうかな。私は可愛いと思ったけど。猫それぞれ、だよ」
じゃあね、と手を振って帰っていく。
「猫それぞれ、か。クロ、お前は俺の事嫌いなわけじゃないのか?」
俺がクロに手をのばすと…
「ふしゃぁぁぁぁぁぁ!!」
「いってぇぇ!!やっぱ嫌いなのかよ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
その夜、クロは血を吐いた。
俺は焦ってすぐ病院に駆け込んだけど
…遅かった。
クロは、最後まで触らせてはくれなかった。
末期の癌だったのだ。
だけど、クロはいままで1度も俺に辛そうなそぶりをみせなかった。
もしかしたら、外でも、吐いていたのかもしれない…。
俺は泣いた。
仕事もやめた。
クロが死んでから、世界が変わった。
ご飯を食べない日もあった。
やっぱり俺にとっては唯一の家族だった。
こうして、数年後、俺もあっけなく死んだ。
「ここ…は?」
目が覚めると、まぶしい場所にいた。
自分をみると、クロが生きていた頃の姿になっている。
髭はきちんとそられ、髪もセットされ、きちんとした服を着ていた。
「そうか…俺、死んだのか」
つい、目でクロを探す。だけど、いるわけがないことくらい、最初からわかっていた。
「しょうもない人生にしちまったな。クロは楽しく暮らしてるといいけど」
そうして、俺は歩き出した。どこへ向かうでもなく。
突然、まぶしい光につつまれた。
目の前に現れたのは、大きな扉。
いつのまにか、お爺さんが俺の隣にいた。
「お疲れ様でした。この扉の奥に、天国に続く階段がありますよ」
「…遠慮しておきます。俺はこんなしょうもない人生を歩んでしまった。クロに合わせる顔がない」
すると、おじいさんが微笑んだ。
「そんなことを言わず。いったん開いてみなさいな」
俺は言われるがまま、扉に手をおく。扉はギィィ、と音を立てて開いた。
俺は目を見開いた。階段の前に、まぶしく輝く黒猫が1匹。
黒猫は俺に気づくとしずかに立ち上がった。
「遅かったじゃん」
「ク…ロ?」
俺はクロに駆け寄った。気がつくと、扉をくぐって駆け出していた。クロは、初めて俺に触らせてくれた。
「クロ!クロぉ…!待っててくれたのか?」
「あたりまえじゃん。遅かったな。でも…早すぎだよ。なんで死んじまうんだよ。俺、ぜんぶ見てたよ」
クロは、クロなりに俺のことを愛してくれていたんだ。
猫それぞれ。
その言葉が、頭に浮かんだ。 あいりさん(選択なし・13さい)からの相談
とうこう日:2023年10月9日みんなの答え:1件
いや、1匹っていったほうがいいのかな。
「クロー! 腹減ったか?」
俺の視線の先にいる黒猫は、1度青い瞳で俺をちらっとみると、棚に登ってそのままどこかへ行ってしまった。
いつもこんな感じ。クロがうちに来てから2年がたつが、いっこうに懐いてくれない。黒猫って懐きにくいのかな。偏見だけど。
だが、餌の時間になったら黙ってこっちにくるし、別に俺が近くにいても逃げはしない。ただ、絶対に触らせなてはくれなかった。
基本的に、うちは放し飼い方式だ。
俺がいない昼間は寂しいだろうと思い、自由に家に出入りできるようにしている。
俺はクロに嫌われてるのか…?
「ねぇ、クロちゃん見にいってもいい?」
ある日、職場の同僚にそう言われた。
「いい…けど。別に可愛くないよ。2年たつけどぜんっぜん懐かないし」
「えー。まぁいいじゃん」
その子は笑ってそう言ってくれた。
翌日、その同僚が我が家に遊びに来た。
クロが出ていっては困るので、朝から窓はすべて締め切っている。
まぁ、出られないと気がついたクロは俺をずっと睨みつけてたけど…。
同僚は家にあがるなり、クロのところへ一直線。もちろん、クロは距離をおき、毛を逆立ててフーっ!と威嚇した。
まぁ、すぐにさめちまうだろうな。
だけど、同僚はしばらくクロを観察したのち1歩後ずさってクロに微笑みかけた。
「このくらいなら、みててもいい?」
クロは、しばらくするとぷいとそっぽをむいて毛繕いを始めた。
もう、興味はなくなったみたいだ。
その後、同僚はしばらくニコニコとクロを眺めていた。
帰り際、同僚が笑顔で言った。
「今日はありがとう! クロちゃん、すっごく可愛かった! また機会があったらみせて!」
「いいけど…。可愛くないやつだと思わなかった? 愛想悪いだろ?」
俺がつい聞くと、同僚は首を傾げた。
「そうかな。私は可愛いと思ったけど。猫それぞれ、だよ」
じゃあね、と手を振って帰っていく。
「猫それぞれ、か。クロ、お前は俺の事嫌いなわけじゃないのか?」
俺がクロに手をのばすと…
「ふしゃぁぁぁぁぁぁ!!」
「いってぇぇ!!やっぱ嫌いなのかよ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
その夜、クロは血を吐いた。
俺は焦ってすぐ病院に駆け込んだけど
…遅かった。
クロは、最後まで触らせてはくれなかった。
末期の癌だったのだ。
だけど、クロはいままで1度も俺に辛そうなそぶりをみせなかった。
もしかしたら、外でも、吐いていたのかもしれない…。
俺は泣いた。
仕事もやめた。
クロが死んでから、世界が変わった。
ご飯を食べない日もあった。
やっぱり俺にとっては唯一の家族だった。
こうして、数年後、俺もあっけなく死んだ。
「ここ…は?」
目が覚めると、まぶしい場所にいた。
自分をみると、クロが生きていた頃の姿になっている。
髭はきちんとそられ、髪もセットされ、きちんとした服を着ていた。
「そうか…俺、死んだのか」
つい、目でクロを探す。だけど、いるわけがないことくらい、最初からわかっていた。
「しょうもない人生にしちまったな。クロは楽しく暮らしてるといいけど」
そうして、俺は歩き出した。どこへ向かうでもなく。
突然、まぶしい光につつまれた。
目の前に現れたのは、大きな扉。
いつのまにか、お爺さんが俺の隣にいた。
「お疲れ様でした。この扉の奥に、天国に続く階段がありますよ」
「…遠慮しておきます。俺はこんなしょうもない人生を歩んでしまった。クロに合わせる顔がない」
すると、おじいさんが微笑んだ。
「そんなことを言わず。いったん開いてみなさいな」
俺は言われるがまま、扉に手をおく。扉はギィィ、と音を立てて開いた。
俺は目を見開いた。階段の前に、まぶしく輝く黒猫が1匹。
黒猫は俺に気づくとしずかに立ち上がった。
「遅かったじゃん」
「ク…ロ?」
俺はクロに駆け寄った。気がつくと、扉をくぐって駆け出していた。クロは、初めて俺に触らせてくれた。
「クロ!クロぉ…!待っててくれたのか?」
「あたりまえじゃん。遅かったな。でも…早すぎだよ。なんで死んじまうんだよ。俺、ぜんぶ見てたよ」
クロは、クロなりに俺のことを愛してくれていたんだ。
猫それぞれ。
その言葉が、頭に浮かんだ。 あいりさん(選択なし・13さい)からの相談
とうこう日:2023年10月9日みんなの答え:1件
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感…動…。・゜・(ノД`)・゜・。 こんにちにゃ!キズなんハマってる猫好きちゃんです!
【本題】(これ本題とかある?)
か、感動…
気づいたら泣きかけていた…
あいりさんは小説のセンスがあるから,ぜひ他にも書いてみて欲しい!!
短文でごめんねm(_ _)mばいにゃーん! 猫好きちゃん/#猫様神さん(選択なし・9さい)からの答え
とうこう日:2023年12月9日
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