君の1番になりたくて
私は写真を撮ることが好きだ。
私は誰もいない世界が、一番綺麗だと思っているから写真を撮る。だから、誰も写したくもない。だから、人を撮ったことなんてなかった。あの日が来るまで。
チャイムが鳴った。竹を割ったような時は終わり、教室はガヤガヤしている。桜が満開で、今が春だと気づく。空はいつになく綺麗だった。こういう、風景を見つけた時、カメラをかまえる。この空に飲み込まれてしまいたい。
ドンッ
「怪我してませんか?」天使の輪を持ったような髪、優しく見つめる眼差し、そしてほんのり石けんの匂いがする。同じクラスの春野ひなだ。
「大丈夫です。」幸い怪我はしておらず、カメラも大丈夫だった。同じクラスでも、未だ敬語は抜けておらず、気まずかった。「良かった…。」しばらく間があいて、「それじゃ」と言い残して去ろうとした。「ちょっと待って!」彼女が急に大きな声を出すから、驚いてしまった。彼女は私にこう言い放った。「写真好きなの?」と。「うん。好きだけど。」彼女は大きな瞳に、星が降ったかのような目で私を見つめた。「私も好きなの。これから、一緒に撮りたいな…なんて。だめかな。」と不安そうに尋ねる彼女に「うん。いいよ。」と返した。誰かと写真を撮りたかった私にとってこの上ない幸せだった。
そんなカメラから始まった私たちの繋がり。
これ以降、放課後に集まって写真を撮ったりしてた。他愛のない会話をして、写真を撮って、褒め合って家に帰る。そんな毎日。はたからみるとつまらなさそうに見えるかもしれないが、私達は幸せだった。
ある日、彼女が言った。「人は撮らないの?」と。なんて返そうか迷い、そのせいで間が生まれた。でも、彼女になら、話してもいいと思えた。「撮りたい人がいない。ただそれだけ。綺麗な景色で私のカメラのフレームがいっぱいになる事が幸せなの。」「そうなんだね。」呆れられたかな。という思いにかられた。「じゃあさ、私の事撮ってよ。ことはの写真好きなの。だから、撮ってほしい。私ならいいんじゃない?これでもモテてたんだからね!」「嘘でしょー?」「嘘じゃないもん!」誰かの写真を撮った事すらない私に、そんな大役務まるのだろうか。急にひなの面持ちが変わり「一番最初に撮ってもらった人になりたい。」と真剣な目で見てきた。この時、私は春野ひなをこのカメラに収めたいと強く思った。こんな思いは初めてで少し怖い。でも、撮りたい。七五三の時の写真より、入学式の写真より、卒業アルバムの写真より、これからの彼女が写る写真、すべてに負けないものを撮れるように願った。この子は、私の世界に必要な存在だと私は感じた。風でなびく髪の毛も。どこか遠くを見つめる大きな瞳も。クルンと上がったまつ毛も。鮮やかな表情も。すべてが綺麗だった。彼女はとても喜び、家に帰って行った。
次の日、彼女は休んだ。そして、次も。その次も…。
学校終わり、先生に聞くと、なんだか複雑な顔をしていた。空気を読めない私でも分かった。何かあったんだ。病院にいると聞き、スクバを持って駆けた。どんどん上がる体温に、呼吸のスピード。そして、病院に着いた。病室を聞くと、案内してもらえた。案内された病室は静まりかえっていて、落ち着かなかった。そして、案内されたのにも関わらず、誰もいない。その人は言った。「数日前、春野ひなさんは亡くなりました。」私は初めての親友を失った。人は死んだら、戻ってこない。そんな事は分かってるのに泣いた。いつぶりだろうか。こんなに泣いたのは。気持ちが落ち着いた頃には、外が暗くなっていた。ずっとそばに居て、背中をさすってもらったこの人には感謝しかなかった。「ありがとうございます。もう大丈夫です。」「なら良かったわ。高峰さん。」「え?なんで」私はこの人に名前を教えた覚えがなかった。「あぁひなちゃんから沢山お話聞いてたから。あの子の写真撮ってくれたんでしょ?」「え…。はい。」「彼女、喜んでいたわ。綺麗に撮ってもらえたって。彼女は遺影にするためにあなたに撮ってもらったの。あの子も写真が好きでねぇ。亡くなったら、一番可愛い写真をおいて貰うのが夢だったの。」頭が混乱して、話に追いつけない。「黙って撮ってもらった事、彼女反省してた。隠してでも高峰さんに撮って貰いたかったのね。」また涙がぼろぼろと溢れてくる。止まらない。「最後に、あの子が言っていたわ。『ことはは、人を撮った事ないのに自分の事をを今までで一番綺麗に撮ってくれた恩人。もう少し、ことはの隣で、写真を撮りたかったな。遺影にするためって言ったら、怖ばって雰囲気が変わっちゃうと思う。だから、最後まで言わなかったの。将来ことはがカメラマンになったらいいのに』って」
10年後、私はカメラマンになった。
春の風が吹いて桜は舞う。私はあの時と同じ空にカメラを向けた。 1さん(東京・15さい)からの相談
とうこう日:2023年10月11日みんなの答え:2件
私は誰もいない世界が、一番綺麗だと思っているから写真を撮る。だから、誰も写したくもない。だから、人を撮ったことなんてなかった。あの日が来るまで。
チャイムが鳴った。竹を割ったような時は終わり、教室はガヤガヤしている。桜が満開で、今が春だと気づく。空はいつになく綺麗だった。こういう、風景を見つけた時、カメラをかまえる。この空に飲み込まれてしまいたい。
ドンッ
「怪我してませんか?」天使の輪を持ったような髪、優しく見つめる眼差し、そしてほんのり石けんの匂いがする。同じクラスの春野ひなだ。
「大丈夫です。」幸い怪我はしておらず、カメラも大丈夫だった。同じクラスでも、未だ敬語は抜けておらず、気まずかった。「良かった…。」しばらく間があいて、「それじゃ」と言い残して去ろうとした。「ちょっと待って!」彼女が急に大きな声を出すから、驚いてしまった。彼女は私にこう言い放った。「写真好きなの?」と。「うん。好きだけど。」彼女は大きな瞳に、星が降ったかのような目で私を見つめた。「私も好きなの。これから、一緒に撮りたいな…なんて。だめかな。」と不安そうに尋ねる彼女に「うん。いいよ。」と返した。誰かと写真を撮りたかった私にとってこの上ない幸せだった。
そんなカメラから始まった私たちの繋がり。
これ以降、放課後に集まって写真を撮ったりしてた。他愛のない会話をして、写真を撮って、褒め合って家に帰る。そんな毎日。はたからみるとつまらなさそうに見えるかもしれないが、私達は幸せだった。
ある日、彼女が言った。「人は撮らないの?」と。なんて返そうか迷い、そのせいで間が生まれた。でも、彼女になら、話してもいいと思えた。「撮りたい人がいない。ただそれだけ。綺麗な景色で私のカメラのフレームがいっぱいになる事が幸せなの。」「そうなんだね。」呆れられたかな。という思いにかられた。「じゃあさ、私の事撮ってよ。ことはの写真好きなの。だから、撮ってほしい。私ならいいんじゃない?これでもモテてたんだからね!」「嘘でしょー?」「嘘じゃないもん!」誰かの写真を撮った事すらない私に、そんな大役務まるのだろうか。急にひなの面持ちが変わり「一番最初に撮ってもらった人になりたい。」と真剣な目で見てきた。この時、私は春野ひなをこのカメラに収めたいと強く思った。こんな思いは初めてで少し怖い。でも、撮りたい。七五三の時の写真より、入学式の写真より、卒業アルバムの写真より、これからの彼女が写る写真、すべてに負けないものを撮れるように願った。この子は、私の世界に必要な存在だと私は感じた。風でなびく髪の毛も。どこか遠くを見つめる大きな瞳も。クルンと上がったまつ毛も。鮮やかな表情も。すべてが綺麗だった。彼女はとても喜び、家に帰って行った。
次の日、彼女は休んだ。そして、次も。その次も…。
学校終わり、先生に聞くと、なんだか複雑な顔をしていた。空気を読めない私でも分かった。何かあったんだ。病院にいると聞き、スクバを持って駆けた。どんどん上がる体温に、呼吸のスピード。そして、病院に着いた。病室を聞くと、案内してもらえた。案内された病室は静まりかえっていて、落ち着かなかった。そして、案内されたのにも関わらず、誰もいない。その人は言った。「数日前、春野ひなさんは亡くなりました。」私は初めての親友を失った。人は死んだら、戻ってこない。そんな事は分かってるのに泣いた。いつぶりだろうか。こんなに泣いたのは。気持ちが落ち着いた頃には、外が暗くなっていた。ずっとそばに居て、背中をさすってもらったこの人には感謝しかなかった。「ありがとうございます。もう大丈夫です。」「なら良かったわ。高峰さん。」「え?なんで」私はこの人に名前を教えた覚えがなかった。「あぁひなちゃんから沢山お話聞いてたから。あの子の写真撮ってくれたんでしょ?」「え…。はい。」「彼女、喜んでいたわ。綺麗に撮ってもらえたって。彼女は遺影にするためにあなたに撮ってもらったの。あの子も写真が好きでねぇ。亡くなったら、一番可愛い写真をおいて貰うのが夢だったの。」頭が混乱して、話に追いつけない。「黙って撮ってもらった事、彼女反省してた。隠してでも高峰さんに撮って貰いたかったのね。」また涙がぼろぼろと溢れてくる。止まらない。「最後に、あの子が言っていたわ。『ことはは、人を撮った事ないのに自分の事をを今までで一番綺麗に撮ってくれた恩人。もう少し、ことはの隣で、写真を撮りたかったな。遺影にするためって言ったら、怖ばって雰囲気が変わっちゃうと思う。だから、最後まで言わなかったの。将来ことはがカメラマンになったらいいのに』って」
10年後、私はカメラマンになった。
春の風が吹いて桜は舞う。私はあの時と同じ空にカメラを向けた。 1さん(東京・15さい)からの相談
とうこう日:2023年10月11日みんなの答え:2件
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めっちゃうまい! やっほーさくらだよ!
めっちゃ感動しました!
話の作り方が上手くて、尊敬します! さくらさん(大阪・11さい)からの答え
とうこう日:2023年12月12日 -
展開が予想外で泣ける 理桜です!
ラブストーリーかとおもいきやまさかの…。゚(゚´Д`゚)゚。
予想外すぎて泣ける(T_T) 理桜さん(選択なし・14さい)からの答え
とうこう日:2023年12月11日
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