たったの5文字で
私は愛が欲しかった。
「Anna(アンナ)、何度言ったら分かるの?」
今日も私の鼓膜に届くのは叱責の声だった。前世でも天使になった今も誰にも愛されずただただ謝罪をする毎日。なぜ存在しているのか、失敗作の正しい生き方、ずっとずっと考えてきた。いまだに答えは出そうにない。失敗作は消えるまでずっと失敗作のままなのだから。前世で何度も聞いたセリフが心と脳裏に深く重くナイフとなって刺さって抜けない。私は軽いはずの重い体を支える小さな翼で飛んだ。
___________________________________
私は健康が欲しかった。
目を開けてもそこにあるのは殺風景な病室の天井だけ。4歳で病気になってから3年。遊ぶことも幼稚園に行くこともできず、髪やまつ毛、普通の生活も奪われ、私がこれ以上何を失えば済むのか分からないほど人生は一変してしまった。せっかく改善してきた病状も、小学校に入学してから再び悪化し、ランドセルを背負ったのは入学してから3ヶ月だけだった。最近は特に症状が重く、目を動かすことしかままならない。体は、ベットに張り付いているかのようだ。目を開けているのも辛くなってきて、私は、瞼をそっと閉じた。
月日が流れた。
体は私の意思に反して、動かない。少しずつ少しずつ空が近づいてきているのを感じながら毎日息をしていたがそれも今日で終わりそうだ。肺にはもう僅かな空気しか入ろうとせず、吸っても吸っても見えない壁に吸収され、私の元には来ない。真っ暗な視界の中、最期の時が刻まれていく。心電図はもう動かない。
「羽菜…ごめんね、丈夫に産めなくて。羽菜は私達の自慢の娘よ。今までありがとう…ぁ……」
続きはもう聞こえなかった。聴力ももう持たなかったようだ。視界に光が戻ってきた時、もう私は空の住人になっていた。白い羽が私の頬を掠った。「天国、連れてって」久しぶりに聴いた自分の声には、悲しみと解放感が感じられた。
天使は静かに頷き、吸い込まれてしまいそうな青い瞳で瞬きをした。そして、私の手をそっと握り、こう言った。「行こう、一緒に」と。幼い天使だったけれど、人の心を癒すような特別な何かを感じた。
「着いたよ。羽菜ちゃんは良い子だったから絶対生まれ変われるね。」
「本当?次はもっと自由に動きたいな…。」
言っていて悲しくなった。気づくと視界がぼやけていて、涙が頬を伝うのと共に、嫌な記憶も一緒に洗い流されているようだった。心配そうな顔で天使が見つめてきた。
「よくがんばったね。来世はきっと健康な子になるよ。」
「うん…。優しいね、天使さん。」
すると、天使は驚いた表情をした。
___________________________________
私は優しくなんか無い。弱くて逆らえないだけ。前世でも、そのせいで死んだんだから。
前世の頃は、凜澄夢(りずむ)という名前だった。いわゆるキラキラネームだ。
名前も親もまともじゃなくて、まさに最悪な人生。幼少期から勉強を強いられ、一問でも間違えたら説教される。毎日嫌味を言われる。そんな日々だった。それは、詳しい事は言えないが、どんどんエスカレートしていき、酷いものだった。学校でも、良いように使われた。勉強が得意だった為、代わりに宿題をやらされた。逆らおうものなら、水をかけられたり、机を荒らされたりと厳しい仕打ちを受けた。一部の男子からは、「かわいい」「美人」と褒められたが、それは「失敗作なんか産まなきゃよかった、失敗作は失敗作は消えるまでずっと失敗作のままなのだから。」という母親の言葉でかき消された。ついに、私の人生が終わる日が来た。下校中に突然口を塞がれ、車に入れられた。この後は、言わなくても分かるだろう。
その後、天国に着き、天使になったが、そこには愛などなかった。
でも、この子は私に愛を与えてくれる。
私は存在して良かったのだろうか。
そんな事を羽菜と過ごしながら考えていたら、もう時間が来てしまった。
「私、生まれ変わるの?Annaとさよならなの?」
「うん。いってらっしゃい。」
笑顔で送り出さなきゃ。なのに、涙が止まらない。本当は行かないで欲しい。1人にしないで欲しい。そう思ってしまった。羽菜はどんどん遠くにいってしまう。
「私、どこまでクズなんだろ…」
誰かに認めて欲しかった。愛されたかった。認めてくれたあの子にまで失礼な態度をとってしまった。苦しい。悲しい。嗚咽がおさまらない。拭っても拭っても溢れる涙が私のスカートを濡らていく。どうしていつもうまく行かないのだろう。全ての原因は私なのだろうか。遠くで産声が聞こえた。
きっと羽菜だろう。
「幸せになってね。」
地に向かってそう言った。
私は今日も飛ぶ
「あいしてる」のたったの5文字を求めて。 アイリスさん(選択なし・12さい)からの相談
とうこう日:2023年10月22日みんなの答え:3件
「Anna(アンナ)、何度言ったら分かるの?」
今日も私の鼓膜に届くのは叱責の声だった。前世でも天使になった今も誰にも愛されずただただ謝罪をする毎日。なぜ存在しているのか、失敗作の正しい生き方、ずっとずっと考えてきた。いまだに答えは出そうにない。失敗作は消えるまでずっと失敗作のままなのだから。前世で何度も聞いたセリフが心と脳裏に深く重くナイフとなって刺さって抜けない。私は軽いはずの重い体を支える小さな翼で飛んだ。
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私は健康が欲しかった。
目を開けてもそこにあるのは殺風景な病室の天井だけ。4歳で病気になってから3年。遊ぶことも幼稚園に行くこともできず、髪やまつ毛、普通の生活も奪われ、私がこれ以上何を失えば済むのか分からないほど人生は一変してしまった。せっかく改善してきた病状も、小学校に入学してから再び悪化し、ランドセルを背負ったのは入学してから3ヶ月だけだった。最近は特に症状が重く、目を動かすことしかままならない。体は、ベットに張り付いているかのようだ。目を開けているのも辛くなってきて、私は、瞼をそっと閉じた。
月日が流れた。
体は私の意思に反して、動かない。少しずつ少しずつ空が近づいてきているのを感じながら毎日息をしていたがそれも今日で終わりそうだ。肺にはもう僅かな空気しか入ろうとせず、吸っても吸っても見えない壁に吸収され、私の元には来ない。真っ暗な視界の中、最期の時が刻まれていく。心電図はもう動かない。
「羽菜…ごめんね、丈夫に産めなくて。羽菜は私達の自慢の娘よ。今までありがとう…ぁ……」
続きはもう聞こえなかった。聴力ももう持たなかったようだ。視界に光が戻ってきた時、もう私は空の住人になっていた。白い羽が私の頬を掠った。「天国、連れてって」久しぶりに聴いた自分の声には、悲しみと解放感が感じられた。
天使は静かに頷き、吸い込まれてしまいそうな青い瞳で瞬きをした。そして、私の手をそっと握り、こう言った。「行こう、一緒に」と。幼い天使だったけれど、人の心を癒すような特別な何かを感じた。
「着いたよ。羽菜ちゃんは良い子だったから絶対生まれ変われるね。」
「本当?次はもっと自由に動きたいな…。」
言っていて悲しくなった。気づくと視界がぼやけていて、涙が頬を伝うのと共に、嫌な記憶も一緒に洗い流されているようだった。心配そうな顔で天使が見つめてきた。
「よくがんばったね。来世はきっと健康な子になるよ。」
「うん…。優しいね、天使さん。」
すると、天使は驚いた表情をした。
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私は優しくなんか無い。弱くて逆らえないだけ。前世でも、そのせいで死んだんだから。
前世の頃は、凜澄夢(りずむ)という名前だった。いわゆるキラキラネームだ。
名前も親もまともじゃなくて、まさに最悪な人生。幼少期から勉強を強いられ、一問でも間違えたら説教される。毎日嫌味を言われる。そんな日々だった。それは、詳しい事は言えないが、どんどんエスカレートしていき、酷いものだった。学校でも、良いように使われた。勉強が得意だった為、代わりに宿題をやらされた。逆らおうものなら、水をかけられたり、机を荒らされたりと厳しい仕打ちを受けた。一部の男子からは、「かわいい」「美人」と褒められたが、それは「失敗作なんか産まなきゃよかった、失敗作は失敗作は消えるまでずっと失敗作のままなのだから。」という母親の言葉でかき消された。ついに、私の人生が終わる日が来た。下校中に突然口を塞がれ、車に入れられた。この後は、言わなくても分かるだろう。
その後、天国に着き、天使になったが、そこには愛などなかった。
でも、この子は私に愛を与えてくれる。
私は存在して良かったのだろうか。
そんな事を羽菜と過ごしながら考えていたら、もう時間が来てしまった。
「私、生まれ変わるの?Annaとさよならなの?」
「うん。いってらっしゃい。」
笑顔で送り出さなきゃ。なのに、涙が止まらない。本当は行かないで欲しい。1人にしないで欲しい。そう思ってしまった。羽菜はどんどん遠くにいってしまう。
「私、どこまでクズなんだろ…」
誰かに認めて欲しかった。愛されたかった。認めてくれたあの子にまで失礼な態度をとってしまった。苦しい。悲しい。嗚咽がおさまらない。拭っても拭っても溢れる涙が私のスカートを濡らていく。どうしていつもうまく行かないのだろう。全ての原因は私なのだろうか。遠くで産声が聞こえた。
きっと羽菜だろう。
「幸せになってね。」
地に向かってそう言った。
私は今日も飛ぶ
「あいしてる」のたったの5文字を求めて。 アイリスさん(選択なし・12さい)からの相談
とうこう日:2023年10月22日みんなの答え:3件
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悲しい、、、 こんちゃ☆こーぽーです☆返信遅くなりました、、
すごい悲しいお話、、、
えーーん、、、私が言ってあげるよぉ、、、、
めっちゃ面白かった☆こういうの好き☆ありがとうございました♪応援してます☆ こーぽーさん(大阪・10さい)からの答え
とうこう日:2024年1月4日 -
すごい ポルコです。
ただただ凄いの言葉しかでない(T_T)
めちゃくちゃ言葉選びのセンスもあって感情移入しやすかったし、続きが気になってどんどん読み進められました!
ポルコさん(鳥取・15さい)からの答え
とうこう日:2023年12月28日 -
アイリスちゃんだ! こんにちは((。´・ω・)。´_ _))愛暖だよ(o・ω・o)
*本題*
すごく上手…!
結構長めの小説だったけれど、するする(?)と読めたの。
アイリスちゃんには、小説を書く才能があると思う☆彡
読んでくれてありがとう(*'ω'*)ばいちゃっ(^^♪ 愛暖*あのん*#元花凜さん(岐阜・12さい)からの答え
とうこう日:2023年12月28日
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