初めて交わした言葉は、『告白とその返事』
「私、樹くんの事が好き。」
静かな部屋に、どこか儚げな、それでいて力強い空気の振動がした。
─彼女の声を聞いたのは、それが初めてだった
今年で中学生になった俺のクラスには、不登校の女の子が1人いる。
その子の名前は、菜乃花。
彼女は入学式から1度も学校に来ていなくて、俺もみんなも、普段は存在自体忘れかけていた。
そんな生活をしていたが、夏休みが終わり、しばらくした頃。
突然、先生に呼び出され、
「菜乃花さんと、1度会ってみてほしい。」
と、言われた。
理由を問うと、
先生達は、今まで彼女が学校に来られるように色々試した事。
それでも駄目で、もしかしたら同じ『生徒』なら何とかできるかもと思った事。
かと言って生徒に頼むのは職務放棄になってしまうと思い、今まで何も出来なかった事。
だけどやっぱりこのまま何もしないまま終わるのも駄目だと思い、校長先生や教育委員会などに必死に許可を得て、後必要なのは俺の了承だけだと言う事。
俺を選んだ理由は、彼女と家が1番近いからだという事。
俺には、放課後に少しでもいいから彼女と会って、話して欲しいという事。
そういった事を伝えられ、先生は必死に、俺に頼み込んできた。
放課後に少しくらいなら、時間もある。
正直乗り気では無かったが、先生の気持ちを考えると断れなくて、了承した。
早速、今日の放課後から彼女に会うことになった。
ピーンポーン
事前に教えられた住所を元に、彼女の家を見つけ、インターホンを押す。
「はーい」
母親らしき人が返事をした。
「樹です。えっと...先生に頼まれて来ました。」
「あら、樹くん、先生から話は聞いてるわ。ありがとうね、上がってちょうだい」
数秒して、玄関の扉が開く。
家に上がらせてもらい、廊下を少し歩いて階段で2階に案内される。
ドアの前で立ち止まった彼女の母親が、
「ここが菜乃花の部屋よ、仲良くしてくれたら嬉しいわ。後でお菓子持っていくわね」
と言い、階段を降りていく。
いきなり知らないヤツが部屋に入ってきたら嫌なんじゃないかとも思ったが、ここまで来るともう引き下がれない。
深呼吸をして、ドアを開けた。
カーテンの閉まった、薄暗い部屋。
そこには、少し驚いた表情の少女がいた。
肌はとても白くて、髪は黒髪ロングの、ストレート。
この子が、菜乃花だ。
お互い気まずくてか言葉が見つからなくてか、数秒の沈黙があった。
このままではいけないと思い、話しかける。
「あ、よ、よろしく...俺、樹って言うんだ。」
「...」
彼女は、何も答えなかった。
結局その日はそれ以上話しかけられず、帰ることになった。
何日か経っても、彼女は一言も話さなかった。
せめて無言にならないように、なんとか学校や家であった事を話す。
幸い、ずっと俺が話していても嫌な顔はされなかった。
あれから数ヶ月。
相変わらず彼女は話さないが、笑顔を見せることが多くなってきた気がする。
俺はいつもの通り、彼女の家に向かいインターホンを押す。
部屋に案内され、彼女に話しかけようとした。
─その時
「私、樹くんの事が好き」
静かな部屋に、どこか儚げな、それでいて力強い空気の振動がした。
彼女は、続けて話す。
「今まで、何も話さなくて、無愛想で、ごめんなさい。緊張してて、大丈夫になってもいつの間にかタイミング、逃しちゃって。でも、それでも優しく話しかけてくれる樹くんが好きになって。この気持ちはちゃんと言わないとって思ったの。だから、いきなりになっちゃってごめんなさい、最後に、ちゃんと諦めたくて...」
そして1呼吸置いて、
「付き合ってください...!」
そう、言われた。
「...はい」
俺は迷わず、そう答えた。
彼女に言われて、やっと気付いた。
俺もいつしか、笑顔で話を聞いてくれる彼女を、好きになっていた。
「俺も菜乃花の事、好きだよ。」
「...!」
彼女の表情が、パッと明るくなる。
それから改めてお互いによろしくを言い合い、少し話してその日は帰った。
それから1ヶ月後。
今日は進級式だ。
俺の横には、
目を輝かせて桜を眺める彼女...菜乃花の姿があった。 らむねさん(兵庫・12さい)からの相談
とうこう日:2023年11月5日みんなの答え:4件
静かな部屋に、どこか儚げな、それでいて力強い空気の振動がした。
─彼女の声を聞いたのは、それが初めてだった
今年で中学生になった俺のクラスには、不登校の女の子が1人いる。
その子の名前は、菜乃花。
彼女は入学式から1度も学校に来ていなくて、俺もみんなも、普段は存在自体忘れかけていた。
そんな生活をしていたが、夏休みが終わり、しばらくした頃。
突然、先生に呼び出され、
「菜乃花さんと、1度会ってみてほしい。」
と、言われた。
理由を問うと、
先生達は、今まで彼女が学校に来られるように色々試した事。
それでも駄目で、もしかしたら同じ『生徒』なら何とかできるかもと思った事。
かと言って生徒に頼むのは職務放棄になってしまうと思い、今まで何も出来なかった事。
だけどやっぱりこのまま何もしないまま終わるのも駄目だと思い、校長先生や教育委員会などに必死に許可を得て、後必要なのは俺の了承だけだと言う事。
俺を選んだ理由は、彼女と家が1番近いからだという事。
俺には、放課後に少しでもいいから彼女と会って、話して欲しいという事。
そういった事を伝えられ、先生は必死に、俺に頼み込んできた。
放課後に少しくらいなら、時間もある。
正直乗り気では無かったが、先生の気持ちを考えると断れなくて、了承した。
早速、今日の放課後から彼女に会うことになった。
ピーンポーン
事前に教えられた住所を元に、彼女の家を見つけ、インターホンを押す。
「はーい」
母親らしき人が返事をした。
「樹です。えっと...先生に頼まれて来ました。」
「あら、樹くん、先生から話は聞いてるわ。ありがとうね、上がってちょうだい」
数秒して、玄関の扉が開く。
家に上がらせてもらい、廊下を少し歩いて階段で2階に案内される。
ドアの前で立ち止まった彼女の母親が、
「ここが菜乃花の部屋よ、仲良くしてくれたら嬉しいわ。後でお菓子持っていくわね」
と言い、階段を降りていく。
いきなり知らないヤツが部屋に入ってきたら嫌なんじゃないかとも思ったが、ここまで来るともう引き下がれない。
深呼吸をして、ドアを開けた。
カーテンの閉まった、薄暗い部屋。
そこには、少し驚いた表情の少女がいた。
肌はとても白くて、髪は黒髪ロングの、ストレート。
この子が、菜乃花だ。
お互い気まずくてか言葉が見つからなくてか、数秒の沈黙があった。
このままではいけないと思い、話しかける。
「あ、よ、よろしく...俺、樹って言うんだ。」
「...」
彼女は、何も答えなかった。
結局その日はそれ以上話しかけられず、帰ることになった。
何日か経っても、彼女は一言も話さなかった。
せめて無言にならないように、なんとか学校や家であった事を話す。
幸い、ずっと俺が話していても嫌な顔はされなかった。
あれから数ヶ月。
相変わらず彼女は話さないが、笑顔を見せることが多くなってきた気がする。
俺はいつもの通り、彼女の家に向かいインターホンを押す。
部屋に案内され、彼女に話しかけようとした。
─その時
「私、樹くんの事が好き」
静かな部屋に、どこか儚げな、それでいて力強い空気の振動がした。
彼女は、続けて話す。
「今まで、何も話さなくて、無愛想で、ごめんなさい。緊張してて、大丈夫になってもいつの間にかタイミング、逃しちゃって。でも、それでも優しく話しかけてくれる樹くんが好きになって。この気持ちはちゃんと言わないとって思ったの。だから、いきなりになっちゃってごめんなさい、最後に、ちゃんと諦めたくて...」
そして1呼吸置いて、
「付き合ってください...!」
そう、言われた。
「...はい」
俺は迷わず、そう答えた。
彼女に言われて、やっと気付いた。
俺もいつしか、笑顔で話を聞いてくれる彼女を、好きになっていた。
「俺も菜乃花の事、好きだよ。」
「...!」
彼女の表情が、パッと明るくなる。
それから改めてお互いによろしくを言い合い、少し話してその日は帰った。
それから1ヶ月後。
今日は進級式だ。
俺の横には、
目を輝かせて桜を眺める彼女...菜乃花の姿があった。 らむねさん(兵庫・12さい)からの相談
とうこう日:2023年11月5日みんなの答え:4件
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感度したぁぁぁ! おねがいです!
樹くんと菜乃花ちゃんの、その後の物語書いてくださいー!!
ぜったい読みます!ちかいます!
めちゃくちゃよかったですよ!! ぽこなさん(選択なし・12さい)からの答え
とうこう日:2024年1月22日 -
天才 天才すぎ るるかさん(岡山・12さい)からの答え
とうこう日:2024年1月16日 -
才能あります!! とっても感動しました!
わたしも樹くんみたいな彼氏ほしいです!
わたしも不登校なので、菜乃花ちゃんの気持ちすごくわかります!!!
とってもすてきなお話、ありがとう。 ななこ。さん(岡山・12さい)からの答え
とうこう日:2024年1月15日 -
すごーい どーもっ!
りーこです!名前覚えてくれたら幸いです。
かっ…感動した!
菜乃花さんと樹さん、すっごくいい関係だなぁと…。
菜乃花さんも学校来れるようになってよかったです。 りーこさん(選択なし・13さい)からの答え
とうこう日:2024年1月15日
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