星空の下で走るワケ
僕の頭上には無数の星が散りばめられている。また、その星たちの背景には藍色の濃淡でできた空が広がっていた。
あたたかい
そう思った。すると突然、僕の額に一粒の雫が落ちてきた。
あ。雨だ。
しかし、不思議なことに空には鉛色の雲一つない。それでも、あたたかくて優しい霧雨は止むことなく僕の服を濡らしていった。
そんな中、僕はあることに気づく。
ここは地上じゃない、と。
下を見れば、輝く星たちに照らされた若くて青い果てしない草原が広がっている。なぜ、このことに気付かなかったのだろう。
しかし、そんな小さいこと、すぐにどうでも良くなった。
ずっとこの場所にいたいと本気で思う。
「っ!」
まただ。またこの夢を見た。正直、この夢は好きじゃない。夢から覚めた瞬間、鋭い現実を突きつけられるからだ。いっそのこと、あの美しい空の中に吸い込まれてしまえば良いのにと思う程に。
僕はクラスメートから陰湿な嫌がらせを受けていた。
いじめ、とも言う。
理由は、知らない。人間というのは自分が気に入らないことを他人がすると、軽蔑や嫌悪などといった目を向け始める。いじめのきっかけなど、本当にちょっとしたことだったりするものだ。
「きもい」
目の前の女がそう言う。それと同時に、彼女の細い腕に抱えられた水入りバケツが僕に向かって降り注いだ。その水は夢の中の霧雨とは違い、冷たくて汚い。軽蔑と嫌悪と敵意に塗れ、汚れていることがわかる。自分の傷んだ髪の毛や乾燥した肌から汚水が伝い、冷気が漂う渡り廊下に落ちた。人間は嫌いだ。でも、それ以上にー
こんな所で突っ立って存在している自分が一番嫌いだった。
あたたかい
あれ。と僕は思う。今日はいつもと違って、空にいない。素足なのだろう。ざらりとした足裏の感触や風が吹くたびに揺れる青草達が直に感じられ、少しくすぐったい。夢の中でも、久々に感じる自然は心地よく幼い頃に戻った気がした。
僕は走った。素足のまま星に照らされた、どこまでも続く大草原の中を。こんなに全力で走っているのに息もあがらない。いつもと同じ一定の呼吸をし続けている。足が軽い。これならどこまでも走って行ける。走って、走って、走ってー
僕は何のために走っているの?
「ブス」
ばしゃり。またこれだ。いい加減鬱陶しい。また、担任への言い訳も考えないといけない。そう思うと何もかも放り出したくなる。
なんだか今日は無性にイライラする。
「君、ずぶ濡れだね」
そんな声が上から降ってきた。僕の気も知らないでよくそんなことが言えたものだ。普段はこんなことで腹を立てたりしないのに、心の奥底に焦燥感に似た感情が生まれる。
「放っておいてください」
自分でも生意気なことを言っているのは分かっている。だけど、このままだと全く無関係の人に八つ当たりをしてしまう。そう思ったからだ。
「そんな状態で放っておけるわけないじゃん」
まだ言うか。と思い顔を上げ、目の前にいる人物の顔を目でしっかりと捉える。しかし、僕はその顔を見て思わず硬直した。
鎖骨のあたりまでのびた黒髪。それとは対照的な真っ白な肌。瞳はまるで夢の中の美しい星空を映したようだった。
今日もまた昨日と同じ夢を見た。楽しくて心地よい夢。しかし、その夢を見ると今の自分を失ってしまいそうで...。少し怖くもなる。
あれ。今の自分って何だろう。
「うざい」
ばしゃっ。もう飽きた。こんな毎日、楽しいか?否。自問自答する毎日、楽しいか?否。生きている価値、あるのか?...。
「また会ったね」
デジャヴュを感じさせる光景に思わずクラリと目眩がする。
「なんですか」
冷たく、素っ気なく。こんなんじゃ、クラスの奴らと同じだな。つくづく自分が嫌になる。
「君、いじめられてるんだってね」
は?
「クラスメートが言ってたよ。隣のクラスの袋井は根暗で辛気臭いーって」
周りの音が一斉にシャットアウトされた。今までずっと蓄積され続けてきたものが限界に達した。嘘みたいに呼吸が荒い。そして、ついに言ってしまった。
「根暗で何が悪いんだよ!」
僕の怒号に彼女は驚きの表情を滲ませる。
「僕だって好きでこんなんでいるんじゃない!それを根暗とか辛気臭いとかそんなレッテルを貼られてたまるものかっ!僕の人生は僕が決める!他人が口出ししてんじゃねぇよ!」
喉が痛い。明日は声が出ないかもしれない。でも、これで分かった。僕はー
僕自身を見つけるために走っていたんだ。
そこには確かに若い青草の匂いがした。 うさモフさん(静岡・13さい)からの相談
とうこう日:2023年12月4日みんなの答え:3件
あたたかい
そう思った。すると突然、僕の額に一粒の雫が落ちてきた。
あ。雨だ。
しかし、不思議なことに空には鉛色の雲一つない。それでも、あたたかくて優しい霧雨は止むことなく僕の服を濡らしていった。
そんな中、僕はあることに気づく。
ここは地上じゃない、と。
下を見れば、輝く星たちに照らされた若くて青い果てしない草原が広がっている。なぜ、このことに気付かなかったのだろう。
しかし、そんな小さいこと、すぐにどうでも良くなった。
ずっとこの場所にいたいと本気で思う。
「っ!」
まただ。またこの夢を見た。正直、この夢は好きじゃない。夢から覚めた瞬間、鋭い現実を突きつけられるからだ。いっそのこと、あの美しい空の中に吸い込まれてしまえば良いのにと思う程に。
僕はクラスメートから陰湿な嫌がらせを受けていた。
いじめ、とも言う。
理由は、知らない。人間というのは自分が気に入らないことを他人がすると、軽蔑や嫌悪などといった目を向け始める。いじめのきっかけなど、本当にちょっとしたことだったりするものだ。
「きもい」
目の前の女がそう言う。それと同時に、彼女の細い腕に抱えられた水入りバケツが僕に向かって降り注いだ。その水は夢の中の霧雨とは違い、冷たくて汚い。軽蔑と嫌悪と敵意に塗れ、汚れていることがわかる。自分の傷んだ髪の毛や乾燥した肌から汚水が伝い、冷気が漂う渡り廊下に落ちた。人間は嫌いだ。でも、それ以上にー
こんな所で突っ立って存在している自分が一番嫌いだった。
あたたかい
あれ。と僕は思う。今日はいつもと違って、空にいない。素足なのだろう。ざらりとした足裏の感触や風が吹くたびに揺れる青草達が直に感じられ、少しくすぐったい。夢の中でも、久々に感じる自然は心地よく幼い頃に戻った気がした。
僕は走った。素足のまま星に照らされた、どこまでも続く大草原の中を。こんなに全力で走っているのに息もあがらない。いつもと同じ一定の呼吸をし続けている。足が軽い。これならどこまでも走って行ける。走って、走って、走ってー
僕は何のために走っているの?
「ブス」
ばしゃり。またこれだ。いい加減鬱陶しい。また、担任への言い訳も考えないといけない。そう思うと何もかも放り出したくなる。
なんだか今日は無性にイライラする。
「君、ずぶ濡れだね」
そんな声が上から降ってきた。僕の気も知らないでよくそんなことが言えたものだ。普段はこんなことで腹を立てたりしないのに、心の奥底に焦燥感に似た感情が生まれる。
「放っておいてください」
自分でも生意気なことを言っているのは分かっている。だけど、このままだと全く無関係の人に八つ当たりをしてしまう。そう思ったからだ。
「そんな状態で放っておけるわけないじゃん」
まだ言うか。と思い顔を上げ、目の前にいる人物の顔を目でしっかりと捉える。しかし、僕はその顔を見て思わず硬直した。
鎖骨のあたりまでのびた黒髪。それとは対照的な真っ白な肌。瞳はまるで夢の中の美しい星空を映したようだった。
今日もまた昨日と同じ夢を見た。楽しくて心地よい夢。しかし、その夢を見ると今の自分を失ってしまいそうで...。少し怖くもなる。
あれ。今の自分って何だろう。
「うざい」
ばしゃっ。もう飽きた。こんな毎日、楽しいか?否。自問自答する毎日、楽しいか?否。生きている価値、あるのか?...。
「また会ったね」
デジャヴュを感じさせる光景に思わずクラリと目眩がする。
「なんですか」
冷たく、素っ気なく。こんなんじゃ、クラスの奴らと同じだな。つくづく自分が嫌になる。
「君、いじめられてるんだってね」
は?
「クラスメートが言ってたよ。隣のクラスの袋井は根暗で辛気臭いーって」
周りの音が一斉にシャットアウトされた。今までずっと蓄積され続けてきたものが限界に達した。嘘みたいに呼吸が荒い。そして、ついに言ってしまった。
「根暗で何が悪いんだよ!」
僕の怒号に彼女は驚きの表情を滲ませる。
「僕だって好きでこんなんでいるんじゃない!それを根暗とか辛気臭いとかそんなレッテルを貼られてたまるものかっ!僕の人生は僕が決める!他人が口出ししてんじゃねぇよ!」
喉が痛い。明日は声が出ないかもしれない。でも、これで分かった。僕はー
僕自身を見つけるために走っていたんだ。
そこには確かに若い青草の匂いがした。 うさモフさん(静岡・13さい)からの相談
とうこう日:2023年12月4日みんなの答え:3件
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すごい!!! こんにちは!
年下の私がこんな事言うのもあれなんですが、すっっごくうまいですね!!語彙力がありすぎてびっくりします!!ここはまあ小さいコミュニティですが、その才能を活かして活躍していってほしいなと思います!
すごく上から目線ですみませんでした!でもそのくらい素敵な文章でした! さばさん(大阪・12さい)からの答え
とうこう日:2024年2月16日 -
上手すぎて,感動したゎぁ... (*o_ _)o*))
ど-もですっ♪♪
@元.歌夜,瀬里菜の紫羽だょ☆+*
2/11(日)から,バレンタイン&誕生日限定ニクネ,
*紫羽*に改名してますっ♪☆*
2/18(日)は,紫羽の誕生日♪♪
11歳になります☆
(* ・∪・*)ノヨロシク.。○o〇
*******************
めっちゃ,上手すぎて,感動しましたぁ〜☆
才能あるね~~~☆*♪
読んでくれてありがとう(人・∪・*)☆
またキズなんで会おうねっ♪
(*>ω<)ノ゙♪バイバイ(*・・)β 紫羽 | Siu@元.歌夜,瀬里菜さん(千葉・10さい)からの答え
とうこう日:2024年2月16日 -
すごく面白かった! こんちゃっ(^^♪花凜だっちゃヾ(*。・ ω < 。*) ノ゙
☆*: .。. o本題o .。.:*☆
すごく面白かったよ!
読んでくれてありがとう(*'ω'*)ばいちゃっ(^^♪ 花凜*かりん*#元澄実#キズなん民さん(岐阜・12さい)からの答え
とうこう日:2024年2月15日
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