救えたはずの、小さな命。
小さな男の子が、両手に大きな容器をかかえて川の近くに歩いていった。
川は泥で濁り、流れも速くあぶない。
だが、男の子は構わず近づき、濁った水をいっぱいにくんだ。
「アミール!水くんできた?」
僕が家に帰ると、小さな女の子が満面の笑みを浮かべてかけよってきた。
僕の1つ年下の妹なんだよ。
ちなみに、僕は今年で7歳!
「もちろん! のどかわいた?」
「うん! お兄ちゃん、おつかれさま! 私もそろそろ水くみにいけるかなぁ」
「はは、アンジェナはまだ小さいから無理だよ。もうちょっと大きくなったら、僕が教えてやる!」
「やったぁ!」
僕はボロボロの家の中に入り、ゆかに水を入れた容器をならべた。
「ありがとう、アミール。さあ、ご飯にしましょう」
奥から2人の赤ちゃんを連れたお母さんがでてきて、微笑んだ。
「さあ、めしあがれ」
だけど、出されたのはイモがひとつ。
だけど、6人いる兄弟のうちで文句を言うものは、誰もいなかった。
「ごめんね…こんなものしか食べさせてあげられなくて…」
食事のたびに、お母さんは辛そうにいう。
お母さんのせいじゃないのにな…。
僕たちの家はお父さんがいない。
アンジェナが産まれる前に、他の女の人と一緒に家を出ていった。
それから、女手一つで育ててくれてるんだ。
「ほら、もう寝なさい。寝たら空腹がまぎれるわよ」
突然、イモひとつでお腹がいっぱいになるはずもなく、僕達は食べ終わってすぐに寝る。
そうでもしないと、空腹でどうにかなりそうだから。
翌朝、僕が起きたのはまだ太陽のでるまえ。
朝ごはんは当然なし。
当然顔を洗うことも出来ず、乾いた布で顔を拭くとそのままの服装で家を出た。
当たりはまだ薄暗い。
僕が向かったのは、畑。
「おいガキ。さっさとこい」
僕が慌てていくと、大きなカゴをつきつけられた。
「さっさとカカオを収穫しろ。ひとつでも傷をつけたら、もちろんお代はなしだぞ」
あんまりだ。僕はそう言いたかったけれど、言えなかった。
ようやく雇ってもらった仕事。
ここで逃したら、次いつ雇ってもらえるか。
結局、帰ることが出来たのは真夜中だった。
死に物狂いで家にたどり着いたけれど、なんだか静かだ。家に入っても物音がしない。
「アンジェナ…うぅ…」
お母さんの…声? 恐る恐る部屋をのぞくと、寝ているアンジェナのとなりでお母さんが泣き崩れていた。
「お母さん…?」
お母さんははっと起き上がり、泣き腫らしためで僕を見つめた。
「あぁ、アミール…。アンジェナの具合が悪いの。きっと寄生虫だわ。ずっと熱が下がらなくて…」
「…アンジェナ? アンジェナ? しっかりしろよ、水くみにいくんだろ!」
僕が駆け寄っても、アンジェナは動かない。時おり苦しそうにうなり、もがくだけ。
そして次の日、アンジェナはあっけなく死んでしまった。
ここらへんじゃ寄生虫で人が死ぬのはしょっちゅうあるけれど、アンジェナは1番僕のことを慕ってくれていた。
それでも僕は必死に働いたけれど、家はまずしいままで、逆に…。
「かあ…さん」
僕は母さんの手を握った。
「おか…あさん。ぼく、そろそろ行かなきゃいけないみたい。アンジェナが呼んでるよ」
「…アミール? だめっ!いや! 」
とうとう僕も、寄生虫に感染してしまった。感染経路はわからないけれど、恐らくあの川の水のせい。だけど、水を飲まなければ僕達は死んでしまう。一か八かの賭けだった。
「弟たちを…学校に行かせてやって。あと、お母さん、無理しちゃダメだよ。ぼく…」
だけど、もう、言葉が続かなかった。数日前から息が苦しく、もう話すのも限界みたい。
「お母さんの子供でよかった。ありがとう」
-あとがき-
こんにちは、あいりです。
ひさしぶりに物語を書いてみました。
舞台はインド。児童労働のおはなしです。
学校にも行かず、必死に働いて家族を支えてきたアミール。にもかかわらず、大切な妹を失ってしまいます。だけど、神様は味方をしてくれませんでした。
数週間後、アミールも同じ病気にかかって死んでしまいます。
日本のことじゃないから関係ない、ではありません。今も、アミールのような子どもたちは学校にも通わずにはたらいています。
1度、世界にも目を向けてみませんか。 あいりさん(選択なし・13さい)からの相談
とうこう日:2023年12月6日みんなの答え:7件
川は泥で濁り、流れも速くあぶない。
だが、男の子は構わず近づき、濁った水をいっぱいにくんだ。
「アミール!水くんできた?」
僕が家に帰ると、小さな女の子が満面の笑みを浮かべてかけよってきた。
僕の1つ年下の妹なんだよ。
ちなみに、僕は今年で7歳!
「もちろん! のどかわいた?」
「うん! お兄ちゃん、おつかれさま! 私もそろそろ水くみにいけるかなぁ」
「はは、アンジェナはまだ小さいから無理だよ。もうちょっと大きくなったら、僕が教えてやる!」
「やったぁ!」
僕はボロボロの家の中に入り、ゆかに水を入れた容器をならべた。
「ありがとう、アミール。さあ、ご飯にしましょう」
奥から2人の赤ちゃんを連れたお母さんがでてきて、微笑んだ。
「さあ、めしあがれ」
だけど、出されたのはイモがひとつ。
だけど、6人いる兄弟のうちで文句を言うものは、誰もいなかった。
「ごめんね…こんなものしか食べさせてあげられなくて…」
食事のたびに、お母さんは辛そうにいう。
お母さんのせいじゃないのにな…。
僕たちの家はお父さんがいない。
アンジェナが産まれる前に、他の女の人と一緒に家を出ていった。
それから、女手一つで育ててくれてるんだ。
「ほら、もう寝なさい。寝たら空腹がまぎれるわよ」
突然、イモひとつでお腹がいっぱいになるはずもなく、僕達は食べ終わってすぐに寝る。
そうでもしないと、空腹でどうにかなりそうだから。
翌朝、僕が起きたのはまだ太陽のでるまえ。
朝ごはんは当然なし。
当然顔を洗うことも出来ず、乾いた布で顔を拭くとそのままの服装で家を出た。
当たりはまだ薄暗い。
僕が向かったのは、畑。
「おいガキ。さっさとこい」
僕が慌てていくと、大きなカゴをつきつけられた。
「さっさとカカオを収穫しろ。ひとつでも傷をつけたら、もちろんお代はなしだぞ」
あんまりだ。僕はそう言いたかったけれど、言えなかった。
ようやく雇ってもらった仕事。
ここで逃したら、次いつ雇ってもらえるか。
結局、帰ることが出来たのは真夜中だった。
死に物狂いで家にたどり着いたけれど、なんだか静かだ。家に入っても物音がしない。
「アンジェナ…うぅ…」
お母さんの…声? 恐る恐る部屋をのぞくと、寝ているアンジェナのとなりでお母さんが泣き崩れていた。
「お母さん…?」
お母さんははっと起き上がり、泣き腫らしためで僕を見つめた。
「あぁ、アミール…。アンジェナの具合が悪いの。きっと寄生虫だわ。ずっと熱が下がらなくて…」
「…アンジェナ? アンジェナ? しっかりしろよ、水くみにいくんだろ!」
僕が駆け寄っても、アンジェナは動かない。時おり苦しそうにうなり、もがくだけ。
そして次の日、アンジェナはあっけなく死んでしまった。
ここらへんじゃ寄生虫で人が死ぬのはしょっちゅうあるけれど、アンジェナは1番僕のことを慕ってくれていた。
それでも僕は必死に働いたけれど、家はまずしいままで、逆に…。
「かあ…さん」
僕は母さんの手を握った。
「おか…あさん。ぼく、そろそろ行かなきゃいけないみたい。アンジェナが呼んでるよ」
「…アミール? だめっ!いや! 」
とうとう僕も、寄生虫に感染してしまった。感染経路はわからないけれど、恐らくあの川の水のせい。だけど、水を飲まなければ僕達は死んでしまう。一か八かの賭けだった。
「弟たちを…学校に行かせてやって。あと、お母さん、無理しちゃダメだよ。ぼく…」
だけど、もう、言葉が続かなかった。数日前から息が苦しく、もう話すのも限界みたい。
「お母さんの子供でよかった。ありがとう」
-あとがき-
こんにちは、あいりです。
ひさしぶりに物語を書いてみました。
舞台はインド。児童労働のおはなしです。
学校にも行かず、必死に働いて家族を支えてきたアミール。にもかかわらず、大切な妹を失ってしまいます。だけど、神様は味方をしてくれませんでした。
数週間後、アミールも同じ病気にかかって死んでしまいます。
日本のことじゃないから関係ない、ではありません。今も、アミールのような子どもたちは学校にも通わずにはたらいています。
1度、世界にも目を向けてみませんか。 あいりさん(選択なし・13さい)からの相談
とうこう日:2023年12月6日みんなの答え:7件
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すごー! こんにちは!短編小説極めているメイだよ!
ーーーー本題ーーーー
クオリティすご!こんなに悲しい物語が作れるなんて!
参考にしたいーーー! メイさん(東京・10さい)からの答え
とうこう日:2024年2月20日 -
世界かぁ ぼんじゅーる!里徠なのだ!
°-*○本題○*-°
すごい…
世界には日本とは違って綺麗な水が飲めない国がたくさんあって,命を落としてしまう子供はたくさんいるんだね。
世界の課題について考え直すことができるいい機会になったよ♪
アディオス!(*'-')ノ~。.*・゚ 里徠*りら*#元樹里 さん(東京・12さい)からの答え
とうこう日:2024年2月18日 -
めちゃくちゃ,凄すぎるゎぁ〜☆ (*o_ _)o*))
ど-もですっ♪♪
@元.紫羽,歌夜,瀬里菜
椿雫*つしず*だょφ☆*
2/18 (日) は,椿雫の誕生日.′
11歳になりました♪*
(* ・∪・*)ノヨロシク.。○o〇
*******************
今,世界で起きている問題に沿ったお話だね.′
私も考えてみる.′
*******************
読んでくれてありがとう(人・∪・*)☆
またキズなんで会おうねっ♪
*☆o(* > ω・)oバイバイo(・ω < *)o☆* 椿雫|Tusizu@元.紫羽,歌夜さん(千葉・10さい)からの答え
とうこう日:2024年2月18日 -
すごい!!! =(ノ´∀`)ノ わぁぁぁい =( ┐ノε:)ノ_ズザァァァァァァ ( っ゚、。)っ チーン…
ハッ!キズナンカイトウチュウダッタ…!(*゚д゚)どもっ♪まめ。でしゅ!
名前覚えてくれると嬉しいでしゅ(*^ω^*)
**+本題+**(-ω- #)ゞ イテテ…
あんま短編小説は
見るだけで.回答してこなかったけど
この短編小説だけは回答せずにはいられなかったッ
考えさせられる短編小説で
すごく心に残った…!
あとがきも語りかけるようで
すごいなって思った!!!
あいりさん.将来
小説家になれそう…!!!(短編小説の回答で.こんなに書いたのも初めて…!)
**+終わり+**
それじゃっ ばいまめ。~ _( _´ω`)/~ バイバイ
(/*⌒▽⌒*)/マネシナイデネ
まめ。元ちなばけ。#お絵かき大好きっさん(福岡・12さい)からの答え
とうこう日:2024年2月18日 -
す、凄い…! あとがきも語り掛けるようで、すごい〜!!
こまちゃんさん(三重・11さい)からの答え
とうこう日:2024年2月17日 -
凄い──! こんちゃっ(^^♪花凜だっちゃヾ(*。・ ω < 。*) ノ゙
☆*: .。. o本題o .。.:*☆
上手く言葉にできないけれど、凄いね──!((語彙力
読んでくれてありがとう(*'ω'*)ばいちゃっ(^^♪ 花凜*かりん*#元澄実#ふぬってる奴さん(岐阜・12さい)からの答え
とうこう日:2024年2月17日 -
( ゚д゚)ハッ! ( ゚д゚)ハッ!
すごいお話・・・
児童労働…深刻な問題だね・・・
でわ♪ みるく_mirukuさん(選択なし・12さい)からの答え
とうこう日:2024年2月17日
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- 【「相談するとき」「相談の答え(回答)を書くとき」のルール】をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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- 「短編小説投稿について」をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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個人 を判断 することが出来ないため、削除依頼 には対応することは出来ません。投稿しても問題ない内容かよく確認してください。
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