ぼくたち二人で。
ぼくは、知ってる。
かほちゃんが、がんばって走っていたことを。
かほちゃんは、毎日、毎日、グランドを走っていた。
高く高くのびたひまわりと、大きな太陽。真っ青な空。
その真ん中で、かほちゃんは走っていた。
学校が始まるのは、八時。
かほちゃんは、朝の七時からずっと、走っている。
ぼくは、かほちゃんのがんばりを知っている。だって、ずっと応援してきたから。
今日もぼくは、かほちゃんを応援する。
「ヤッスー、今日も、タイムはかるのおねがいね」
みじかいポニーテールをゆらしながら、かほちゃんが笑顔で言った。
「はあ〜い」
ぼくは、ストップウォッチをスタートさせた。
かほちゃんが、地面をける。
あっという間に一周してしまった。
「はあ、つかれた。」
タイムは、十五秒。ぼくにはわからないけど、それはまだまだらしい。
「まだ十五秒かぁー。まだまだだね。ヤッスー、ちょっと休憩しよっか。」
ぼくはうなずいて、かほちゃんとくつばこに戻った。
かほちゃんとぼくは、陸上部に入っている。
朝練は、水・木・土・日だ。今日は月曜日。朝練はない。
だけどかほちゃんは、走っている。
かほちゃんは、足がはやい。
ぼくはそうでもないけど、かほちゃんは、陸上部の中で、三位くらいに足がはやいと思う。
「お茶飲もうか」
ぼくとかほちゃんが、お茶を飲んでいると、陸上部の先輩四人がきた。
「あんたたち、なにやってんの?」
ながーいポニーテールの先輩が言った。かほちゃんが、
「走っていました」
と言った。ぼくも、
「かほちゃんは〜、がんばって〜、れんしゅ〜したから〜、大会でさせてあげて〜」
と、言った。先輩が顔をしかめる。
「はあ?果歩は目ぇ見えないだろう。そんな奴が大会できるわけない。」
かほちゃんがうつむいた。ぼくは、
「目が〜、見えなくても〜、はしれるよー」
というと、「その喋りかたうぜー」と言って、ぼくをつきとばした。
ぼくは、痛くて泣いた。
かほちゃんが、「ヤッスーをいじめないで・・・」
と言った。
「はあ?お前たちは、見学でもしとけ」
と言い、先輩たちは、教室にもどってしまった。
かほちゃんは、目が見えない。
でも、それでも走れる。大会にでれる。
だって、陸上部で、三位にはやいんだもん。
なのに、なんで先輩は、ダメなんて言ったんだろう・・・
となりを見ると、かほちゃんも泣いていた。
「目が見えないから大会にでれないなんて、くやしい・・・」
ぼくはどうしていいかわからなくて、ただ、かほちゃんの背中をさすってやった。
ー一週間後ーー
あれ以来、かほちゃんは、朝走らなくなった。
それだけじゃない。
部活にも、でなくなった。
かほちゃんのいない部活は、楽しくなかった。
ある日、顧問の先生が、部員に言った。
「なんで大野が部活にきてないんだ?」
先輩たちは、だまっていた。
ぼくは、理由がわかる。
ーかほちゃんは、先輩たちに、悪口を言われて、これなくなったんですー
言おうとしても、なかなか口をひらけなかった。
「大野のタイムはすごくいい。なのになんで急に来なくなっちまったんだ?」
先輩たちは、ずーっとだまっている。
「大野は、大会にだそうと思ってたんだけどなあー・・」
ぼくは、その一言にびっくりした。
「せんせー、なんで果歩が大会にでるんですか?」
先輩が言った。
「なんでって、タイムがいいからだよ。なんか文句あるか?」
先輩が小さく舌打ちをしながら、くびを横に振った。
「楠原。大野に、大会にでるから、練習しとけって伝えてくれ。家、隣だろ?」
ぼくは、先生のことばに、小さくうなずいた。
ーー放課後ーー
ぼくは、かほちゃんの家のまえに立っていた。
かほちゃんは、もう学校にも来ていない。
ぼくは大きく息をすって、インターホンをおした。
「・・・」
少しだけ開いたドアの向こうで、かほちゃんがぼくを見ている。
「あのさ、せんせーがぁ〜、かほちゃんー、大会に〜、だすって〜。せんせーがいったから〜、まちがいないよ〜またあしたかられんしゅーしよ〜」
かほちゃんが、小さく口を開いた。
「でも・・・目の見えないわたしは・・・どうやって走ればいいの・・・?」
ぼくは、大きく微笑んだ。
「だいじょーぶ。」
ーー大会当日ーー
知的障害のある男の子と、目の見えない女の子が、二人で走っていた。
ぼくとかほちゃんは走れる。
二人なら走れる。
ぼくたちは、一つになる。
風になって、走ってゆく。 ななこ。さん(岡山・12さい)からの相談
とうこう日:2024年1月23日みんなの答え:7件
かほちゃんが、がんばって走っていたことを。
かほちゃんは、毎日、毎日、グランドを走っていた。
高く高くのびたひまわりと、大きな太陽。真っ青な空。
その真ん中で、かほちゃんは走っていた。
学校が始まるのは、八時。
かほちゃんは、朝の七時からずっと、走っている。
ぼくは、かほちゃんのがんばりを知っている。だって、ずっと応援してきたから。
今日もぼくは、かほちゃんを応援する。
「ヤッスー、今日も、タイムはかるのおねがいね」
みじかいポニーテールをゆらしながら、かほちゃんが笑顔で言った。
「はあ〜い」
ぼくは、ストップウォッチをスタートさせた。
かほちゃんが、地面をける。
あっという間に一周してしまった。
「はあ、つかれた。」
タイムは、十五秒。ぼくにはわからないけど、それはまだまだらしい。
「まだ十五秒かぁー。まだまだだね。ヤッスー、ちょっと休憩しよっか。」
ぼくはうなずいて、かほちゃんとくつばこに戻った。
かほちゃんとぼくは、陸上部に入っている。
朝練は、水・木・土・日だ。今日は月曜日。朝練はない。
だけどかほちゃんは、走っている。
かほちゃんは、足がはやい。
ぼくはそうでもないけど、かほちゃんは、陸上部の中で、三位くらいに足がはやいと思う。
「お茶飲もうか」
ぼくとかほちゃんが、お茶を飲んでいると、陸上部の先輩四人がきた。
「あんたたち、なにやってんの?」
ながーいポニーテールの先輩が言った。かほちゃんが、
「走っていました」
と言った。ぼくも、
「かほちゃんは〜、がんばって〜、れんしゅ〜したから〜、大会でさせてあげて〜」
と、言った。先輩が顔をしかめる。
「はあ?果歩は目ぇ見えないだろう。そんな奴が大会できるわけない。」
かほちゃんがうつむいた。ぼくは、
「目が〜、見えなくても〜、はしれるよー」
というと、「その喋りかたうぜー」と言って、ぼくをつきとばした。
ぼくは、痛くて泣いた。
かほちゃんが、「ヤッスーをいじめないで・・・」
と言った。
「はあ?お前たちは、見学でもしとけ」
と言い、先輩たちは、教室にもどってしまった。
かほちゃんは、目が見えない。
でも、それでも走れる。大会にでれる。
だって、陸上部で、三位にはやいんだもん。
なのに、なんで先輩は、ダメなんて言ったんだろう・・・
となりを見ると、かほちゃんも泣いていた。
「目が見えないから大会にでれないなんて、くやしい・・・」
ぼくはどうしていいかわからなくて、ただ、かほちゃんの背中をさすってやった。
ー一週間後ーー
あれ以来、かほちゃんは、朝走らなくなった。
それだけじゃない。
部活にも、でなくなった。
かほちゃんのいない部活は、楽しくなかった。
ある日、顧問の先生が、部員に言った。
「なんで大野が部活にきてないんだ?」
先輩たちは、だまっていた。
ぼくは、理由がわかる。
ーかほちゃんは、先輩たちに、悪口を言われて、これなくなったんですー
言おうとしても、なかなか口をひらけなかった。
「大野のタイムはすごくいい。なのになんで急に来なくなっちまったんだ?」
先輩たちは、ずーっとだまっている。
「大野は、大会にだそうと思ってたんだけどなあー・・」
ぼくは、その一言にびっくりした。
「せんせー、なんで果歩が大会にでるんですか?」
先輩が言った。
「なんでって、タイムがいいからだよ。なんか文句あるか?」
先輩が小さく舌打ちをしながら、くびを横に振った。
「楠原。大野に、大会にでるから、練習しとけって伝えてくれ。家、隣だろ?」
ぼくは、先生のことばに、小さくうなずいた。
ーー放課後ーー
ぼくは、かほちゃんの家のまえに立っていた。
かほちゃんは、もう学校にも来ていない。
ぼくは大きく息をすって、インターホンをおした。
「・・・」
少しだけ開いたドアの向こうで、かほちゃんがぼくを見ている。
「あのさ、せんせーがぁ〜、かほちゃんー、大会に〜、だすって〜。せんせーがいったから〜、まちがいないよ〜またあしたかられんしゅーしよ〜」
かほちゃんが、小さく口を開いた。
「でも・・・目の見えないわたしは・・・どうやって走ればいいの・・・?」
ぼくは、大きく微笑んだ。
「だいじょーぶ。」
ーー大会当日ーー
知的障害のある男の子と、目の見えない女の子が、二人で走っていた。
ぼくとかほちゃんは走れる。
二人なら走れる。
ぼくたちは、一つになる。
風になって、走ってゆく。 ななこ。さん(岡山・12さい)からの相談
とうこう日:2024年1月23日みんなの答え:7件
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おもしろかったです! 目が見えないけど走ってるのが、かんどうしました! るっ二さん(東京・8さい)からの答え
とうこう日:2024年5月12日 -
面白い(^^)/ キューカです!こんにちは〜(>_<)
面白かった!文章も表現も上手!
わたしも、ちゃーはんさんの言ってるように、「障害」の「害」は、「がい」とか「碍」とかでいいかなって思う!
でもさっき言ったように、短編小説書くのめっちゃうまいから自信もって!
じゃ、ばいばーい!(>_<) キューカさん(岡山・12さい)からの答え
とうこう日:2024年3月29日 -
面白い^_^ りゅりゅです☆
え、めっちゃいい話ぃぃ!
物語が進むにつれ、かほちゃんとヤッスーの事が分かっていくのが面白い!
また書いてください! りゅりゅさん(選択なし・12さい)からの答え
とうこう日:2024年3月27日 -
すごいっっ! か、か、か、かんどーせしたぁぁぁぁぁ^^;
かほちゃんとヤッスーのコンビがいい('ω')ノ
またたくさん小説書いてね!
以上、さようならぁ〜((^^♪) aさん(選択なし・12さい)からの答え
とうこう日:2024年3月27日 -
いい話… ひなまんじゅうです!
いい話・・・泣けるわ ひなまんじゅうさん(選択なし・12さい)からの答え
とうこう日:2024年3月26日 -
すごい!!!!!! ハロー!ピグだよ!
このお話はだんだん意味が分かっていって、すごい!!
最初はかほちゃんは目が見えてると思ってた!
それにヤッスーも障がいがあったなんてびくり!!
表現の仕方も上手でめっちゃ良いと思う!!
また読みたい!!
またねー!! ピグさん(千葉・12さい)からの答え
とうこう日:2024年3月25日 -
かんど~する~。゚(゚´Д`゚)゚。 こんちゃっ!
ちゃーはんだよ♪
☆*:.。. o感想っ!o .。.:*☆
すごいね!
うちはこんなすごい小説、書けないよ、、、
二つ、アドバイス!
「ーー週間後ーー」
が、「ー1週間後ーー」(ー一週間後ーー)
なのか、
「ーー週間後ーー」
なのか、分かりずらいから、
数字を使うなら、数字を使った方はいいと思った!
あと、「障害」の「害」の字は、
あんまり使わない方がいいかも、、、(「障がい」と書く)
でも、作品は、めっちゃいい!
☆*:.。. oしゅうりょおっo .。.:*☆
また小説を読みたいな~♪
キズなんでまた会おうね☆
じゃねっ(*・ω・)ノ
おつちゃーはん☆ ちゃーはんさん(東京・11さい)からの答え
とうこう日:2024年3月25日
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- 【「相談するとき」「相談の答え(回答)を書くとき」のルール】をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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- 「短編小説投稿について」をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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- キッズなんでも相談では、投稿されたユーザーの
個人 を判断 することが出来ないため、削除依頼 には対応することは出来ません。投稿しても問題ない内容かよく確認してください。
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