バレンタインデー
わたしには好きな人がいる。
ジミっこのわたしだけれど、この想いだけは揺るがない。
―誰よりも。
わたしの名前は日菜子。メガネをかけている、いわゆる地味子だ。
昔からずーっと片思いをしている相手がいる。
そして、そろそろバレンタインデーが近く、チョコレートを渡そうと考えている。
バレンタインデー前日。
運よく両親は出かけていて、一人っきりだった。
しかし、これは好都合。チョコレートを作ろうじゃないか。
お菓子作りは好きだったから、鼻歌を歌いながら材料を用意する。
友チョコはともかく、心配することがあった。
あまり話したことのないわたしがチョコレートをあげていいのだろうか。
手作りとか、キモイだろうか。
いわゆる一目ぼれ…。
そんなことを考えながら、チョコレートを溶かす。
ほぼほぼ友チョコだけど…一つだけ、本命チョコとして作る。
受け取ってもらえなくたっていい。告白するいい機会だ。
ライバルが多いのも知っているけれど、わたしの想いは誰よりも負けない。
チョコレートを型に入れて、冷蔵庫に入れる。
受け取ってくれるといいな。
バレンタインデー当日になった。
放課後の学校はやっぱりソワソワしていて、男女問わずチラチラあたりを見回していた。
「日菜子〜、友チョコだよ!いつもありがと!」
「わたしも!友チョコっ」
友達からチョコレートをもらって、わたしは笑顔で自分の作ってきたチョコレートをあげた。
「じゃあわたしからも、友チョコでーす!おいしくなかったらゴメン!」
「ヤダなぁ、日菜子のチョコがおいしくないわけないじゃん!」
友達はわたしのチョコレートを受け取ると、「ベツのコにも渡してくる」って言って行ってしまった。
…チャンス!
周りの目を盗み見て、わたしは教室を飛び出した。
渡すんだ。絶対に!
わたしはチョコレートの箱を抱きしめた。
「好きです」
空き教室で、告白している女子を見かけた。
そっと覗くと、チョコレートを渡している。相手は…。
わたしは目を見張った。
それは…わたしの一目ぼれの相手だったから。
息を殺して、わたしはその場にしゃがみこんだ。
ウソ。ウソウソ。
告白してたあのコ…めちゃモテモテのコじゃん。
勝てるワケ…ないって。
こんな地味子が。
わたしは耳をすました。
お願い。
断って!
「いいよ。俺も好き」
聞こえた言葉に、わたしは耳を疑った。
今…なんて?
いいよ?ウソウソ。
付き合わないでよ。わたしだって、チョコ…。
ウソだって…
言ってよ…。
名前を覚えてもらおうともしなかった。
頑張ってキョリを縮めようとも思わなかった。
ただ、告白したら受け取ってもらえるって。
そんなの、カンタンだと思ってた。
全然違った。
あのコは確かに毎日努力をしていた。生徒会にも入ってた。
わたしはなにもしてない。
醜すぎる。
それなのに、努力してたあのコを恨んでた。
サイアクだ。
自分のアホらしさに、目の前がにじむ。
立ち上がって、全速力で廊下を走った。
教室に戻ってバッグをつかみ、階段はほぼ転げ落ちるように降りた。
帰り道を全力疾走する。
びりりっ!
途中の公園に立ち寄って、ベンチに座る。
一生懸命ラッピングした包装紙を思い切り破いた。
もう受け取ってもらえないチョコレートだ。
こうなったらもうヤケ食いだ。
乱暴に箱を空けて、手作りのチョコレートをつかむ。
そして、口の中に放り投げる。ぽろり、涙が頬をつたった。
チョコは甘いハズなのに、苦く感じた。
「…うぇっ…うぇぇ…」
情けない声を上げて、残りのチョコレートを全部食べた。
チョコレートは苦くて、失恋の味がした。 ユノちゃんさん(選択なし・11さい)からの相談
とうこう日:2024年1月26日みんなの答え:0件
ジミっこのわたしだけれど、この想いだけは揺るがない。
―誰よりも。
わたしの名前は日菜子。メガネをかけている、いわゆる地味子だ。
昔からずーっと片思いをしている相手がいる。
そして、そろそろバレンタインデーが近く、チョコレートを渡そうと考えている。
バレンタインデー前日。
運よく両親は出かけていて、一人っきりだった。
しかし、これは好都合。チョコレートを作ろうじゃないか。
お菓子作りは好きだったから、鼻歌を歌いながら材料を用意する。
友チョコはともかく、心配することがあった。
あまり話したことのないわたしがチョコレートをあげていいのだろうか。
手作りとか、キモイだろうか。
いわゆる一目ぼれ…。
そんなことを考えながら、チョコレートを溶かす。
ほぼほぼ友チョコだけど…一つだけ、本命チョコとして作る。
受け取ってもらえなくたっていい。告白するいい機会だ。
ライバルが多いのも知っているけれど、わたしの想いは誰よりも負けない。
チョコレートを型に入れて、冷蔵庫に入れる。
受け取ってくれるといいな。
バレンタインデー当日になった。
放課後の学校はやっぱりソワソワしていて、男女問わずチラチラあたりを見回していた。
「日菜子〜、友チョコだよ!いつもありがと!」
「わたしも!友チョコっ」
友達からチョコレートをもらって、わたしは笑顔で自分の作ってきたチョコレートをあげた。
「じゃあわたしからも、友チョコでーす!おいしくなかったらゴメン!」
「ヤダなぁ、日菜子のチョコがおいしくないわけないじゃん!」
友達はわたしのチョコレートを受け取ると、「ベツのコにも渡してくる」って言って行ってしまった。
…チャンス!
周りの目を盗み見て、わたしは教室を飛び出した。
渡すんだ。絶対に!
わたしはチョコレートの箱を抱きしめた。
「好きです」
空き教室で、告白している女子を見かけた。
そっと覗くと、チョコレートを渡している。相手は…。
わたしは目を見張った。
それは…わたしの一目ぼれの相手だったから。
息を殺して、わたしはその場にしゃがみこんだ。
ウソ。ウソウソ。
告白してたあのコ…めちゃモテモテのコじゃん。
勝てるワケ…ないって。
こんな地味子が。
わたしは耳をすました。
お願い。
断って!
「いいよ。俺も好き」
聞こえた言葉に、わたしは耳を疑った。
今…なんて?
いいよ?ウソウソ。
付き合わないでよ。わたしだって、チョコ…。
ウソだって…
言ってよ…。
名前を覚えてもらおうともしなかった。
頑張ってキョリを縮めようとも思わなかった。
ただ、告白したら受け取ってもらえるって。
そんなの、カンタンだと思ってた。
全然違った。
あのコは確かに毎日努力をしていた。生徒会にも入ってた。
わたしはなにもしてない。
醜すぎる。
それなのに、努力してたあのコを恨んでた。
サイアクだ。
自分のアホらしさに、目の前がにじむ。
立ち上がって、全速力で廊下を走った。
教室に戻ってバッグをつかみ、階段はほぼ転げ落ちるように降りた。
帰り道を全力疾走する。
びりりっ!
途中の公園に立ち寄って、ベンチに座る。
一生懸命ラッピングした包装紙を思い切り破いた。
もう受け取ってもらえないチョコレートだ。
こうなったらもうヤケ食いだ。
乱暴に箱を空けて、手作りのチョコレートをつかむ。
そして、口の中に放り投げる。ぽろり、涙が頬をつたった。
チョコは甘いハズなのに、苦く感じた。
「…うぇっ…うぇぇ…」
情けない声を上げて、残りのチョコレートを全部食べた。
チョコレートは苦くて、失恋の味がした。 ユノちゃんさん(選択なし・11さい)からの相談
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