温かい春が近い昼下がり
「こんにちは。私はハルです。」
ある研究室で最高のアンドロイドが誕生した。名前はハル、身長は7歳くらいだ。見た目も肌の温かさも人間と同じ、血まで通っているのだ。このアンドロイドは世界最高の技術を詰め込んだアンドロイド…つまり世界一のアンドロイドだ。壊そうと思えば大陸一つは壊せる。ハルのことは国が管理することにした。
車で連れて行かれたところは壁で囲まれた大きな豪邸だった。庭も広く、どこからかいい匂いがする。しかし壁の向こう側は見えなかった。政府の偉い人が話した。
「ハル。君は今日からここで暮らしてもらう。君はアンドロイドだ。命令をすればすぐに実行するだろう。」
「どのくらい暮らせばいいですか?」
「この世界が終わるまで…かな。」
「かしこまりました。」
ハルはこの豪邸で暮らすことになった。
しかし、ハルには聞こえていた。
「あの…アンドロイドは逆らわないでしょうか?」
「大丈夫だ。心なんてあいつにはない。ただの指示待ち人間…いや、人間ともいえないか。」
ハルは意味がわからなかった。そして、ハルの豪邸生活が始まった。ハルはきっちりとしていた。いつも同じ時間に起きる。そしていつもの庭でぼーっとする。そして日が暮れれば家へ帰る。それが毎日続いた。
ある日のことだった。ハルはふと思った。
(この庭の壁を超えたらどうなるんだろう?)
それはダメなことだとは知っていた。でもハルは好奇心が抑えられなかった。ハルは壁に近づいた。そして普通にジャンプをしたと思ったら空高くに上がっていた。これが世界一のアンドロイドの力だ。ハルは壁の外に降りた。そこは樹海だった。木の音がざわざわなる。ハルにとっては初めての感覚だった。
(なんだろう…むずむずする…)
ハルはこの気持ちを抑えられず、樹海の中をひたすら走っていった。そのうち、花畑に出た。赤、黄色、白…色とりどりな花が咲いている。すると向こうの方に人影が見えた。ハルは近づいていった。
「こんにちは、僕はココ。君は?」
「こんにちは、私はハルです。」
「ハルか…いい名前だね。君もこの花畑に来たの?」
「いいえ、屋敷から抜け出したらここに…」
「屋敷…?それはどこにあるんだい?」
ハルは今までのことを話した。自分は研究所で生まれた世界一のアンドロイドだということ、豪邸に連れて行かれたこと、抜け出してきたこと…色々話した。ハルは最後に言った。
「そういえば屋敷から出た時にむずむずしたんです。私が知らないことはないはずなのに…」
「それはきっと〈心〉だよ。君は屋敷から抜け出してきたんだろ?きっと好奇心がすごかったんだろう。」
「なるほど…〈心〉…興味深いです。」
「そうだろ?」
ココはニコッと笑った。ハルは胸がドキッとした。
(なんなんだろう…胸が熱くなる…?ドキドキする…)
「あの…胸がドキドキするのはなんなんでしょう?」
「うーん…恋じゃない?」
「つまり、好きってことですか?」
「うん。多分そうじゃない?」
(私はココを好き…恋…)
「まて!動くな!」
森の向こうから政府の偉い人たちが来ていた。そして、軍隊も同時に。
「動くな!そこの少年を撃て!」
すると一斉に銃を発射した。何発もの弾がココの体に撃たれていく。
「ココ!」
ココはぐったりとしていた。ハルにはすぐにわかった。もうココは戻ってこない…と。
「ハル、帰ろう。」
それが1番の選択だ。ココのことなんて忘れて帰るのが1番だ。でも…
「戦闘モード。」
一気に衝撃波が辺りに走った。忘れられないんだ。初めて好きになったんだ。〈心〉を知ったんだ。ハルの目からは水が落ちていた。
(この水、私から流れています。そしてしょっぱいです。もしかして、これが〈涙〉なんですか?〈悲しい〉なんですか?ココ、もう一度教えてよ。)
衝撃波は止まらず、国だけでなく世界を滅ぼしていった。
これでいいのか。ハルは何度も考えた。ハルの体は限界を迎えていた。もうそろそろ爆発しそうだ。でも、これでいいんだ。ココがいない世界はつまらない。ハルがアンドロイドの世界もつまらない。
ハルとココが人間として生きる世界がいいんだ。
(ココ、大好きだよ。)
花畑で大きな爆発音が響いた。
今日の昼下がりは温かい春が近づいてきていた。
黒来さん(神奈川・12さい)からの相談
とうこう日:2024年2月28日みんなの答え:0件
ある研究室で最高のアンドロイドが誕生した。名前はハル、身長は7歳くらいだ。見た目も肌の温かさも人間と同じ、血まで通っているのだ。このアンドロイドは世界最高の技術を詰め込んだアンドロイド…つまり世界一のアンドロイドだ。壊そうと思えば大陸一つは壊せる。ハルのことは国が管理することにした。
車で連れて行かれたところは壁で囲まれた大きな豪邸だった。庭も広く、どこからかいい匂いがする。しかし壁の向こう側は見えなかった。政府の偉い人が話した。
「ハル。君は今日からここで暮らしてもらう。君はアンドロイドだ。命令をすればすぐに実行するだろう。」
「どのくらい暮らせばいいですか?」
「この世界が終わるまで…かな。」
「かしこまりました。」
ハルはこの豪邸で暮らすことになった。
しかし、ハルには聞こえていた。
「あの…アンドロイドは逆らわないでしょうか?」
「大丈夫だ。心なんてあいつにはない。ただの指示待ち人間…いや、人間ともいえないか。」
ハルは意味がわからなかった。そして、ハルの豪邸生活が始まった。ハルはきっちりとしていた。いつも同じ時間に起きる。そしていつもの庭でぼーっとする。そして日が暮れれば家へ帰る。それが毎日続いた。
ある日のことだった。ハルはふと思った。
(この庭の壁を超えたらどうなるんだろう?)
それはダメなことだとは知っていた。でもハルは好奇心が抑えられなかった。ハルは壁に近づいた。そして普通にジャンプをしたと思ったら空高くに上がっていた。これが世界一のアンドロイドの力だ。ハルは壁の外に降りた。そこは樹海だった。木の音がざわざわなる。ハルにとっては初めての感覚だった。
(なんだろう…むずむずする…)
ハルはこの気持ちを抑えられず、樹海の中をひたすら走っていった。そのうち、花畑に出た。赤、黄色、白…色とりどりな花が咲いている。すると向こうの方に人影が見えた。ハルは近づいていった。
「こんにちは、僕はココ。君は?」
「こんにちは、私はハルです。」
「ハルか…いい名前だね。君もこの花畑に来たの?」
「いいえ、屋敷から抜け出したらここに…」
「屋敷…?それはどこにあるんだい?」
ハルは今までのことを話した。自分は研究所で生まれた世界一のアンドロイドだということ、豪邸に連れて行かれたこと、抜け出してきたこと…色々話した。ハルは最後に言った。
「そういえば屋敷から出た時にむずむずしたんです。私が知らないことはないはずなのに…」
「それはきっと〈心〉だよ。君は屋敷から抜け出してきたんだろ?きっと好奇心がすごかったんだろう。」
「なるほど…〈心〉…興味深いです。」
「そうだろ?」
ココはニコッと笑った。ハルは胸がドキッとした。
(なんなんだろう…胸が熱くなる…?ドキドキする…)
「あの…胸がドキドキするのはなんなんでしょう?」
「うーん…恋じゃない?」
「つまり、好きってことですか?」
「うん。多分そうじゃない?」
(私はココを好き…恋…)
「まて!動くな!」
森の向こうから政府の偉い人たちが来ていた。そして、軍隊も同時に。
「動くな!そこの少年を撃て!」
すると一斉に銃を発射した。何発もの弾がココの体に撃たれていく。
「ココ!」
ココはぐったりとしていた。ハルにはすぐにわかった。もうココは戻ってこない…と。
「ハル、帰ろう。」
それが1番の選択だ。ココのことなんて忘れて帰るのが1番だ。でも…
「戦闘モード。」
一気に衝撃波が辺りに走った。忘れられないんだ。初めて好きになったんだ。〈心〉を知ったんだ。ハルの目からは水が落ちていた。
(この水、私から流れています。そしてしょっぱいです。もしかして、これが〈涙〉なんですか?〈悲しい〉なんですか?ココ、もう一度教えてよ。)
衝撃波は止まらず、国だけでなく世界を滅ぼしていった。
これでいいのか。ハルは何度も考えた。ハルの体は限界を迎えていた。もうそろそろ爆発しそうだ。でも、これでいいんだ。ココがいない世界はつまらない。ハルがアンドロイドの世界もつまらない。
ハルとココが人間として生きる世界がいいんだ。
(ココ、大好きだよ。)
花畑で大きな爆発音が響いた。
今日の昼下がりは温かい春が近づいてきていた。
黒来さん(神奈川・12さい)からの相談
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