『100年前』を 生きる 君へ.
私・諸河 五十鈴(もろかわ いすず)。
私には,誰にも言ったことのない,秘密がある。
それは,時代を超えた『手紙交換』をしていること。
ある日,私の学校の下駄箱に一通の手紙が入っていた。
封筒を開けて,中身を見てみるとそれは,約100年前を生きている彼。
四月朔日 海潮(わたぬき うしお)くんからの手紙だった。
これが,時代を超えた手紙交換___
その日から,私は,四月朔日くんと秘密の手紙交換を始めた。
お互いの時代の話,家族の話など,たくさん語った。
そんなある日のこと。
私は,下駄箱に一通の手紙が入っているのを見つけた。
急いで周りから見られていないことを確かめ,
そっと封筒を開けた。
諸河 五十鈴へ
お手紙ありがとう。俺も五十鈴から手紙が来ると,とっても嬉しい。
日頃の嫌なことが,忘れられるんだ。
この手紙を読んだ五十鈴もそんな気持ちになっているんだろ??
姿は,見えなくても,分からなくても何となくわかる。
でも,一度会っていたい。
絶対に叶わない願いだが,毎日そのことをただひたすら,願ってる。
次の手紙も楽しみに待ってる。
四月朔日 海潮より
「はぁ…」
読み終わった瞬間に私は,大きなため息をついた。
時代が違うと,顔を見ることもできない。
お互いに見つめ合って話すこともできないのだ。
(私ももし,願いが叶うなら,四月朔日くんと会いたい.′)
心の中で四月朔日くんに思いを伝えながら,封筒をぎゅっと抱きしめた。
私は,家に帰ると,急いで勉強机に向かい,便箋を出した。
私も早速彼に手紙を書き始めた。
四月朔日 海潮くんへ
お手紙ありがとう。とっても嬉しかった。
私も四月朔日くんと同じ気持ち。
深い深い四月朔日くんへの思いを,収めることはできない。
今すぐ,四月朔日くんに会いたい。会いに行きたい。
そんなことを毎夜毎夜,考えてるの。
同じ時代を生きていたら。
そんなことばっかり考えてしまうけれど,
こうして手紙を通して話せるのだから,
まだきっと幸せなはず。
だから,今を大切に生きていこう.′
また手紙頂戴ね。待ってるよ。
諸河 五十鈴より
書き終えるとランドセルの中に手紙をしまい,
しばらく,四月朔日くんのことを考えずには,いられなかった。
次の日,私は,昨日書いた手紙を下駄箱の中に入れた。
こうしておけば,いつの間にか手紙がなくなっているのだ。
それが,彼のもとに届いたという証拠。
「あ.消えた.′」
思わず叫んでしまった瞬間,
「何してんの?」
後ろには,クラス一の人気者,四方木 亜夢澪(よもぎ あゆみ)さんがいた。
「亜夢澪さん…」
「ねぇ。五十鈴,何してたの?」
「え.特に何も…」
「嘘ついても無駄よ。何かしてたでしょ。私は,知ってるんだから。」
亜夢澪さんにしつこく言われ,私は,遂に全てを話した。
「ふぅん。そうだったの。でも,今日から,私が,彼に手紙を出すわ。」
「亜夢澪さん…お願い。それだけは,やめて.′」
「駄目よ。わたしに黙ってた罰だと思えばいいわ。
ふふふ。じゃあ,私は,行くわね。」
「なんで。こんなことに…」
私は,堪え切れず,亜夢澪さんに言い返した。
「で,でもっ.′初めにやっていたのは,私です。何故なんですか.′」
「別にいいじゃない。あなたより私が海潮くんにふさわしいと思っただけよ。」
(それって…??もしかして…
亜夢澪さんも四月朔日くんのことを好きなの?)
それから,私は,海潮くんに手紙を出すことはなくなった。
いや。出せなくなったのか。
ぼーっとしながら,不意にカレンダーに目をやった。
今日は,9/1…
「9月1日っ.′」
私は,急いで彼に手紙を書き始めた。
そう。今日は,100年前に関東大震災があった日。
四月朔日くんは,100年前を生きている。
つまり,四月朔日くんの世界では,今日,これから関東大震災が起こる。
今は,11時半。地震が起きたのは,11時58分。
まだ,間に合うかもしれない。
「お願い.′亜夢澪さんの約束なんてどうでもいい.′間に合って.′
四月朔日くんのもとへ届いて.′」
思いを込めて,下駄箱に手紙を押し込んだ。
あの日から彼からの手紙は,来なくなった。
関東大震災で彼は亡くなったのだろうか。
あの手紙が,私と話せる最後のメッセージだったのかもしれない。
もしかしたら,私よりも亜夢澪さんのことが好きになっていたかもしれない。
それは,私にもわからない。
でも,下駄箱の中を毎日必ず,見てしまうのは,
彼が生きていると信じているからなんだろう。 快蘭|Kaira @元.椿雫,紫羽,歌夜さん(千葉・11さい)からの相談
とうこう日:2024年3月7日みんなの答え:5件
私には,誰にも言ったことのない,秘密がある。
それは,時代を超えた『手紙交換』をしていること。
ある日,私の学校の下駄箱に一通の手紙が入っていた。
封筒を開けて,中身を見てみるとそれは,約100年前を生きている彼。
四月朔日 海潮(わたぬき うしお)くんからの手紙だった。
これが,時代を超えた手紙交換___
その日から,私は,四月朔日くんと秘密の手紙交換を始めた。
お互いの時代の話,家族の話など,たくさん語った。
そんなある日のこと。
私は,下駄箱に一通の手紙が入っているのを見つけた。
急いで周りから見られていないことを確かめ,
そっと封筒を開けた。
諸河 五十鈴へ
お手紙ありがとう。俺も五十鈴から手紙が来ると,とっても嬉しい。
日頃の嫌なことが,忘れられるんだ。
この手紙を読んだ五十鈴もそんな気持ちになっているんだろ??
姿は,見えなくても,分からなくても何となくわかる。
でも,一度会っていたい。
絶対に叶わない願いだが,毎日そのことをただひたすら,願ってる。
次の手紙も楽しみに待ってる。
四月朔日 海潮より
「はぁ…」
読み終わった瞬間に私は,大きなため息をついた。
時代が違うと,顔を見ることもできない。
お互いに見つめ合って話すこともできないのだ。
(私ももし,願いが叶うなら,四月朔日くんと会いたい.′)
心の中で四月朔日くんに思いを伝えながら,封筒をぎゅっと抱きしめた。
私は,家に帰ると,急いで勉強机に向かい,便箋を出した。
私も早速彼に手紙を書き始めた。
四月朔日 海潮くんへ
お手紙ありがとう。とっても嬉しかった。
私も四月朔日くんと同じ気持ち。
深い深い四月朔日くんへの思いを,収めることはできない。
今すぐ,四月朔日くんに会いたい。会いに行きたい。
そんなことを毎夜毎夜,考えてるの。
同じ時代を生きていたら。
そんなことばっかり考えてしまうけれど,
こうして手紙を通して話せるのだから,
まだきっと幸せなはず。
だから,今を大切に生きていこう.′
また手紙頂戴ね。待ってるよ。
諸河 五十鈴より
書き終えるとランドセルの中に手紙をしまい,
しばらく,四月朔日くんのことを考えずには,いられなかった。
次の日,私は,昨日書いた手紙を下駄箱の中に入れた。
こうしておけば,いつの間にか手紙がなくなっているのだ。
それが,彼のもとに届いたという証拠。
「あ.消えた.′」
思わず叫んでしまった瞬間,
「何してんの?」
後ろには,クラス一の人気者,四方木 亜夢澪(よもぎ あゆみ)さんがいた。
「亜夢澪さん…」
「ねぇ。五十鈴,何してたの?」
「え.特に何も…」
「嘘ついても無駄よ。何かしてたでしょ。私は,知ってるんだから。」
亜夢澪さんにしつこく言われ,私は,遂に全てを話した。
「ふぅん。そうだったの。でも,今日から,私が,彼に手紙を出すわ。」
「亜夢澪さん…お願い。それだけは,やめて.′」
「駄目よ。わたしに黙ってた罰だと思えばいいわ。
ふふふ。じゃあ,私は,行くわね。」
「なんで。こんなことに…」
私は,堪え切れず,亜夢澪さんに言い返した。
「で,でもっ.′初めにやっていたのは,私です。何故なんですか.′」
「別にいいじゃない。あなたより私が海潮くんにふさわしいと思っただけよ。」
(それって…??もしかして…
亜夢澪さんも四月朔日くんのことを好きなの?)
それから,私は,海潮くんに手紙を出すことはなくなった。
いや。出せなくなったのか。
ぼーっとしながら,不意にカレンダーに目をやった。
今日は,9/1…
「9月1日っ.′」
私は,急いで彼に手紙を書き始めた。
そう。今日は,100年前に関東大震災があった日。
四月朔日くんは,100年前を生きている。
つまり,四月朔日くんの世界では,今日,これから関東大震災が起こる。
今は,11時半。地震が起きたのは,11時58分。
まだ,間に合うかもしれない。
「お願い.′亜夢澪さんの約束なんてどうでもいい.′間に合って.′
四月朔日くんのもとへ届いて.′」
思いを込めて,下駄箱に手紙を押し込んだ。
あの日から彼からの手紙は,来なくなった。
関東大震災で彼は亡くなったのだろうか。
あの手紙が,私と話せる最後のメッセージだったのかもしれない。
もしかしたら,私よりも亜夢澪さんのことが好きになっていたかもしれない。
それは,私にもわからない。
でも,下駄箱の中を毎日必ず,見てしまうのは,
彼が生きていると信じているからなんだろう。 快蘭|Kaira @元.椿雫,紫羽,歌夜さん(千葉・11さい)からの相談
とうこう日:2024年3月7日みんなの答え:5件
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-
うますぎる、、、! 同い年なのにこんなに素敵な作品書けるなんて凄すぎる!!最高!これの続編書いて欲しいです!!作ってたらごめんなさい!!え、本当に最高すぎます!!(何回言うんだ笑笑) 右書きさん(神奈川・11さい)からの答え
とうこう日:2024年5月28日 -
おぉ ヤッホ。キラリーン☆=**。
もちみぃだよー^^
*。…○_o*/:本題にGO:/*o_○…。*
すごぉい!!
でも亜夢澪さんは
海潮くんのこと
最初から知っていたの??
なんか最初から
知ってないと
五十鈴ちゃんの説明で
信じないと思う!!
_________…。・**
見てくれてサンクス☆
またキズなんでね。バァアイ\(^^)/ もちみぃさん(千葉・12さい)からの答え
とうこう日:2024年5月28日 -
良いです…ナキ↑ まだ生きてるって信じて下駄箱を見てしまうって言う発想が最高です!! 推しがいますさん(神奈川・10さい)からの答え
とうこう日:2024年5月21日 -
感動・・・! いつも泣き泣き涙ちゃんです
もうっなみだがとまりませんんんん
涙出すぎて体カラッカラーーーーーーーーーーー
まじではっそうが神
憧れです
私もやるよ
涙さん(福岡・10さい)からの答え
とうこう日:2024年5月15日 -
切ない、、 こんにちは、うさぎです!
発想が天才的すぎる…!
最後が切なすぎて…
文章書くのうますぎます、、!
わたぬきくんが生きてて
2人がいつか会えるといいな、、
素敵なお話ありがとう!! うさぎ_さん(選択なし・15さい)からの答え
とうこう日:2024年5月13日
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