僕だけが知るとある話
僕は山瀬(やませ)
高校生で、もうすぐ大学に進学する
参考書でまみれた部屋の真ん中で寝転んだ
理由は得にない、ただそうしてみたかっただけ
久しぶりに天井を見た気がした
それと同時に、小さな記憶が浮かんだ
いつも黒い服を着た子と森の中で遊んだ記憶
その子は不思議な力を持っていて…
僕がそれらの力を見る度にまるで魔法使いだってはしゃいで
特に…写真の景色を動かす力
川は流れて
森は葉の音を鳴らす
海は波打って
滝は轟く
そんな景色を写真で見てきらめいて
それをみてあの子が嬉しそうに笑う
頭の奥にしまったそんな記
記憶がふと蘇った
だけど今になってそれが本当の出来事だったかわからない
むしろ自分の妄想で作り上げた空想なのではなんて思う
だって、あの子の顔も声も、思い出せないから
あの時、星が降る空の下で二人で話したあの時、あの子はなんて言ったっけ
思い出せない
数年経って、大学に進学し、引っ越しが決まった
家の片付けをする時に
一つの本を見つけた
(…アルバム?)
めくってから、僕の中の疑いが確信に変わった
アルバムの写真に見覚えがあった
川と森と海と滝とが写る写真
動いてはいないけど、確かにこれはシオンと見た写真
なんとなく他の人に見せちゃいけない気がしてがらんとした自分の部屋に戻った
色褪せたページをめくるたび、記憶は鮮明になっていった
あの子の声と会話とをだんだん思い出した
ようやく最後のページをめくった時
あの子の名前を思い出した
あの子はシオンと言った
透き通っていてかつ繊細な声のあの子
紫の瞳のあの子はシオンだ
シオンはなんて言ったっけ、あの星空の下で
「…ねえ、君がどうして私の事が見えるかも、そばにいてくれるかも、いまだに理解できないわ、だけどね君はきっといい子だから、ただ単純に、1人になった時の私の事を哀れんでくれているんでしょ」
「…僕、1人は好きだけど独りは嫌いだ、だからシオンを独りにしたくない」
「…優しいね、家に帰らないの」
「どうせ家に帰ったって誰も何も無いよ」
「…そっか、なおさら君とは一緒に居れないな」
「…なんて言ったの?」
「わからなくていいよ、全部忘れるから」
シオンが僕の額に指を当てる
凄まじい光を放って溢れていく
「シオン!?なにするの!」
「私の事を忘れてもらう、何もかも」
「なんで!」
「ただなんとなく、このままじゃだめだと思っただけ」
そのまま気を失って、目が覚めたら
家にいたんだった
じゃあ、なんでここにアルバムが?
(…あ、そうだ)
ここで僕の中で全部が繋がった
あの時、気を失う前に確かシオンはこう言っていたな
「ねえ、君は私の写真気に入ってくれたよね、アルバムここに置いていく、記憶を変えて君の物って事にしとくからさ、大事にね、もしかしたら、アルバムを見て私の事思い出すだろうけど…その時には私は…」
「―この世に居ないから」
きっと、シオンは…病気か何かだったんだろうな
僕を独りにしてしまう事、自分がもうすぐ死んでしまう事を悟られるのが嫌で記憶を消したんだ
シオンなりの気づかいだったんだろうけど
僕はあの時、傷ついたんだからな
シオンの事を忘れるなんて絶対に嫌だった
シオンが一番の理解者で友達で…ただそばにいれるだけで嬉しかったんだ
もう、色んな感情が駆け巡り過ぎて、自分が何をしたいのかわからなくなってきた
外から風の音がした
シオンが一番好きな音は風の音
それを思い出して少しおかしくなって
笑ってしまった
相変わらず、気の使い方が不器用だな
ありがとうシオン
僕はもう、独りじゃないし大丈夫
だけど、シオンがいてくれたから
僕はこの世界が美しいと思えるようになったんだ
アルバムを片手に風に微笑む
その風がまるで、シオンを振り回して遊ぶ僕
見えた
ゆるるうさん(選択なし・14さい)からの相談
とうこう日:2024年3月10日みんなの答え:0件
高校生で、もうすぐ大学に進学する
参考書でまみれた部屋の真ん中で寝転んだ
理由は得にない、ただそうしてみたかっただけ
久しぶりに天井を見た気がした
それと同時に、小さな記憶が浮かんだ
いつも黒い服を着た子と森の中で遊んだ記憶
その子は不思議な力を持っていて…
僕がそれらの力を見る度にまるで魔法使いだってはしゃいで
特に…写真の景色を動かす力
川は流れて
森は葉の音を鳴らす
海は波打って
滝は轟く
そんな景色を写真で見てきらめいて
それをみてあの子が嬉しそうに笑う
頭の奥にしまったそんな記
記憶がふと蘇った
だけど今になってそれが本当の出来事だったかわからない
むしろ自分の妄想で作り上げた空想なのではなんて思う
だって、あの子の顔も声も、思い出せないから
あの時、星が降る空の下で二人で話したあの時、あの子はなんて言ったっけ
思い出せない
数年経って、大学に進学し、引っ越しが決まった
家の片付けをする時に
一つの本を見つけた
(…アルバム?)
めくってから、僕の中の疑いが確信に変わった
アルバムの写真に見覚えがあった
川と森と海と滝とが写る写真
動いてはいないけど、確かにこれはシオンと見た写真
なんとなく他の人に見せちゃいけない気がしてがらんとした自分の部屋に戻った
色褪せたページをめくるたび、記憶は鮮明になっていった
あの子の声と会話とをだんだん思い出した
ようやく最後のページをめくった時
あの子の名前を思い出した
あの子はシオンと言った
透き通っていてかつ繊細な声のあの子
紫の瞳のあの子はシオンだ
シオンはなんて言ったっけ、あの星空の下で
「…ねえ、君がどうして私の事が見えるかも、そばにいてくれるかも、いまだに理解できないわ、だけどね君はきっといい子だから、ただ単純に、1人になった時の私の事を哀れんでくれているんでしょ」
「…僕、1人は好きだけど独りは嫌いだ、だからシオンを独りにしたくない」
「…優しいね、家に帰らないの」
「どうせ家に帰ったって誰も何も無いよ」
「…そっか、なおさら君とは一緒に居れないな」
「…なんて言ったの?」
「わからなくていいよ、全部忘れるから」
シオンが僕の額に指を当てる
凄まじい光を放って溢れていく
「シオン!?なにするの!」
「私の事を忘れてもらう、何もかも」
「なんで!」
「ただなんとなく、このままじゃだめだと思っただけ」
そのまま気を失って、目が覚めたら
家にいたんだった
じゃあ、なんでここにアルバムが?
(…あ、そうだ)
ここで僕の中で全部が繋がった
あの時、気を失う前に確かシオンはこう言っていたな
「ねえ、君は私の写真気に入ってくれたよね、アルバムここに置いていく、記憶を変えて君の物って事にしとくからさ、大事にね、もしかしたら、アルバムを見て私の事思い出すだろうけど…その時には私は…」
「―この世に居ないから」
きっと、シオンは…病気か何かだったんだろうな
僕を独りにしてしまう事、自分がもうすぐ死んでしまう事を悟られるのが嫌で記憶を消したんだ
シオンなりの気づかいだったんだろうけど
僕はあの時、傷ついたんだからな
シオンの事を忘れるなんて絶対に嫌だった
シオンが一番の理解者で友達で…ただそばにいれるだけで嬉しかったんだ
もう、色んな感情が駆け巡り過ぎて、自分が何をしたいのかわからなくなってきた
外から風の音がした
シオンが一番好きな音は風の音
それを思い出して少しおかしくなって
笑ってしまった
相変わらず、気の使い方が不器用だな
ありがとうシオン
僕はもう、独りじゃないし大丈夫
だけど、シオンがいてくれたから
僕はこの世界が美しいと思えるようになったんだ
アルバムを片手に風に微笑む
その風がまるで、シオンを振り回して遊ぶ僕
見えた
ゆるるうさん(選択なし・14さい)からの相談
とうこう日:2024年3月10日みんなの答え:0件
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