クリスマス・マジック
「今日さ、何の日か知ってる?」
「そんなの……ねぇ」
そんなことわざわざ聞かなくたって、分かりきっているじゃない、と私は周囲を見回した。
どこを見ても、幻想的な景色と、幸せそうなカップルか、家族ばかり。
「だよな。みんな幸せそうだな」
「羨ましいくらいにね」
だって今日は、暖かい笑顔が溢れている日。いつもより、二人の距離が近づく日。
【クリスマスイブ】
そして、数刻前からチラつき始めた雪。多くの人が思っているはずだ。なんと素敵な日だろうか、と。
私も皆と同じように、幸せだった。心待ちにしていた。
朝からウキウキしちゃって、仕事もいつもよりもすごく集中した。だって、こんな日に残業なんてありえない。
きっちり定時であがってやろうと、必死だった。朝からの頑張りの甲斐あって、順調に仕事は終わり、
定時過ぎには会社を出る事が出来た。いい日になりそうだと、スキップしたくなる気持ちを抑え、帰宅した。それから、
自分の身体をデコレーション。要するに、すっごくおしゃれした。普段の私を知っている人は、驚くかもしれない。会社の同僚が
しそうなリアクションを想像して、1人クスクスと笑った。彼と初めて過ごす予定のクリスマスに、うきうきして、ドキドキで、
準備をしている段階から凄く楽しかった。とにかく、表情は緩みっぱなし。鏡を見て、それがまた可笑しくなった。鼻歌なんか
歌ってさ、絶対に他人には見せられない姿だった。自分でもあんなテンションになれるんだって、驚いたくらいだ。
そして私は、時間に余裕をもって彼との待ち合わせ場所へと向かった。久しぶりに彼氏に会えることが、とても嬉しくて、
彼を待つ事くらい苦にならない。だって今日はこんなにもハッピーだから!!
彼との待ち合わせ場所は、イルミネーションで有名なクリスマスツリーの下。
その約束は、渋る彼氏を私が言いくるめたんだけど。家でゆっくり過ごしたいと言う彼氏を押し切る形の約束。
それでも承諾してくれたんだ。ロマンチックな夜を想像して、ソワソワしていた。
待ち合わせ場所に着いて周りを見渡すと、私と同じように、恋人を待つ人たちがたくさんいた。
私があこがれていた光景が、そこら中に広がっていた。周りが眩しいくらいにキラキラと輝いて見える。
「こんな日はさ、やっぱり大切な人と過ごすんだよな」
「私もそうだと思う」
日本中、いや世界中かな?たくさんの人たちに笑顔が溢れる日。隣を見上げると、スマートにスーツを着こなした、素敵な男性が。
周りの女性たちが羨ましそうに私を見ていく。それほどまでに、今私の隣にいる彼は目立っている。
うん、その気持ちよく分かるよ。私でも初めて出会った時に、見惚れてしまったから。勿体ない、私の隣なんかに居るなんて。
私達はお互いに少し俯いたような姿勢で、目を合わせることなく、先ほどから会話している。
彼の目を見つめるなんて事はできない。だって、彼は……
「ところで君は誰?」
遠慮がちに私の目を見ながら、素敵な彼は私へと問いかける。
「あなたこそ、誰?」
私も彼に問いかける。
そう、私達はたった今出会ったばかり。
偶然と偶然が重なって起こった出会い。名前なんて知らない。ましてや何をしている人かも。もちろん年齢も。
彼のことはただ1つしか知らない。彼も私のことは1つしか知らない。互いに目を合わせ、フッと口角を上げながら微笑んだ。
「こんな日に振られた寂しい人 だ 」
「こんな日に振られた寂しい人 よ 」
2人の声は心地よく重なる。言葉とは裏腹に、今は寂しさを感じてはいない。きっと、彼の存在がそうしてくれる。
私は彼氏との待ち合わせ中に、電話で彼氏に振られた。電話の向こうから私じゃない別の女の子の声がしていた。
「「別れよう」」
なぜか別れの言葉が二重で聞こえ、驚いて振り向くとそこに居たのが彼だった。
私と同じように振り向いた彼と、目が合い、そしてその瞳に吸い込まれるように、いつまでも見詰め合っていた。
気づいたときには電話は切れてしまっていた。誰が恋人に振られたばかりの人だとは思うだろうか。
きっとこの出会いのために必要な事だったんだ。そう思った。
「俺たちの出会いは、運命だと思わないか?」
「奇遇ね。私も同じ事を思ってた」
「俺さ、君のことを知りたいと思ってる」
「私もあなたの事をもっと知りたい」
2人は自然と手を取り合った。
そして、運命の場所になったクリスマスツリーに背を向けて、人ごみの中へと消えていく。
ロマンチックな夜に、幸せへと歩みだす2人。クリスマスは2人の始まり。素敵な事が起こりそうな12月。奇跡が起こる12月。
ほら、今も。どこかで起こる、クリスマス・マジック。 リスさん(東京・11さい)からの相談
とうこう日:2024年4月30日みんなの答え:7件
「そんなの……ねぇ」
そんなことわざわざ聞かなくたって、分かりきっているじゃない、と私は周囲を見回した。
どこを見ても、幻想的な景色と、幸せそうなカップルか、家族ばかり。
「だよな。みんな幸せそうだな」
「羨ましいくらいにね」
だって今日は、暖かい笑顔が溢れている日。いつもより、二人の距離が近づく日。
【クリスマスイブ】
そして、数刻前からチラつき始めた雪。多くの人が思っているはずだ。なんと素敵な日だろうか、と。
私も皆と同じように、幸せだった。心待ちにしていた。
朝からウキウキしちゃって、仕事もいつもよりもすごく集中した。だって、こんな日に残業なんてありえない。
きっちり定時であがってやろうと、必死だった。朝からの頑張りの甲斐あって、順調に仕事は終わり、
定時過ぎには会社を出る事が出来た。いい日になりそうだと、スキップしたくなる気持ちを抑え、帰宅した。それから、
自分の身体をデコレーション。要するに、すっごくおしゃれした。普段の私を知っている人は、驚くかもしれない。会社の同僚が
しそうなリアクションを想像して、1人クスクスと笑った。彼と初めて過ごす予定のクリスマスに、うきうきして、ドキドキで、
準備をしている段階から凄く楽しかった。とにかく、表情は緩みっぱなし。鏡を見て、それがまた可笑しくなった。鼻歌なんか
歌ってさ、絶対に他人には見せられない姿だった。自分でもあんなテンションになれるんだって、驚いたくらいだ。
そして私は、時間に余裕をもって彼との待ち合わせ場所へと向かった。久しぶりに彼氏に会えることが、とても嬉しくて、
彼を待つ事くらい苦にならない。だって今日はこんなにもハッピーだから!!
彼との待ち合わせ場所は、イルミネーションで有名なクリスマスツリーの下。
その約束は、渋る彼氏を私が言いくるめたんだけど。家でゆっくり過ごしたいと言う彼氏を押し切る形の約束。
それでも承諾してくれたんだ。ロマンチックな夜を想像して、ソワソワしていた。
待ち合わせ場所に着いて周りを見渡すと、私と同じように、恋人を待つ人たちがたくさんいた。
私があこがれていた光景が、そこら中に広がっていた。周りが眩しいくらいにキラキラと輝いて見える。
「こんな日はさ、やっぱり大切な人と過ごすんだよな」
「私もそうだと思う」
日本中、いや世界中かな?たくさんの人たちに笑顔が溢れる日。隣を見上げると、スマートにスーツを着こなした、素敵な男性が。
周りの女性たちが羨ましそうに私を見ていく。それほどまでに、今私の隣にいる彼は目立っている。
うん、その気持ちよく分かるよ。私でも初めて出会った時に、見惚れてしまったから。勿体ない、私の隣なんかに居るなんて。
私達はお互いに少し俯いたような姿勢で、目を合わせることなく、先ほどから会話している。
彼の目を見つめるなんて事はできない。だって、彼は……
「ところで君は誰?」
遠慮がちに私の目を見ながら、素敵な彼は私へと問いかける。
「あなたこそ、誰?」
私も彼に問いかける。
そう、私達はたった今出会ったばかり。
偶然と偶然が重なって起こった出会い。名前なんて知らない。ましてや何をしている人かも。もちろん年齢も。
彼のことはただ1つしか知らない。彼も私のことは1つしか知らない。互いに目を合わせ、フッと口角を上げながら微笑んだ。
「こんな日に振られた寂しい人 だ 」
「こんな日に振られた寂しい人 よ 」
2人の声は心地よく重なる。言葉とは裏腹に、今は寂しさを感じてはいない。きっと、彼の存在がそうしてくれる。
私は彼氏との待ち合わせ中に、電話で彼氏に振られた。電話の向こうから私じゃない別の女の子の声がしていた。
「「別れよう」」
なぜか別れの言葉が二重で聞こえ、驚いて振り向くとそこに居たのが彼だった。
私と同じように振り向いた彼と、目が合い、そしてその瞳に吸い込まれるように、いつまでも見詰め合っていた。
気づいたときには電話は切れてしまっていた。誰が恋人に振られたばかりの人だとは思うだろうか。
きっとこの出会いのために必要な事だったんだ。そう思った。
「俺たちの出会いは、運命だと思わないか?」
「奇遇ね。私も同じ事を思ってた」
「俺さ、君のことを知りたいと思ってる」
「私もあなたの事をもっと知りたい」
2人は自然と手を取り合った。
そして、運命の場所になったクリスマスツリーに背を向けて、人ごみの中へと消えていく。
ロマンチックな夜に、幸せへと歩みだす2人。クリスマスは2人の始まり。素敵な事が起こりそうな12月。奇跡が起こる12月。
ほら、今も。どこかで起こる、クリスマス・マジック。 リスさん(東京・11さい)からの相談
とうこう日:2024年4月30日みんなの答え:7件
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す、すごい こんにちは!
スパイファミリーが好きなアイちゃんだよ
☆*:..。. START .。.:*☆
すごい!
「「こんな日に振られた寂しい人よ(だ)」」
のところで(えっ!)と思ったけど、
最後にハッピーエンドでよかった〜
ほんとに11歳?
って思うほど才能ありすぎるよ。
アイもこういう小説かいてみたい!
☆*:..。. END .。.:*☆
素敵な小説ありがと!
(^.^)/~~~バイバイ
アイちゃんさん(選択なし・12さい)からの答え
とうこう日:2024年8月4日 -
すごい!上手! こんにちは♪モルモットの莉向だよっ\(≧∀≦)/
すごい!
小説評論家のメルさん同様、本当に年齢11歳?ってぐらい上手い!
これからも頑張って♪
参考になるといいな!
ばいちゃ♪ 莉向/Rimu/モルモット#歴バス推し☆さん(埼玉・10さい)からの答え
とうこう日:2024年8月3日 -
まじ?! 11歳でその才能すごおおおおおお! あいうえおさん(群馬・10さい)からの答え
とうこう日:2024年8月3日 -
え…ええっ!! 11歳でこんなの描けるってすごくないですか!どっかのさくひんぱくりましたか?((おい失礼だろ(殴!
私もこんな作品書いて見たい!
Goodbye ペンさん(埼玉・11さい)からの答え
とうこう日:2024年8月3日 -
すっっっっっっご! ええ?11歳!?
この表現力すごすぎる、わけてほしいくらいでs((
「家でゆっくり過ごしたいと言う彼氏を押し切る形の約束。」
というところで、今日のデート限りで別れよう、的な展開かと
思ったら予想外、失恋した者同士でこうなるとは!
面白かったよ。
おいしいサクサクくろわっさん(選択なし・13さい)からの答え
とうこう日:2024年8月3日 -
おい、本当に11歳か? 11歳とは思えない文章力なんですが…?物語もハッピーエンドで見ていてこっちも嬉しくなってくるんですが?そんなの評価5に決まってるんですが…?2人の関係は最高になるね、ゼッタイ。私もこんな彼氏欲しいなぁ。
総合評価は☆☆☆☆☆星5です!(5点満点) 小説評論家のメルさん(岡山・18さい)からの答え
とうこう日:2024年8月2日 -
よ...良すぎる! 本当に11歳?っていうぐらいにキャラクターの表現ができていてすごいと思う!何回もリピートしちゃった!クリスマスイヴに振られ、仲良くなるって奇想天外すぎた!本当に良すぎる!
リスさんのこれからの執筆活動がより良くなることを願ってるよ!ではでは〜 匿名ちゃんさん(選択なし・14さい)からの答え
とうこう日:2024年8月2日
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