花が散る
体が弱かった。
生まれつきだ。
走ったことがなかった。
歩くのでさえつらかった。
でも、寂しくはない。
友達はいないけれど・・・
優しい、とても優しいお兄ちゃんがいるから。
お兄ちゃんは学校が終わると直ぐに家に帰ってきてくれる。
「友達と話してきてもいいんだよ。」と言っても優しく微笑んだまま首を横に振る。
お母さん曰く、お兄ちゃんは難聴らしい。
だから私がいつもお話しをして、お兄ちゃんは微笑んだまま頷いたりしてくれる。
お話しを聞いてもらえるだけ、私は嬉しかった。
夜、目が覚めた。
今は秋。
なのに夏のように、深夜でも蒸し暑くてじめじめする。
喉の渇きを覚えて私は布団から出て壁にすがりつきながら居間にある調理場へ向かった。
・・・その時に聞こえた話し声。
「アザミ、どうしてこんな問題もできないの?」
「・・・」
「ほんとうに黙ってばかり。ユリにもずっと騙しているんでしょ。」
騙す・・・?
何のこと・・・?
アザミというのはお兄ちゃんの名前だ。
そして私はユリ。
ユリは花からとった名前だと言っていたけれど、アザミってなんの花なんだろう・・・
「・・・知らねぇよ。俺、ユリのこと好きじゃねーし。」
聞こえてきた声はお母さんの声じゃない。
お父さんでもない、若い男の人が喋るような声変わりしたての低い声。
それに今言ったことって・・・
盗み聞きしてしまっていることは申し訳なかったけれど、今の声は
「お兄ちゃん。」
私は、声に出してしまっていた。
驚いたようにお母さんとお兄ちゃんが私がいる壁の方に目を向けるのが分かる。
「ごめんね。」
私の声は、お兄ちゃんに届いたかな。
「・・・触れないで。」
お兄ちゃんが言った。
うん、お兄ちゃんが望むなら、私は言うこと聞くよ。
_______________翌日
怖いくらいに澄み切った青空の下、私の家族は殺された。
私は行き場を失った。
一人になってしまった。
どうしようと、悲しくて、未来が怖くなって、血だらけの床の上に座って泣きじゃくる。
ナイフを持った男が近づいてくる。
「君、綺麗な目をしているね。」
彼についていった私は、彼の名前を知った。
シロ、というらしい。
いや犬かよ。って思う人多いんじゃない?
でも私は彼に救われた。
行き場がなくて、家族は消えて、当然お兄ちゃんも消えて・・
そんな私を、地の底から地の果てまで引き上げてくれた。
そんな人だ。
ずっと信じてきた人のお別れって付き物だよね。
忘れてはいけない。
私は体が弱い。
この現実にはどうしても目を背けることはできないんだ。
「ユリ・・・」
私を見つめるシロの目はいつの日か、優しく微笑んでいた彼の目に似ていた。
優しい微笑みを浮かべた彼
・・そっか
・・・そうだったんだ・・
頭に、ある花言葉が浮かんだ。
なぜかは分からないけれど、その花言葉は分かった。
「アザミ・・・・」
アザミの手が私の額に優しく触れた。
「触れちゃダメなのに・・・ごめん。」
・・こんなにも優しい手があんな棘のあるものと同じなわけない。
小さい頃はこうして体温を測ってもらっていたなあ。
やっぱり、私のお兄ちゃんは優しい、とても優しい人だ。
そんなアザミの暖かい大きな手で目を隠されたユリは、静かに息を引き取った。
ユリの花言葉・・・純潔,威厳,無垢
アザミの花言葉・・・安心,独立,報復,触れないで
白いアザミの花言葉・・・ひとり立ち,自立心
【解説】
ユリは父、母、兄のアザミと四人で暮らす病弱な少女。優しい兄は難聴でいつも笑顔で微笑んで話を聞いてくれる。
ある日、夜中に兄と母が話していたことを見てしまったユリは、アザミが実は難聴ではないこと、優しい母が兄に罵倒雑言を浴びせていたのを知ってしまう。騙されたことやアザミに「好きじゃない」と言われたショックでユリは思わず「ごめんね」と言う。しかしアザミは本当はユリのことを嫌いではなく、愛していた。アザミの花言葉は「触れないで」ユリの花言葉は「純潔」。あまりに真反対な二つの花言葉は両親が差別して付けたもの。つまり「アザミは嫌いだけれどユリは強く生きてほしい」大きくなったアザミは自分の名前の本当の意味を知っているため、小さい頃はユリの体温を測るために額に触れたが今は触れずになった。そしてアザミはユリの謝罪を聞いて思わず「触れないで」と吐き捨てた。
家族を殺したのはアザミです。ユリに自分の名前の花言葉を言ってしまったことで嫌われてしまったと思った彼は家族として生きることに耐えきれなくなったからだ。白いアザミの花言葉にとらわれて生きることに決めたアザミは「シロ」と嘘の名前を言った。
考察、教えてください。 minamiさん(選択なし・14さい)からの相談
とうこう日:2024年6月22日みんなの答え:1件
生まれつきだ。
走ったことがなかった。
歩くのでさえつらかった。
でも、寂しくはない。
友達はいないけれど・・・
優しい、とても優しいお兄ちゃんがいるから。
お兄ちゃんは学校が終わると直ぐに家に帰ってきてくれる。
「友達と話してきてもいいんだよ。」と言っても優しく微笑んだまま首を横に振る。
お母さん曰く、お兄ちゃんは難聴らしい。
だから私がいつもお話しをして、お兄ちゃんは微笑んだまま頷いたりしてくれる。
お話しを聞いてもらえるだけ、私は嬉しかった。
夜、目が覚めた。
今は秋。
なのに夏のように、深夜でも蒸し暑くてじめじめする。
喉の渇きを覚えて私は布団から出て壁にすがりつきながら居間にある調理場へ向かった。
・・・その時に聞こえた話し声。
「アザミ、どうしてこんな問題もできないの?」
「・・・」
「ほんとうに黙ってばかり。ユリにもずっと騙しているんでしょ。」
騙す・・・?
何のこと・・・?
アザミというのはお兄ちゃんの名前だ。
そして私はユリ。
ユリは花からとった名前だと言っていたけれど、アザミってなんの花なんだろう・・・
「・・・知らねぇよ。俺、ユリのこと好きじゃねーし。」
聞こえてきた声はお母さんの声じゃない。
お父さんでもない、若い男の人が喋るような声変わりしたての低い声。
それに今言ったことって・・・
盗み聞きしてしまっていることは申し訳なかったけれど、今の声は
「お兄ちゃん。」
私は、声に出してしまっていた。
驚いたようにお母さんとお兄ちゃんが私がいる壁の方に目を向けるのが分かる。
「ごめんね。」
私の声は、お兄ちゃんに届いたかな。
「・・・触れないで。」
お兄ちゃんが言った。
うん、お兄ちゃんが望むなら、私は言うこと聞くよ。
_______________翌日
怖いくらいに澄み切った青空の下、私の家族は殺された。
私は行き場を失った。
一人になってしまった。
どうしようと、悲しくて、未来が怖くなって、血だらけの床の上に座って泣きじゃくる。
ナイフを持った男が近づいてくる。
「君、綺麗な目をしているね。」
彼についていった私は、彼の名前を知った。
シロ、というらしい。
いや犬かよ。って思う人多いんじゃない?
でも私は彼に救われた。
行き場がなくて、家族は消えて、当然お兄ちゃんも消えて・・
そんな私を、地の底から地の果てまで引き上げてくれた。
そんな人だ。
ずっと信じてきた人のお別れって付き物だよね。
忘れてはいけない。
私は体が弱い。
この現実にはどうしても目を背けることはできないんだ。
「ユリ・・・」
私を見つめるシロの目はいつの日か、優しく微笑んでいた彼の目に似ていた。
優しい微笑みを浮かべた彼
・・そっか
・・・そうだったんだ・・
頭に、ある花言葉が浮かんだ。
なぜかは分からないけれど、その花言葉は分かった。
「アザミ・・・・」
アザミの手が私の額に優しく触れた。
「触れちゃダメなのに・・・ごめん。」
・・こんなにも優しい手があんな棘のあるものと同じなわけない。
小さい頃はこうして体温を測ってもらっていたなあ。
やっぱり、私のお兄ちゃんは優しい、とても優しい人だ。
そんなアザミの暖かい大きな手で目を隠されたユリは、静かに息を引き取った。
ユリの花言葉・・・純潔,威厳,無垢
アザミの花言葉・・・安心,独立,報復,触れないで
白いアザミの花言葉・・・ひとり立ち,自立心
【解説】
ユリは父、母、兄のアザミと四人で暮らす病弱な少女。優しい兄は難聴でいつも笑顔で微笑んで話を聞いてくれる。
ある日、夜中に兄と母が話していたことを見てしまったユリは、アザミが実は難聴ではないこと、優しい母が兄に罵倒雑言を浴びせていたのを知ってしまう。騙されたことやアザミに「好きじゃない」と言われたショックでユリは思わず「ごめんね」と言う。しかしアザミは本当はユリのことを嫌いではなく、愛していた。アザミの花言葉は「触れないで」ユリの花言葉は「純潔」。あまりに真反対な二つの花言葉は両親が差別して付けたもの。つまり「アザミは嫌いだけれどユリは強く生きてほしい」大きくなったアザミは自分の名前の本当の意味を知っているため、小さい頃はユリの体温を測るために額に触れたが今は触れずになった。そしてアザミはユリの謝罪を聞いて思わず「触れないで」と吐き捨てた。
家族を殺したのはアザミです。ユリに自分の名前の花言葉を言ってしまったことで嫌われてしまったと思った彼は家族として生きることに耐えきれなくなったからだ。白いアザミの花言葉にとらわれて生きることに決めたアザミは「シロ」と嘘の名前を言った。
考察、教えてください。 minamiさん(選択なし・14さい)からの相談
とうこう日:2024年6月22日みんなの答え:1件
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すごく深い… 花言葉素敵です!すごく深い話ですね! 玲衣☆さん(選択なし・12さい)からの答え
とうこう日:2024年10月1日
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