とある、ロボットのはなし。
こんなのじゃない。こんなはずじゃない。
ああ…私はなんて事をしてしまったんだ。
ガチャカチャと金属同士が当たる無機質な音が狭い実験室に鳴り響く。
スパナがガシャンと重い音を立てて落ち、ネジがコロコロと転がる。
私は目を見開いた。
「完っ成だ…!」
ひとりで作業を始めた1年前、本当に完成するなど思いもしなかった。
私はすぐにソレに抱きつき、飛び跳ねた。
私はつくっていたものはロボット。
人型ロボットだ。
自分の意志で動き、喋る。人間のようなロボット。
ずっと夢見て、つくり続けてきたものが今完成した。
その子は作業台から上半身を起こし、あたりを見渡す。
瞬きをして、スムーズに床に降りた。
本当に人間のような動きをしている。
「わたしの…お友達…!」
わたしは工作や実験が大好きという変わった性格のせいで
幼い頃から机に張り付いていたので、人から避けられていた。
昔は事の重大さに気づいていなかったが、今は違う。
友達が欲しくてしかたなかった。
少し、視界がぼやけ、頬が濡れる。
泣いているとわかるのに、時間はかからなかった。
昔から感情を表に出すことが無く、機械のようだと言われた私が。
私は震える声で言った。
「あなたは、わたしのおともだち。名前は…ノエル」
私はあなたに名前をつけた。
そういえば、この子が完成したのは、
雪がちらつく夜、聖なるクリスマスの日だった。
それから2か月後。
ノエルは順調に常識、人間の事を学び、今では人間の中にまざると、見分けのつかないほどになった。
ノエルは本当に感情のある人間のように行動し、発言をする。
お喋りだって、ゲームだって、お絵かきだって、読書だって、歌だって。
なんでも何でもできてしまう。
わたしとって本当の友達だ。
それから数日たったある日。
ガッシャーン
わたしは物凄く大きな物音で飛び起きた。
まず頭に浮かんできた感情は『心配』だ。
ノエルは無事か、大丈夫なのか。
わたしはベッドから飛び降り、勢いよく扉を開け、駆け足で階段をおりる。
そこにいたのは慌てて動き回るノエルだった。
ノエルはわたしに気が付き、気まずそうにこちらを向いた。
「おはよう…」
ノエルが口を開く。
そのノエルの足元には粉々と言ってもいい程ぐちゃぐちゃに割れたマグカップと、
コーヒーの色に染まった元は黄色のハンカチだった。
わたしはその場の状況が理解しきれなかった。
でもその場に座り込むほど、苦しくなった。
息をするのが面倒くさい、立っていられない。
ノエルが心配した表情でこちらに駆け寄ってくる。
「来ないで!!」
自分でも驚く程大きな声が出た。
ノエルは一瞬ひるみ、怯えたようにその場に立ち止まる。
「なにやってんの…!」
わたしには、母がいない。
幼い頃、病気で亡くなった。
わたしにある母との記憶と言えば、優しそうに笑う顔と、私の歩幅に合わせて歩く母の微笑む横顔だけだ。
このハンカチとマグカップは数少ない母の形見。
近頃、時の流れは残酷で、その記憶でさえもおぼろげになっているというのに。
わたしはやっとの思いでこらえていた涙を流した。
もう無理だ。
何もかも、壊された。
ならば、壊してしまえ。
何も、わかっていなかったんだと思う。
その場の状況すら理解出来ないほどに。
わたしはオロオロするノエルに抱き着き、背中に手をまわす。
そして、背中にある電源のボタンを力いっぱい押した。
当然、所詮はロボット。電源が切れたので、その場に倒れる。
私は手の甲で涙を拭いながらノエルの体を持ち、実験室に向かう。
そして、プログラミングの記録を全部消した。
つくるのはどんなに簡単でも、消す事は一瞬だ。
このまま、ノエルとの記憶を消し去り、時を戻したかった。
私はふらふらとした足取りでリビングに戻る。
そして、ある手紙を読んだ。
『最近疲れてるよね。料理には慣れていないけれど、朝ごはんつくろうと思って。材料を買ってくるので、少し出かけます。』
丁寧な字で、机の上に置いてあるメモ用紙にはそう書いてあった。
そういえば、ノエルはコートを着ていた。
これから出かけるつもりだったのだろう。
コーヒーは、ノエルがつくったもので、マグカップを割ってしまったので、急いでハンカチでふこうとした。
先にコーヒーを入れると、コーヒーは冷めてしまう。
だが慣れないノエルにわかるはずがない、教えなかったから。
わたしは、ノエルに形見の話をしていなかった。
大切なものなど、わかるはずないだろう。
ぽた、ぽたとゆっくりと涙が流れる。
ノエルが完成した時の涙じゃない。
心の底から後悔した時の涙だ。
「うわあああああ」
後悔しても、もう遅い。
私は現実を知り、泣き叫ぶ事しか出来なかった。
こんなはずじゃない。
こんなのじゃない。
けれども現実は残酷だ。 紫琥零…しぐれ…。さん(選択なし・12さい)からの相談
とうこう日:2024年6月24日みんなの答え:2件
ああ…私はなんて事をしてしまったんだ。
ガチャカチャと金属同士が当たる無機質な音が狭い実験室に鳴り響く。
スパナがガシャンと重い音を立てて落ち、ネジがコロコロと転がる。
私は目を見開いた。
「完っ成だ…!」
ひとりで作業を始めた1年前、本当に完成するなど思いもしなかった。
私はすぐにソレに抱きつき、飛び跳ねた。
私はつくっていたものはロボット。
人型ロボットだ。
自分の意志で動き、喋る。人間のようなロボット。
ずっと夢見て、つくり続けてきたものが今完成した。
その子は作業台から上半身を起こし、あたりを見渡す。
瞬きをして、スムーズに床に降りた。
本当に人間のような動きをしている。
「わたしの…お友達…!」
わたしは工作や実験が大好きという変わった性格のせいで
幼い頃から机に張り付いていたので、人から避けられていた。
昔は事の重大さに気づいていなかったが、今は違う。
友達が欲しくてしかたなかった。
少し、視界がぼやけ、頬が濡れる。
泣いているとわかるのに、時間はかからなかった。
昔から感情を表に出すことが無く、機械のようだと言われた私が。
私は震える声で言った。
「あなたは、わたしのおともだち。名前は…ノエル」
私はあなたに名前をつけた。
そういえば、この子が完成したのは、
雪がちらつく夜、聖なるクリスマスの日だった。
それから2か月後。
ノエルは順調に常識、人間の事を学び、今では人間の中にまざると、見分けのつかないほどになった。
ノエルは本当に感情のある人間のように行動し、発言をする。
お喋りだって、ゲームだって、お絵かきだって、読書だって、歌だって。
なんでも何でもできてしまう。
わたしとって本当の友達だ。
それから数日たったある日。
ガッシャーン
わたしは物凄く大きな物音で飛び起きた。
まず頭に浮かんできた感情は『心配』だ。
ノエルは無事か、大丈夫なのか。
わたしはベッドから飛び降り、勢いよく扉を開け、駆け足で階段をおりる。
そこにいたのは慌てて動き回るノエルだった。
ノエルはわたしに気が付き、気まずそうにこちらを向いた。
「おはよう…」
ノエルが口を開く。
そのノエルの足元には粉々と言ってもいい程ぐちゃぐちゃに割れたマグカップと、
コーヒーの色に染まった元は黄色のハンカチだった。
わたしはその場の状況が理解しきれなかった。
でもその場に座り込むほど、苦しくなった。
息をするのが面倒くさい、立っていられない。
ノエルが心配した表情でこちらに駆け寄ってくる。
「来ないで!!」
自分でも驚く程大きな声が出た。
ノエルは一瞬ひるみ、怯えたようにその場に立ち止まる。
「なにやってんの…!」
わたしには、母がいない。
幼い頃、病気で亡くなった。
わたしにある母との記憶と言えば、優しそうに笑う顔と、私の歩幅に合わせて歩く母の微笑む横顔だけだ。
このハンカチとマグカップは数少ない母の形見。
近頃、時の流れは残酷で、その記憶でさえもおぼろげになっているというのに。
わたしはやっとの思いでこらえていた涙を流した。
もう無理だ。
何もかも、壊された。
ならば、壊してしまえ。
何も、わかっていなかったんだと思う。
その場の状況すら理解出来ないほどに。
わたしはオロオロするノエルに抱き着き、背中に手をまわす。
そして、背中にある電源のボタンを力いっぱい押した。
当然、所詮はロボット。電源が切れたので、その場に倒れる。
私は手の甲で涙を拭いながらノエルの体を持ち、実験室に向かう。
そして、プログラミングの記録を全部消した。
つくるのはどんなに簡単でも、消す事は一瞬だ。
このまま、ノエルとの記憶を消し去り、時を戻したかった。
私はふらふらとした足取りでリビングに戻る。
そして、ある手紙を読んだ。
『最近疲れてるよね。料理には慣れていないけれど、朝ごはんつくろうと思って。材料を買ってくるので、少し出かけます。』
丁寧な字で、机の上に置いてあるメモ用紙にはそう書いてあった。
そういえば、ノエルはコートを着ていた。
これから出かけるつもりだったのだろう。
コーヒーは、ノエルがつくったもので、マグカップを割ってしまったので、急いでハンカチでふこうとした。
先にコーヒーを入れると、コーヒーは冷めてしまう。
だが慣れないノエルにわかるはずがない、教えなかったから。
わたしは、ノエルに形見の話をしていなかった。
大切なものなど、わかるはずないだろう。
ぽた、ぽたとゆっくりと涙が流れる。
ノエルが完成した時の涙じゃない。
心の底から後悔した時の涙だ。
「うわあああああ」
後悔しても、もう遅い。
私は現実を知り、泣き叫ぶ事しか出来なかった。
こんなはずじゃない。
こんなのじゃない。
けれども現実は残酷だ。 紫琥零…しぐれ…。さん(選択なし・12さい)からの相談
とうこう日:2024年6月24日みんなの答え:2件
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切ない‥‥ お日様だよ★( `・∀・´)ノヨロシク
めっちゃ切ない‥‥
ノエル優しい‥‥!!
めっちゃ泣けるこのお話!
紫琥零さんの、書き方もめっちゃ上手だね!
色んな表現を使ってて読みやすかったです!
じゃね☆彡 お日様さん(埼玉・12さい)からの答え
とうこう日:2024年10月5日 -
泣ける … っ #love ユーフォ 椛蒔 だみょん.
@龍花×朱恋×海透花×椛紗×朱琶.(m*・・)mヨロシク*。゚.o。
<<<Maine*゜
切ない … っ
これは 泣ける … っ
タイトル も ひきつけられるし !!
小説家 に なれそう !!
紫琥零 て ニクネ も 可愛い ><
>>>Finish*゜
( ・・Λ" bye.。 椛蒔Uもみじ #朱琶 #改名さん(東京・13さい)からの答え
とうこう日:2024年10月4日
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- 【「相談するとき」「相談の答え(回答)を書くとき」のルール】をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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- 「短編小説投稿について」をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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個人 を判断 することが出来ないため、削除依頼 には対応することは出来ません。投稿しても問題ない内容かよく確認してください。
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