あの夏と花火が導く
私がいじめを乗りこえられた理由。
それはあの夏の夜、あの場所で出会ったもう1人の“自分”に出逢えたから。
──もう耐えられない──
とうとう私の精神と体が悲鳴を上げた。止まらない自分の陰口。終わらない「遊び」という名の暴力。差別。
かれこれ半年は続いているであろういじめ。
高校に入ったらきっと楽しい生活が待っている。そう思った自分が馬鹿だった。
「どうして生きてるんだろうねw」
「とっとと死ねよ」
なんで私がこんなこと言われなきゃならないんだ。
私が何をしたって言うんだ。
─もう、死にたい─
その時私の心の何かが吹っ切れた。
そこから、もう何も感じなくなった。
味も、匂いも、感情も、寒さも、熱さも。
私は、心の拠り所が欲しかったんだと思う。
そうして学校にいかず、そこらをふらふらしている内に、どこか既視感のある神社に来ていた。
「ここに来た事ある。」
……しかし思い出せない。そんな事はつゆしらず、周りは賑わっていた。夏祭りでもあるんだろう。夕暮れなのに親子連れが沢山見えた。
聞けば花火が上がるらしい。
どうせ死ぬんだ、花火くらいみてもいいんじゃないか。何故かそう思った。
────
気が付くと神社の人気のない鳥居の前に居た。
導かれる様にして。もうそろそろ花火が上がるというのに何故だろう?ここに来た記憶が無い。どうやって来たんだろう
せっかくだしお参りでもして行こう。そう思った時だった。
『あれ?迷子さん?』
息が止まった。
鼓動がうるさい。
つい数秒前まで誰もいなかったはず。怖くて振り返れない。いつから居たんだ。しかし好奇心と言うのは嘘をつかないようで。
私は素直に振り返ってしまった。
──麗しい方だ。
1番初めにそう思った。
大きな花火を背に逆光を浴び、輝く絹のような長く美しい黒髪。
朝顔の刺繍が丁寧に施された可憐な着物。
裾から見える白く透明感のある肌。
整った顔に少し青みがかった宝石の様な瞳。
全てが全て美しかった。同い年くらいに見えるのに、どこか儚げな雰囲気を纏っていた。
『皆がいるのはこっちだよ』
不意に声をかけられ戸惑ってしまう。
しかしそんな事は気にしていないのか私の手を引き、歩いていく。とうの私は夢見心地だった。
だけど私、この人と会うのは初めてじゃない─?
ど
どうしてか、そう思った。あれ、この人何処かで───
『それ以上考えては駄目。』
青みがかった宝石の瞳と視線が交わる。
有無を言わさぬ視線に少し驚く。
『ごめんね、少し脅かしちゃった。でもほら、着いたよ』
知らぬ間に人気のある所へ来ていたらしい。
彼女はどうするのだろうか。
『私は行かなきゃいけない所があるから。その前に、』
先程から彼女は人の心が読めるらしい。
私の掌に何かを持たせる。
『まだ中身を見ちゃ駄目。』そう言って彼女はどこか儚げに微笑む。
『じゃあね、私の───』
きぃぃぃん。突然の耳鳴りが邪魔して聞き取れない。はやく、聞き取らなきゃ───
─目が覚めると、そこは自分の布団の上だった。
時計を見ると夜中の2時。つまり今のは夢…?
しかし現実らしい。掌に何かあった。
それはお守りの小さな巾着。中を開けると小さく折り畳まれた紙が入っていた。
それを読んでみる。
『ひかりちゃんへ。急に現れてごめんね。私の事、覚えてますか?今から丁度16年前、事故でこの世を去った貴方の双子の妹です。信じれないかもだけど、本当。
あの神社で、夏祭りの日、階段から落ちて亡くなりました。
1人にしてごめんね。いじめから助けてあげられなくてごめんね。守れなくてごめんね。
でも傍からずっと見てるよ。
あなたは1人じゃ無い。
私が傍にいるよ。
だから、私の分まで、生きて。
いじめなんかに、負けないで。
私は貴方の味方だから。
じゃあね、私のお姉ちゃん。 のぞみより。』
気付けば頬が濡れていた。
気付けば声を上げて泣いていた。
そうだ、私には妹がいるんだ。私は1人じゃ無いんだ。
どんどん涙が溢れてくる。
どうして思い出せなかったんだろう。なんで大切なものを忘れていたんだろう
ごめんね、貴方の事、今思い出したよ─
そこから、私は1人じゃ無いと思えた。
いじめてる奴らが惨めに見えた。
私は強くなった。
そうしていじめを乗りこえられた。
死にたいと思わなくなった。
そしてあれから1年。今年もあの夏がやってくる。
今度は私から声をかけよう。自分の愛しい妹に。
そして夜空に花火が上がる。
この日、この場所で。
あの日の様に。
「久しぶり、希。」
『久しぶりだね、光。』
花火が夜空を彩った。
初めて書きました!夏ってすばらすぃ…
心に響けばいいなと思ってます。良ければ書いて頂きたいです! むすびさん(京都・13さい)からの相談
とうこう日:2020年7月5日みんなの答え:0件
私がいじめを乗りこえられた理由。
それはあの夏の夜、あの場所で出会ったもう1人の“自分”に出逢えたから。
──もう耐えられない──
とうとう私の精神と体が悲鳴を上げた。止まらない自分の陰口。終わらない「遊び」という名の暴力。差別。
かれこれ半年は続いているであろういじめ。
高校に入ったらきっと楽しい生活が待っている。そう思った自分が馬鹿だった。
「どうして生きてるんだろうねw」
「とっとと死ねよ」
なんで私がこんなこと言われなきゃならないんだ。
私が何をしたって言うんだ。
─もう、死にたい─
その時私の心の何かが吹っ切れた。
そこから、もう何も感じなくなった。
味も、匂いも、感情も、寒さも、熱さも。
私は、心の拠り所が欲しかったんだと思う。
そうして学校にいかず、そこらをふらふらしている内に、どこか既視感のある神社に来ていた。
「ここに来た事ある。」
……しかし思い出せない。そんな事はつゆしらず、周りは賑わっていた。夏祭りでもあるんだろう。夕暮れなのに親子連れが沢山見えた。
聞けば花火が上がるらしい。
どうせ死ぬんだ、花火くらいみてもいいんじゃないか。何故かそう思った。
────
気が付くと神社の人気のない鳥居の前に居た。
導かれる様にして。もうそろそろ花火が上がるというのに何故だろう?ここに来た記憶が無い。どうやって来たんだろう
せっかくだしお参りでもして行こう。そう思った時だった。
『あれ?迷子さん?』
息が止まった。
鼓動がうるさい。
つい数秒前まで誰もいなかったはず。怖くて振り返れない。いつから居たんだ。しかし好奇心と言うのは嘘をつかないようで。
私は素直に振り返ってしまった。
──麗しい方だ。
1番初めにそう思った。
大きな花火を背に逆光を浴び、輝く絹のような長く美しい黒髪。
朝顔の刺繍が丁寧に施された可憐な着物。
裾から見える白く透明感のある肌。
整った顔に少し青みがかった宝石の様な瞳。
全てが全て美しかった。同い年くらいに見えるのに、どこか儚げな雰囲気を纏っていた。
『皆がいるのはこっちだよ』
不意に声をかけられ戸惑ってしまう。
しかしそんな事は気にしていないのか私の手を引き、歩いていく。とうの私は夢見心地だった。
だけど私、この人と会うのは初めてじゃない─?
ど
どうしてか、そう思った。あれ、この人何処かで───
『それ以上考えては駄目。』
青みがかった宝石の瞳と視線が交わる。
有無を言わさぬ視線に少し驚く。
『ごめんね、少し脅かしちゃった。でもほら、着いたよ』
知らぬ間に人気のある所へ来ていたらしい。
彼女はどうするのだろうか。
『私は行かなきゃいけない所があるから。その前に、』
先程から彼女は人の心が読めるらしい。
私の掌に何かを持たせる。
『まだ中身を見ちゃ駄目。』そう言って彼女はどこか儚げに微笑む。
『じゃあね、私の───』
きぃぃぃん。突然の耳鳴りが邪魔して聞き取れない。はやく、聞き取らなきゃ───
─目が覚めると、そこは自分の布団の上だった。
時計を見ると夜中の2時。つまり今のは夢…?
しかし現実らしい。掌に何かあった。
それはお守りの小さな巾着。中を開けると小さく折り畳まれた紙が入っていた。
それを読んでみる。
『ひかりちゃんへ。急に現れてごめんね。私の事、覚えてますか?今から丁度16年前、事故でこの世を去った貴方の双子の妹です。信じれないかもだけど、本当。
あの神社で、夏祭りの日、階段から落ちて亡くなりました。
1人にしてごめんね。いじめから助けてあげられなくてごめんね。守れなくてごめんね。
でも傍からずっと見てるよ。
あなたは1人じゃ無い。
私が傍にいるよ。
だから、私の分まで、生きて。
いじめなんかに、負けないで。
私は貴方の味方だから。
じゃあね、私のお姉ちゃん。 のぞみより。』
気付けば頬が濡れていた。
気付けば声を上げて泣いていた。
そうだ、私には妹がいるんだ。私は1人じゃ無いんだ。
どんどん涙が溢れてくる。
どうして思い出せなかったんだろう。なんで大切なものを忘れていたんだろう
ごめんね、貴方の事、今思い出したよ─
そこから、私は1人じゃ無いと思えた。
いじめてる奴らが惨めに見えた。
私は強くなった。
そうしていじめを乗りこえられた。
死にたいと思わなくなった。
そしてあれから1年。今年もあの夏がやってくる。
今度は私から声をかけよう。自分の愛しい妹に。
そして夜空に花火が上がる。
この日、この場所で。
あの日の様に。
「久しぶり、希。」
『久しぶりだね、光。』
花火が夜空を彩った。
初めて書きました!夏ってすばらすぃ…
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