それでも私は君が好き。
「ごめん、晴陽(はるひ)とは付き合えない」
誰もいない夕方の教室で、私は幼馴染である黒峰月斗(くろみね げっと)に告白した。
そして、見事にフラれた。
こうなることなんて、最初から分かっていた。
第一、私たちはただの幼馴染。
小さい頃からずっと一緒にいるのだ。
月斗が私に特別な感情を抱いてくれるなんて可能性は、ゼロに等しい。
さらに、校内の女子たちの心をあっという間に鷲掴みしてしまう月斗に対し、私はごくごく平凡。
そう。私たちじゃ、全然釣り合っていない。
分かってた。分かってたけど――想いを伝えずにはいられなかった。
欲があったのかもしれない。
たとえ月斗が可愛い女の子と付き合っても、私が好意を寄せていたことを忘れないでほしいと。
私をフッた月斗は、苦しそうな顔をしていた。
去り際に、彼の咳き込む音が耳に入る。
幼い頃から彼を苦しめてきた、喘息のものだった。
そうだよね、と私は自分に言い聞かせる。
私よりももっと可愛くて、そして、病弱な彼をちゃんと支えてあげられる人じゃないと。
だから、私は月斗に相応しくない。
心の中で、呪文のようにそう念じ続けた。
そうしないと、我慢できなくなりそうだった。
月斗にフラれた日から数ヶ月が経った頃。
月斗に彼女ができた。
隣のクラスの灰原明日花(はいばら あすか)さん。
モデルのように可愛くて、才色兼備なしっかり者。
それを知ったとき、私は嬉しかった。
いや、嬉しいと思い込んだ。
月斗に相応しい彼女ができてよかった。
灰原さんなら安心だ。
でも、心の奥はそんなに潔くなかった。
「どうして私じゃ駄目なの?」
ずっとそう問い続ける私もいた。
そんな私の本音に気付いたのだろうか。
ある日、灰原さんが私に話しかけてきた。
「白谷(しらたに)さん」
「何?」
近づいてくる美貌に、私は顔が強張ってしまう。
でも、灰原さんの表情は、優しかった。
「白谷さんは、月斗くんのことが好きなんでしょ?」
私はどう答えていいか迷った。
だって、相手は月斗の彼女だ。
迂闊に肯定はできない。
でも、それが杞憂だったとすぐに分かった。
「遠慮しないで。私はあなたに嫉妬しているわけじゃないから。私はただ、あなたたちに幸せになってほしいの」
そして、次の言葉で私は目を丸くした。
「月斗くんが本当に好きなのは私じゃない。白谷さんなの」
「――どういうこと?」
しばしの沈黙を破る、私の微かな声。
「月斗くんは白谷さんが好き。だからこそ、私と付き合ったの。月斗くんは体が弱いから、あなたと付き合ったら、色々と迷惑をかけてしまう。だから付き合えない。そう言ってた」
――知らなかった。
月斗がそんなことを考えていたなんて……。
「だから、あなたを諦めさせるために、私と付き合ったんだって。でも、それじゃ駄目だと思うの。遠慮してちゃどっちも幸せになれない。このままじゃ駄目だよ」
目が熱い。
その熱が頬を伝う。
気付けば涙が溢れていた。
「――私、月斗と会って話したい」
「行ってらっしゃい。私、さっき月斗くんをフッたんだ。きっとまだ教室にいると思うよ」
私は涙を拭って走り出す。
一刻も早く月斗と会いたかった。
教室に着くと、華奢なシルエットが見える。
月斗だ。
「月斗!」
私は月斗のところに駆け寄る。
月斗は発作を起こしていた。
私が灰原さんと話している間に発作が出たのだろう。
「はる、ひ……」
月斗が弱々しい声で私を呼ぶ。
その口に吸入器を近づけてしばらくすると、月斗の発作は落ち着いた。
「月斗」
私は月斗の瞳を見つめる。
目が腫れているかもしれないが、そんなことは気にしていられない。
「もう一回言うね。私、月斗が好き」
すると、月斗が口を開いた。
「ごめん、俺は――」
「ねえ、遠慮とかしないで。私、月斗と一緒にいたいの。病弱とか関係ない。私は、体が弱くても頑張って生きてる月斗が好きだから」
「でも、俺……」
ああ、なんと言えば伝わるのだろう。
私は月斗が好き。
月斗のために生きたい。
この気持ちよ、届け――!
「灰原さん、言ってたよ。これじゃあ誰も幸せになれないって。私は、月斗と一緒に生きたい。月斗のために生きたい。」
月斗の本当の気持ちを、教えてよ――。
「月斗は、本当はどうしたいの?」
「俺、は……」
月斗が躊躇いがちに言った。
「俺は、晴陽が好き。体が弱いから、俺じゃすごく迷惑かけると思う。だけど――」
その声色が、真剣なものに変わる。
「こんな俺でよければ、付き合ってくれますか?」
私が待っていた言葉。
一度は止まった涙が再び溢れ出す。
それでも、私は泣きながら笑みを作った。
「もちろん!」 栗虎さん(福島・15さい)からの相談
とうこう日:2023年5月30日みんなの答え:4件
誰もいない夕方の教室で、私は幼馴染である黒峰月斗(くろみね げっと)に告白した。
そして、見事にフラれた。
こうなることなんて、最初から分かっていた。
第一、私たちはただの幼馴染。
小さい頃からずっと一緒にいるのだ。
月斗が私に特別な感情を抱いてくれるなんて可能性は、ゼロに等しい。
さらに、校内の女子たちの心をあっという間に鷲掴みしてしまう月斗に対し、私はごくごく平凡。
そう。私たちじゃ、全然釣り合っていない。
分かってた。分かってたけど――想いを伝えずにはいられなかった。
欲があったのかもしれない。
たとえ月斗が可愛い女の子と付き合っても、私が好意を寄せていたことを忘れないでほしいと。
私をフッた月斗は、苦しそうな顔をしていた。
去り際に、彼の咳き込む音が耳に入る。
幼い頃から彼を苦しめてきた、喘息のものだった。
そうだよね、と私は自分に言い聞かせる。
私よりももっと可愛くて、そして、病弱な彼をちゃんと支えてあげられる人じゃないと。
だから、私は月斗に相応しくない。
心の中で、呪文のようにそう念じ続けた。
そうしないと、我慢できなくなりそうだった。
月斗にフラれた日から数ヶ月が経った頃。
月斗に彼女ができた。
隣のクラスの灰原明日花(はいばら あすか)さん。
モデルのように可愛くて、才色兼備なしっかり者。
それを知ったとき、私は嬉しかった。
いや、嬉しいと思い込んだ。
月斗に相応しい彼女ができてよかった。
灰原さんなら安心だ。
でも、心の奥はそんなに潔くなかった。
「どうして私じゃ駄目なの?」
ずっとそう問い続ける私もいた。
そんな私の本音に気付いたのだろうか。
ある日、灰原さんが私に話しかけてきた。
「白谷(しらたに)さん」
「何?」
近づいてくる美貌に、私は顔が強張ってしまう。
でも、灰原さんの表情は、優しかった。
「白谷さんは、月斗くんのことが好きなんでしょ?」
私はどう答えていいか迷った。
だって、相手は月斗の彼女だ。
迂闊に肯定はできない。
でも、それが杞憂だったとすぐに分かった。
「遠慮しないで。私はあなたに嫉妬しているわけじゃないから。私はただ、あなたたちに幸せになってほしいの」
そして、次の言葉で私は目を丸くした。
「月斗くんが本当に好きなのは私じゃない。白谷さんなの」
「――どういうこと?」
しばしの沈黙を破る、私の微かな声。
「月斗くんは白谷さんが好き。だからこそ、私と付き合ったの。月斗くんは体が弱いから、あなたと付き合ったら、色々と迷惑をかけてしまう。だから付き合えない。そう言ってた」
――知らなかった。
月斗がそんなことを考えていたなんて……。
「だから、あなたを諦めさせるために、私と付き合ったんだって。でも、それじゃ駄目だと思うの。遠慮してちゃどっちも幸せになれない。このままじゃ駄目だよ」
目が熱い。
その熱が頬を伝う。
気付けば涙が溢れていた。
「――私、月斗と会って話したい」
「行ってらっしゃい。私、さっき月斗くんをフッたんだ。きっとまだ教室にいると思うよ」
私は涙を拭って走り出す。
一刻も早く月斗と会いたかった。
教室に着くと、華奢なシルエットが見える。
月斗だ。
「月斗!」
私は月斗のところに駆け寄る。
月斗は発作を起こしていた。
私が灰原さんと話している間に発作が出たのだろう。
「はる、ひ……」
月斗が弱々しい声で私を呼ぶ。
その口に吸入器を近づけてしばらくすると、月斗の発作は落ち着いた。
「月斗」
私は月斗の瞳を見つめる。
目が腫れているかもしれないが、そんなことは気にしていられない。
「もう一回言うね。私、月斗が好き」
すると、月斗が口を開いた。
「ごめん、俺は――」
「ねえ、遠慮とかしないで。私、月斗と一緒にいたいの。病弱とか関係ない。私は、体が弱くても頑張って生きてる月斗が好きだから」
「でも、俺……」
ああ、なんと言えば伝わるのだろう。
私は月斗が好き。
月斗のために生きたい。
この気持ちよ、届け――!
「灰原さん、言ってたよ。これじゃあ誰も幸せになれないって。私は、月斗と一緒に生きたい。月斗のために生きたい。」
月斗の本当の気持ちを、教えてよ――。
「月斗は、本当はどうしたいの?」
「俺、は……」
月斗が躊躇いがちに言った。
「俺は、晴陽が好き。体が弱いから、俺じゃすごく迷惑かけると思う。だけど――」
その声色が、真剣なものに変わる。
「こんな俺でよければ、付き合ってくれますか?」
私が待っていた言葉。
一度は止まった涙が再び溢れ出す。
それでも、私は泣きながら笑みを作った。
「もちろん!」 栗虎さん(福島・15さい)からの相談
とうこう日:2023年5月30日みんなの答え:4件
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-
泣ける… 天才、!
てか月斗くん優しすぎ…///
晴陽ちゃんの一途なところ、好き!
あと、名前の付け方やばい
白谷さんと灰原さんと黒峰さん
色のグラデーションできててすご!
あと、晴陽と月斗の太陽と月の対比も…
とにかく全てが天才的…! ほのかさん(福岡・14さい)からの答え
とうこう日:2023年7月10日 -
泣く 月斗くんみたいな儚い感じの男の子いいよね((え、さっき別の方の小説の男子も推してませんでした?
まあまあそれはさておき、感動でした!月斗くんの晴陽ちゃんを想う気持ちが素敵すぎて泣けます!二人には永遠に幸せでいてほしいなぁ。
また書いてください! 小説家になりたい人さん(選択なし・16さい)からの答え
とうこう日:2023年7月9日 -
完璧な悲喜劇...! Hi(^^♪My name's Uno(*´・ч・`*)
☆*: .。. o本題o .。.:*☆
完璧な悲喜劇...!
一瞬、プロの作家サンが書いたお話かと思った!!
15歳でこんなに素晴らしい作品を書けるなんて、凄いね☆彡
Have a nice day(*^^)v
Thanks for reading(*'ω'*)See ya(^^♪ 兎乃*うの*#「くるみ割り人形」聴き中♪さん(岐阜・12さい)からの答え
とうこう日:2023年7月9日 -
すごぃっ やほぅ
元菜亜華の
雪音だよぉ!
よろっ!
ーーーーー
すごぃっ.
最初から
ふられちゃって
ぇっ?
て思ったけど、
最後は
付き合えて
よかったぁっ.
めたぃぃ
ぉはなし
だったっ.
ーーーーー
じゃ、またね〜っ( ´∀`)/~~
雪音#ゆきね#元菜亜華さん(選択なし・11さい)からの答え
とうこう日:2023年7月9日
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- 【「相談するとき」「相談の答え(回答)を書くとき」のルール】をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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- 「短編小説投稿について」をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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- キッズなんでも相談では、投稿されたユーザーの
個人 を判断 することが出来ないため、削除依頼 には対応することは出来ません。投稿しても問題ない内容かよく確認してください。
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