私たちのトライアングル
「ふーっ・・・・・・」
大きく息を吸い込み、息を吐く。ガタガタと震える手を、誤魔化しながら前を向く。そして、言った。
「好きです」
何か言っているのか、口を動かす彼。何で、聞こえないの──
「はっ!」
リアルすぎる、今日の夢。私が告白なんて、ありえないはずなのにな。夢の続きは知りたくないはずなのに、気になる。何だか浮かない気分でのろのろと階段を降りた。
もう7時か。いつも通りある、お弁当。そして、置き手紙。
『麻依 燃えるゴミ出しておいて』
いちいち書かなくてもわかってるのに。名前まで書かなくても。私はゴミをまとめて家を出た。
──────────────────
「おはよ!」
びくり、と肩を震わせる彼女。そんなに驚かなくてもいいのにな。
「お、おはよう、李空ちゃん・・・・・・」
「もっと元気出しなよ、麻依。ほら、笑顔で! 麻依は笑顔が可愛いのにさ」
私なんか可愛くないよ、と言いながらリュックを置く。教室には、私たちしかいない。だって、私が一番に着いたから。
「李空ちゃん、その、高音くん、どうだったの」
「もしかしたら、いけるかもしれない!! 同じ委員会だし、出席番号近いし! ていうか、麻依、恋バナ好きだったっけ?」
彼女とは小学校からの付き合いで、もう9年も経つ。だけど、李空が恋バナをしようとしたことなんてなかったはず。
「好き、ではないけど・・・・・・。親友の恋は、応援、したいし」
なんかぎこちないなぁ、と思ったものの、つっこまなかった。
「そんなこと言うんだったら、李空の恋バナも聞かせてよね」
──────────────────
「そんなこと言うんだったら、李空の恋バナも聞かせてよね」
李空ちゃんは笑ってそう言った。
「私、恋愛なんか、したことないし」
ごめんね、嘘だよ。・・・・・・なんて言えたらな。私の好きな人は──
「あ・・・・・・!」
「どうしたの、李空ちゃん?」
彼女が指した方向を見ると、高音くんがいた。
「あたし、高音くんに、告白しようと思ってるの」
「え?」
こく、はく。確かにそう言った。雷にでも打たれた気分。あの、顔もいい、性格もいい、かっこいい、めちゃくちゃモテる高音晶くん。李空ちゃんは、そんな彼に追いつこうと頑張っていて。私も見習わないとな・・・・・・
「頑張ってね、李空ちゃん」
どこかぎこちなく、気持ちのこもっていないような言葉になってしまった。
──────────────────
落ち着け、自分。落ち着け、あたし。あの反応からすると、麻依も高音くんのことが好きなんだろうな。自分の気持ちを押し殺してまで、あたしを応援してくれた。だから、麻依の分も背負っていかないと。
「高音くん、あたし──」
一歩踏み出して。
「ずっと高音くんのことが、好きでした」
振られても、いいよ。そしたら、麻依の番。
「ありがとう。でも、ごめん。俺、青羽さんのことが好きなんだ」
「そっか。わざわざごめんね。ありがと」
青羽麻依。高音くんは、麻依のことが好きだったんだ。これで、麻依の恋は叶う。嬉しいような、悲しいような。よく分からない涙が込み上げてきて、急いで去った。
──────────────────
俺が青羽さんを好きになったのは、入学してまもなくのことだった。
通学路を歩いていると、一匹の猫がいた。ダンボールに入れられて、放置。可哀想だったが、家族がアレルギーなので飼ってあげられない。
「大丈夫?」
そう声をかけていたのが──青羽さんだった。ペットボトルのふたを開けて、水をあげる彼女。ごめんね、うちでは飼えないんだ。彼女も同じくそう言っていたが、代わりに毎日毎日世話をしにきていた。
彼女とは、運良く同じクラス。同じ委員会にも入れず、出席番号も全然違った。だが、彼女の友達である高城さんと出席番号が前後なおかげか、彼女は近くによく来たのだ。
いけるんじゃないか、もしかすると、両想い・・・・・・。とか、自惚れたのがいけなかった。彼女を呼び出したものの、返事は「ごめんなさい」の一言。悲しかったけれど、彼女が幸せでいられるならそれでいいと思った。
──────────────────
言えないじゃん。好きです、なんて。欲張りかもしれない。でも、叶えたい。でも、叶わない。
「あたしさ、好きな人ができたの」
李空ちゃんのことが好き、なんて。好きな人がいる彼女に言えるわけがない。
-End-
〈補足〉
高音晶(たかねあきら)
青羽麻依(あおばまい)
高城李空(たかぎりく)
感想やアドバイスお願いします! 晴南 *ハルナ* #JC2さん(奈良・13さい)からの相談
とうこう日:2023年7月13日みんなの答え:1件
大きく息を吸い込み、息を吐く。ガタガタと震える手を、誤魔化しながら前を向く。そして、言った。
「好きです」
何か言っているのか、口を動かす彼。何で、聞こえないの──
「はっ!」
リアルすぎる、今日の夢。私が告白なんて、ありえないはずなのにな。夢の続きは知りたくないはずなのに、気になる。何だか浮かない気分でのろのろと階段を降りた。
もう7時か。いつも通りある、お弁当。そして、置き手紙。
『麻依 燃えるゴミ出しておいて』
いちいち書かなくてもわかってるのに。名前まで書かなくても。私はゴミをまとめて家を出た。
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「おはよ!」
びくり、と肩を震わせる彼女。そんなに驚かなくてもいいのにな。
「お、おはよう、李空ちゃん・・・・・・」
「もっと元気出しなよ、麻依。ほら、笑顔で! 麻依は笑顔が可愛いのにさ」
私なんか可愛くないよ、と言いながらリュックを置く。教室には、私たちしかいない。だって、私が一番に着いたから。
「李空ちゃん、その、高音くん、どうだったの」
「もしかしたら、いけるかもしれない!! 同じ委員会だし、出席番号近いし! ていうか、麻依、恋バナ好きだったっけ?」
彼女とは小学校からの付き合いで、もう9年も経つ。だけど、李空が恋バナをしようとしたことなんてなかったはず。
「好き、ではないけど・・・・・・。親友の恋は、応援、したいし」
なんかぎこちないなぁ、と思ったものの、つっこまなかった。
「そんなこと言うんだったら、李空の恋バナも聞かせてよね」
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「そんなこと言うんだったら、李空の恋バナも聞かせてよね」
李空ちゃんは笑ってそう言った。
「私、恋愛なんか、したことないし」
ごめんね、嘘だよ。・・・・・・なんて言えたらな。私の好きな人は──
「あ・・・・・・!」
「どうしたの、李空ちゃん?」
彼女が指した方向を見ると、高音くんがいた。
「あたし、高音くんに、告白しようと思ってるの」
「え?」
こく、はく。確かにそう言った。雷にでも打たれた気分。あの、顔もいい、性格もいい、かっこいい、めちゃくちゃモテる高音晶くん。李空ちゃんは、そんな彼に追いつこうと頑張っていて。私も見習わないとな・・・・・・
「頑張ってね、李空ちゃん」
どこかぎこちなく、気持ちのこもっていないような言葉になってしまった。
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落ち着け、自分。落ち着け、あたし。あの反応からすると、麻依も高音くんのことが好きなんだろうな。自分の気持ちを押し殺してまで、あたしを応援してくれた。だから、麻依の分も背負っていかないと。
「高音くん、あたし──」
一歩踏み出して。
「ずっと高音くんのことが、好きでした」
振られても、いいよ。そしたら、麻依の番。
「ありがとう。でも、ごめん。俺、青羽さんのことが好きなんだ」
「そっか。わざわざごめんね。ありがと」
青羽麻依。高音くんは、麻依のことが好きだったんだ。これで、麻依の恋は叶う。嬉しいような、悲しいような。よく分からない涙が込み上げてきて、急いで去った。
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俺が青羽さんを好きになったのは、入学してまもなくのことだった。
通学路を歩いていると、一匹の猫がいた。ダンボールに入れられて、放置。可哀想だったが、家族がアレルギーなので飼ってあげられない。
「大丈夫?」
そう声をかけていたのが──青羽さんだった。ペットボトルのふたを開けて、水をあげる彼女。ごめんね、うちでは飼えないんだ。彼女も同じくそう言っていたが、代わりに毎日毎日世話をしにきていた。
彼女とは、運良く同じクラス。同じ委員会にも入れず、出席番号も全然違った。だが、彼女の友達である高城さんと出席番号が前後なおかげか、彼女は近くによく来たのだ。
いけるんじゃないか、もしかすると、両想い・・・・・・。とか、自惚れたのがいけなかった。彼女を呼び出したものの、返事は「ごめんなさい」の一言。悲しかったけれど、彼女が幸せでいられるならそれでいいと思った。
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言えないじゃん。好きです、なんて。欲張りかもしれない。でも、叶えたい。でも、叶わない。
「あたしさ、好きな人ができたの」
李空ちゃんのことが好き、なんて。好きな人がいる彼女に言えるわけがない。
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高音晶(たかねあきら)
青羽麻依(あおばまい)
高城李空(たかぎりく)
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とうこう日:2023年7月13日みんなの答え:1件
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すごく面白かった! Hi(^^♪My name's Marin(*´・ч・`*)
☆*: .。. o本題o .。.:*☆
すごく面白かった!
Have a nice day(*^^)v
Thanks for reading(*'ω'*)See ya(^^♪ 舞凜*まりん*#元兎乃#9月1日改名!さん(岐阜・12さい)からの答え
とうこう日:2023年8月21日
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