光のなかに
【わたし(海子)は朝起きて、海に行き朝焼けを見に行くことにした。一人だと嫌だから、幼馴染である良夜(りょうや)を起こしに行った】
わたしはそーっと、鍵の隠し場所である_鍵の隠し場所は小さい時に教えてもらったのだ_自転車のカゴの裏側から鍵をとり、裏口を開けて中に入った。多分、おじさんは今もう漁に行っていて、この家にはおばさんと良夜だけだ。
わたしは二階の良夜の部屋に忍足で入り込んで、そっと良夜のほおをつついた。眠りの浅い良夜は、結構すぐに反応してぱちっと瞼を開いて、綺麗な桑染色の目をあらわにさせた。
「うん、なんだ海子か。寝込み襲いに来たのか?」
「そんなわけないでしょ」
寝起きのくせによく頭から冗談が出るなと思いつつ、面白くてわたしは笑った。
「なんで来たんだ?」
「ねえ、朝焼け見に行こうよ」
わたしは返事になってないだろうなと思いつつも、目的をはっきり言った。良夜はやっぱりわたしの唐突な言葉に、澄んだ目を大きく開いて、首を少し傾げた。
「ほら、ちょうどいい瞬間が終わっちゃうよ」
「やっぱり名前通り海が大好きなんだな。海の子だし」
「いいから早く」
良夜は「わかったわかった」とうざったそうに返事しつつも、もう着替えを始めている。そうやってすぐに人のために動いてくれるのは、良夜のいいところだと思う。流石に着替えを見る趣味などなかったから、わたしは黙って廊下に出て待った。
すぐ準備を終えた良夜に、わたしは「ほんとごめんね」と呟きつつも、悪いけどあまり申し訳ないとは思っていなかった。今日の朝焼けはきっと綺麗だろうなと、それだけしか考えていなかった。
「ねえ、もう太陽出始めちゃってるよ。もうちょっと速く走れるでしょ、陸上部なんだから」
「朝からそんな速く走れる海子の方が陸上部入れそうだけど」
そんなやりとりをしている間にも、太陽はもう遠慮なく出てしまう。本当に速く走れないのだろうかと思ったけれど、これ以上急かすのはなんだか流石に申し訳ない気がして、わたしはもう何も言わずスピードを上げた。
後ろで「おい、なんで速くすんだよ」という声がしたが、もちろん無視した。目の前に海が広がっていれば、何も周りが見えなくなる。それは悪いくせだというのはわかっているけれど、やっぱり治る気はしなかった。
やっと浜辺に着いた私たちは、急いで、いつもの場所に座り込んで、準備をした。そろそろ太陽の顔が少し見える。わたしの目がいつも以上に輝いていたのは、後で良夜が教えてくれて、初めて知った。それくらい楽しみだったのだ。
東の空が、急にすごく明るくなった。途端に、海も浜辺も家並みも、全てが朝焼け色、いや、わたしたちの影以外のもの全てがこの太陽の色に染め上げられた。良夜もこの光景に圧倒されているのだろう。何も言わなかった。やっぱり、海と空、そして時間は繋がっているのだ。そう感じられる瞬間だった。
一分ほどその状態で固まって、それからやっと現実世界に引き戻されたわたしは、隣で良夜はぼうっとわたしを見ていた。なんだろうとわたしも見返すと、我に返ったように良夜が一瞬はっと息を吸った。
「どうしたの」
聞いても良夜は少し俯いて、喋らなかった。もう一度尋ねようとした時にやっと口を開けたくらい、その間ずっと黙っていた。
「なんか、海子が光って見えた。なんだろう、綺麗だった」
どういうことかわからなかったけど、良夜もわからないのだろう。なんだかわたしたち二人とも不思議で不思議でたまらな
い気持ちになった。だけど、何だか胸がきゅうと締めつけられたような、それでいて心地いい、そんな感覚になった。
なぜだろう。そんなこと考える暇もなく、なんだか眩しくて、わたしたちは帰ることにした。
「なんか、あっさり終わったね」
うん、とわたしは軽く返事をする。さっきの浮ついた心がなんだか言葉に滲み出てしまいそうだった。わたしたちは結局、帰り道も何も喋り出すことなく、いつも通り学校に行った。
まさかあれが最期になるなんて、誰も思いもしなかった。良夜はその三日後トラックに轢かれた。
今では知っている。あれが、恋だということも。その時伝えておけばよかった。
あとで知ったことだけど、良夜の部屋の机にはわたしあての手紙があったらしい。そこにはこう書いてあったとか。
「好き」
それを知ったとたん、わたしは涙が溢れた。そして、後悔してもどかしくて、苦しかった。
ああ、戻れるなら、君に伝えたい。君がわたしに伝えたかったように。
ちゃんとこの口で「好き」と。
イチリンソウさん(選択なし・12さい)からの相談
とうこう日:2023年12月3日みんなの答え:2件
わたしはそーっと、鍵の隠し場所である_鍵の隠し場所は小さい時に教えてもらったのだ_自転車のカゴの裏側から鍵をとり、裏口を開けて中に入った。多分、おじさんは今もう漁に行っていて、この家にはおばさんと良夜だけだ。
わたしは二階の良夜の部屋に忍足で入り込んで、そっと良夜のほおをつついた。眠りの浅い良夜は、結構すぐに反応してぱちっと瞼を開いて、綺麗な桑染色の目をあらわにさせた。
「うん、なんだ海子か。寝込み襲いに来たのか?」
「そんなわけないでしょ」
寝起きのくせによく頭から冗談が出るなと思いつつ、面白くてわたしは笑った。
「なんで来たんだ?」
「ねえ、朝焼け見に行こうよ」
わたしは返事になってないだろうなと思いつつも、目的をはっきり言った。良夜はやっぱりわたしの唐突な言葉に、澄んだ目を大きく開いて、首を少し傾げた。
「ほら、ちょうどいい瞬間が終わっちゃうよ」
「やっぱり名前通り海が大好きなんだな。海の子だし」
「いいから早く」
良夜は「わかったわかった」とうざったそうに返事しつつも、もう着替えを始めている。そうやってすぐに人のために動いてくれるのは、良夜のいいところだと思う。流石に着替えを見る趣味などなかったから、わたしは黙って廊下に出て待った。
すぐ準備を終えた良夜に、わたしは「ほんとごめんね」と呟きつつも、悪いけどあまり申し訳ないとは思っていなかった。今日の朝焼けはきっと綺麗だろうなと、それだけしか考えていなかった。
「ねえ、もう太陽出始めちゃってるよ。もうちょっと速く走れるでしょ、陸上部なんだから」
「朝からそんな速く走れる海子の方が陸上部入れそうだけど」
そんなやりとりをしている間にも、太陽はもう遠慮なく出てしまう。本当に速く走れないのだろうかと思ったけれど、これ以上急かすのはなんだか流石に申し訳ない気がして、わたしはもう何も言わずスピードを上げた。
後ろで「おい、なんで速くすんだよ」という声がしたが、もちろん無視した。目の前に海が広がっていれば、何も周りが見えなくなる。それは悪いくせだというのはわかっているけれど、やっぱり治る気はしなかった。
やっと浜辺に着いた私たちは、急いで、いつもの場所に座り込んで、準備をした。そろそろ太陽の顔が少し見える。わたしの目がいつも以上に輝いていたのは、後で良夜が教えてくれて、初めて知った。それくらい楽しみだったのだ。
東の空が、急にすごく明るくなった。途端に、海も浜辺も家並みも、全てが朝焼け色、いや、わたしたちの影以外のもの全てがこの太陽の色に染め上げられた。良夜もこの光景に圧倒されているのだろう。何も言わなかった。やっぱり、海と空、そして時間は繋がっているのだ。そう感じられる瞬間だった。
一分ほどその状態で固まって、それからやっと現実世界に引き戻されたわたしは、隣で良夜はぼうっとわたしを見ていた。なんだろうとわたしも見返すと、我に返ったように良夜が一瞬はっと息を吸った。
「どうしたの」
聞いても良夜は少し俯いて、喋らなかった。もう一度尋ねようとした時にやっと口を開けたくらい、その間ずっと黙っていた。
「なんか、海子が光って見えた。なんだろう、綺麗だった」
どういうことかわからなかったけど、良夜もわからないのだろう。なんだかわたしたち二人とも不思議で不思議でたまらな
い気持ちになった。だけど、何だか胸がきゅうと締めつけられたような、それでいて心地いい、そんな感覚になった。
なぜだろう。そんなこと考える暇もなく、なんだか眩しくて、わたしたちは帰ることにした。
「なんか、あっさり終わったね」
うん、とわたしは軽く返事をする。さっきの浮ついた心がなんだか言葉に滲み出てしまいそうだった。わたしたちは結局、帰り道も何も喋り出すことなく、いつも通り学校に行った。
まさかあれが最期になるなんて、誰も思いもしなかった。良夜はその三日後トラックに轢かれた。
今では知っている。あれが、恋だということも。その時伝えておけばよかった。
あとで知ったことだけど、良夜の部屋の机にはわたしあての手紙があったらしい。そこにはこう書いてあったとか。
「好き」
それを知ったとたん、わたしは涙が溢れた。そして、後悔してもどかしくて、苦しかった。
ああ、戻れるなら、君に伝えたい。君がわたしに伝えたかったように。
ちゃんとこの口で「好き」と。
イチリンソウさん(選択なし・12さい)からの相談
とうこう日:2023年12月3日みんなの答え:2件
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とても上手──! こんちゃっ(^^♪花凜だっちゃヾ(*。・ ω < 。*) ノ゙
最近、改名しすぎて過去のニクネが覚えきれなくなってきたから(?)、去年10月のニクネに戻したの。(4日前の朝まで、「るにゃ#元來心・愛暖・花凜」だった。)
☆*: .。. o本題o .。.:*☆
とても上手──!
読んでくれてありがとう(*'ω'*)ばいちゃっ(^^♪ 花凜*かりん*#元澄実#多忙...さん(岐阜・12さい)からの答え
とうこう日:2024年2月12日 -
悲しすぎるぅぅ…… (*o_ _)o*))
ど-もですっ♪♪
@元.歌夜,瀬里菜の紫羽だょ☆+*
2/11(日)から,バレンタイン&誕生日限定ニクネ,
*紫羽*に改名してますっ♪☆*
2/18(日)は,紫羽の誕生日♪♪
11歳になります☆
(* `・∀・´*)ノヨロシク.。○o〇
*******************
悲しすぎる........
最後の終わり方も心にグッと来たょ((語彙力
とにかく,めっちゃ,上手すぎる~~~☆*♪
読んでくれてありがとう(人・∪・*)☆
またキズなんで会おうねっ♪
(*>ω<)ノ゙♪バイバイ(*・・)β 紫羽 | Siu @元.歌夜,瀬里菜さん(千葉・10さい)からの答え
とうこう日:2024年2月12日
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