感情【短編小説】
「は?ふざけんな!」
ドンッ!
親から叩かれた。これは毎日のことだ。
親からの虐待。学校でのいじめ。
耐えられなかった。なんで私がこんな目に遭わなきゃいけないのか。
先生に言っても信じてくれない。もう、死んでしまおうか。
そう思う日々だった。
そんなことを考えながら、外の冷たい地面で横になり、眠りについた。
眩しい。
目を開けると、暑い日差しが私を照らしつけていた。
その時、心の中で何かが切れた気がした。
「あの番組面白いよね!」
「そうだよなぁ。」
母と父の声が聞こえる。朝食の時間か。
私は玄関のドアを開けた。
ガチャッと、ドアが開く音と共に両親がこっちを振り向いて言った。
「お前家に入るな。お前なんて死んじまえ。」
「あんたなんて産まなきゃ良かった。頭は悪いし、見た目もブス。ゴミでも食べときな。」
私はなんとも思わなかった。ただ、袋に入れられた賞味期限切れのリンゴを手にし、口にした。
「やっぱあいつ死ななくて良いわ。良いゴミ回収機だしさ。ハハハッ!」
父親が大声で言った。
その言葉を耳にした私は、汚れた制服に着替え、ボロボロのかばんを手にし、無言で家を出た。
外は人が暑い暑いと言いながらゆっくりと歩いていた。
そんな暑さに弱い人たちの中、私はスタスタと歩いた。いつもなら、重い足取りで行くのに。
「あ、あの…!」
誰かに話しかけられた。
振り向いてみると、いつも私がいじめられている風景を黙って見ていた女子がいた。
「い、いつも何も言えなくてごめんなさい…。本当にごめんなさい…。何もできなくて…。」
私は口を開いた。
「なんでそんなこと思うの。別に苦しくなんかない。辛くなんかない。悲しくなんかない。これが私の普通の生活。」
その言葉を吐き出すと、私はまた前を向き、炎天下の中を歩き出した。
「で、でもいつも泣いてた…。」
そんな女子の言葉なんか気にせず、私はひたすら歩いた。
自分でも不思議だ。こんなにも生活が楽だったなんて。いつも死にたいと思ってた自分がバカバカしい。
さっさと学校へ行こう。
…楽になったあの日から、もう一年も経つのか。
私は少しひんやりとした地面に寝転がっている。そして、どんよりとした灰色の空を見上げていた。
早いな。楽になったら、一年がたった一日のよう。
でも、少し生活が変わってきた。
みんなが私を怖がってるような気がしてきたから。なぜだろう。
「石川さん…?」
どこからか、私の苗字を言う声がした。
立ち上がって、周りを見渡すと、あの時話しかけてきた女子が塀の小さな穴から顔を覗かせていた。
「き、聞きたいことがあるんです…。ちょ、ちょっと来てもらっていいですか…?」
私に聞きたいことってなんだろう。
家の敷地の外へ来た。
「あの…悲しくないんですか?」
「え。」
急なことに、私は思わず声を出してしまった。
「な、なんかすみません…。一年前ぐらいは泣いてたのに、もうずっと泣いてなくて…。それから不思議に思って失礼ながら、あなたをずっと観察していました…。」
女子は舌を剥きながら、小さい声で言った。
「で、でもそれでわかったことがあるんですよ。」
女子は私の方を見て、さっきより大きい声で言った。
「石川さんに感情がなくなった、ということです…。」
すると、また女子は下を向いてしまった。
「石川さんは泣いたりせず、笑ったりせず、驚きもせず、憎しみで溢れた顔もしなくなりました。今は、無表情です。」
言われてみれば、そうだ。
「良いんですか?感情がなくて…。」
私は答えた。
「楽になれたから、良いんです。」
そう言った途端、心の中で何かが繋がった気がした。
そしたら、女子はだんだんと目を見開いた。
「えっ。な、泣いてますよ…?石川さん…。」
え?
その言葉に私は驚いた。
あれ?あれ?本当だ。私、泣いている。なんで?なんで?どうして泣いてるの?
「悲しかったんですね…。感情はあったんですね…。なくなったんじゃなくて、心の底に閉ざしていたんですね…。」
なぜか、女子まで泣いた。
「ごめんなさい。私、赤の他人なのに。観察なんかして。ごめんなさい。感情がないなんて言って。」
「え、いや、その…。な、泣かないでください…。」
私は戸惑った。
それでも女子は泣いていた。しばらく経ったあと、女子は私を見た。
「私、藤田香澄って言います。石川さん、今まで何もできなくてごめんなさい。今度は絶対、あんないじめから石川さんを助け出してみせます!」
「あ、ありがとう…。」
そんな会話をしていた私たちの上にある空には、太陽が顔を覗かせていた。
どうですか?
感想待ってます! ゆ〜ぴんさん(選択なし・12さい)からの相談
とうこう日:2020年8月23日みんなの答え:3件
ドンッ!
親から叩かれた。これは毎日のことだ。
親からの虐待。学校でのいじめ。
耐えられなかった。なんで私がこんな目に遭わなきゃいけないのか。
先生に言っても信じてくれない。もう、死んでしまおうか。
そう思う日々だった。
そんなことを考えながら、外の冷たい地面で横になり、眠りについた。
眩しい。
目を開けると、暑い日差しが私を照らしつけていた。
その時、心の中で何かが切れた気がした。
「あの番組面白いよね!」
「そうだよなぁ。」
母と父の声が聞こえる。朝食の時間か。
私は玄関のドアを開けた。
ガチャッと、ドアが開く音と共に両親がこっちを振り向いて言った。
「お前家に入るな。お前なんて死んじまえ。」
「あんたなんて産まなきゃ良かった。頭は悪いし、見た目もブス。ゴミでも食べときな。」
私はなんとも思わなかった。ただ、袋に入れられた賞味期限切れのリンゴを手にし、口にした。
「やっぱあいつ死ななくて良いわ。良いゴミ回収機だしさ。ハハハッ!」
父親が大声で言った。
その言葉を耳にした私は、汚れた制服に着替え、ボロボロのかばんを手にし、無言で家を出た。
外は人が暑い暑いと言いながらゆっくりと歩いていた。
そんな暑さに弱い人たちの中、私はスタスタと歩いた。いつもなら、重い足取りで行くのに。
「あ、あの…!」
誰かに話しかけられた。
振り向いてみると、いつも私がいじめられている風景を黙って見ていた女子がいた。
「い、いつも何も言えなくてごめんなさい…。本当にごめんなさい…。何もできなくて…。」
私は口を開いた。
「なんでそんなこと思うの。別に苦しくなんかない。辛くなんかない。悲しくなんかない。これが私の普通の生活。」
その言葉を吐き出すと、私はまた前を向き、炎天下の中を歩き出した。
「で、でもいつも泣いてた…。」
そんな女子の言葉なんか気にせず、私はひたすら歩いた。
自分でも不思議だ。こんなにも生活が楽だったなんて。いつも死にたいと思ってた自分がバカバカしい。
さっさと学校へ行こう。
…楽になったあの日から、もう一年も経つのか。
私は少しひんやりとした地面に寝転がっている。そして、どんよりとした灰色の空を見上げていた。
早いな。楽になったら、一年がたった一日のよう。
でも、少し生活が変わってきた。
みんなが私を怖がってるような気がしてきたから。なぜだろう。
「石川さん…?」
どこからか、私の苗字を言う声がした。
立ち上がって、周りを見渡すと、あの時話しかけてきた女子が塀の小さな穴から顔を覗かせていた。
「き、聞きたいことがあるんです…。ちょ、ちょっと来てもらっていいですか…?」
私に聞きたいことってなんだろう。
家の敷地の外へ来た。
「あの…悲しくないんですか?」
「え。」
急なことに、私は思わず声を出してしまった。
「な、なんかすみません…。一年前ぐらいは泣いてたのに、もうずっと泣いてなくて…。それから不思議に思って失礼ながら、あなたをずっと観察していました…。」
女子は舌を剥きながら、小さい声で言った。
「で、でもそれでわかったことがあるんですよ。」
女子は私の方を見て、さっきより大きい声で言った。
「石川さんに感情がなくなった、ということです…。」
すると、また女子は下を向いてしまった。
「石川さんは泣いたりせず、笑ったりせず、驚きもせず、憎しみで溢れた顔もしなくなりました。今は、無表情です。」
言われてみれば、そうだ。
「良いんですか?感情がなくて…。」
私は答えた。
「楽になれたから、良いんです。」
そう言った途端、心の中で何かが繋がった気がした。
そしたら、女子はだんだんと目を見開いた。
「えっ。な、泣いてますよ…?石川さん…。」
え?
その言葉に私は驚いた。
あれ?あれ?本当だ。私、泣いている。なんで?なんで?どうして泣いてるの?
「悲しかったんですね…。感情はあったんですね…。なくなったんじゃなくて、心の底に閉ざしていたんですね…。」
なぜか、女子まで泣いた。
「ごめんなさい。私、赤の他人なのに。観察なんかして。ごめんなさい。感情がないなんて言って。」
「え、いや、その…。な、泣かないでください…。」
私は戸惑った。
それでも女子は泣いていた。しばらく経ったあと、女子は私を見た。
「私、藤田香澄って言います。石川さん、今まで何もできなくてごめんなさい。今度は絶対、あんないじめから石川さんを助け出してみせます!」
「あ、ありがとう…。」
そんな会話をしていた私たちの上にある空には、太陽が顔を覗かせていた。
どうですか?
感想待ってます! ゆ〜ぴんさん(選択なし・12さい)からの相談
とうこう日:2020年8月23日みんなの答え:3件
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うぐっ!? な、なきそう、、、。
スゴいな、、、。 でんぱカービィさん(栃木・11さい)からの答え
とうこう日:2020年8月26日 -
すごいよぉ!! めっちゃいい話ですね!何とも悲しいですが…。
それにしても藤田さんはすごいな…!
私も藤田さんみたいな優しくて勇気のある人になりたいなぁ! レミーさん(選択なし・13さい)からの答え
とうこう日:2020年8月25日 -
これだったら これが両親だったら辛いですねw
にしても、ゴミ回収機って酷いですね。
久しぶりに短編小説読んだけどこの小説なんとも、自分と向き合える?小説でした。
感情って大事なんですね。
また、書いて下さい!
See you next time!Bye! コーヒー珈琲さん(神奈川・12さい)からの答え
とうこう日:2020年8月24日
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